軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

581.初代国王と姉の再会〜ミハイルside

「またか……」

真っ白な光に包まれた俺は、どこかわからない夜の世界に飛ばした。

少年は、次が最後のチャンスだと言っていた。

次に何か、もしくは誰かを見つけられなければ、この時代に飛ばされた俺達3人ばかりか、妹も死んでしまう。

それにしても少年の奥方が俺達の近くにいたとは、どういう意味だろう?

見つけるのは、少年の奥方も含まれるのか?

「展開が早すぎだし、急すぎる」

思わず愚痴ってしまう。

リャイェンのブローチに触れた途端、視えた光景も然りだ。

俺がブローチを媒体に、視た光景は何だったのか。

時間にすれば短く、体感にすればあまりに長かった。

「ヒュシスで思いつくのは、元国教が主神として祀っている女神の名前だ。

ヴェヌシスは……初めて耳にした。

初代国王の名前だったとはな。

リャイェンの言った通りだった。

あのブローチは初代国王が契約していた聖獣達の牙や毛を使って、姉のヒュシスに贈っていた」

独り言ち、視たばかりの記憶を整理した。

※※※※

「ヒュシス!

ヒュシスだろう!

まさかこんな場で見つけられるとは!

もうずっと探していたんだ!」

ブローチに触れた途端、玉座らしき椅子に腰かける黒髪の男が視えた。

精悍な顔つきの美丈夫はそう叫んで走り出し、俺の体をすり抜けていく。

思わず避けようとした俺は、男の瞳にハッと息を飲んで動けずにいた。

男の瞳は空色。

それも王女と同じく金環が浮かんでいた。

何かの式典だろうか。

男はかしこまった装いをしていた。

更にロベニア国とは違う、幾つかの周辺国の代表を務めているとわかる装いの者達も、大勢いた。

ブローチにこめられていた記憶だからか、大半の人間は顔がぼやけ、輪郭も陽炎のように揺れている。

「えっと……国王、陛下?」

すぐ後ろで女性の戸惑う声がして、振り返る。

すると俺と同じ菫色の瞳をした女性が、俺をすり抜けた男に抱きつかれていた。

女性は隣国リドゥールの部族が、正式儀礼で着るような衣装だった。

アシュリーと同じ白桃色の髪を束ね、纏めている。

髪色も瞳の色も馴染みがある。

そして瞳には、金環が浮かんでいた。

「俺だ、ヒュシス!

お前の双子の弟、ヴェヌシスだ!

まさかロベニア国建国と国王の即位式典で、姉を見つけられるとは!

国同士の争いを止める平和協定を結んでみるものだな!

ヒュシスが俺の目の前で拐われた11の時から、俺はヒュシスをずっと探していたんだ!」

「拐われた?

11の時?」

初代国王であるヴェヌシスが歓喜に震えているのとは裏腹に、ヒュシスと呼ばれた女性は困惑している。

「ロベニア国初代国王よ」

その時、ヒュシスの隣にいた茶髪の男が、ヒュシスの手を引いてヴェヌシスから引き離し、自分の背中に隠す。

茶髪の男は、俺がよく知る藍色と同じ色味の瞳で、ヴェヌシスをひたと見据える。

「我が妻ヒュシスは、我がリドゥール国で人身売買に巻きこまれていた。

今、ようやくロベニア国を中心に、各国が手を取り合って平和を目指す事となりはしたが、依然として世は混迷を期している。

ヒュシスの幼い頃は、もっと酷かった。

ロベニア国王も想像に難くないだろう」

「もちろんだ。

よく無事でいてくれた」

ロベニア国が建国された当時、紛争が国内外で起きていたとされている。

初代ロベニア国王が建国と同時に即位し、周辺国と平和協定を結んだという史実は、ブローチの記憶を視る限り事実らしい。

「そんな中でヒュシスは、私と出会うまで過酷な仕打ちを受け続けながら、必死に生きてきたのだ。

そのせいかヒュシスは、私達が出会った16の頃より以前の記憶が曖昧となってしまった。

特に幼い頃の記憶に関しては、ほとんど失っている」

「そんな……」

息を飲むヴェヌシス。

俺も息を飲む。

もしかすると俺はロベニア国の元国教、ヒュシス教の起源を見ているのか?

「あの、人違いではありませんか?」

けれどヒュシスは、双子の弟だと主張するヴェヌシスの言葉に懐疑的なように見える。

ヒュシスからしてみれば、そうなるのも仕方ない。

建国したばかりの国へ、恐らく国の代表として夫婦で出席した。

そうしたら初代国王となる者が、自分の双子の弟だと名乗ってきたのだ。

「それはない!

お前が覚えていたという名前も、私の姉と同じだ。

何より、その瞳。

菫色に、私と同じ金環が浮かんでいる。

人違いのはずがない」

そう。

瞳の金環が無ければ、きっとこんな突拍子もない話など、誰も信じなかったはずだ。