軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

504.拮抗する力と魔法具

「どこ、までも……」

あら、背後の足元辺りから掠れた声が?

「どこまでもふざけるかー!」

あらあら、ジャビだったのね。

ええ、知ってたわ。

ジャビはガバッと立ち上がって、私の胸元を両手で掴む。

「ふざけやがって!」

「まあまあ、お口が悪いわよ?」

「ぐあっ」

あらあら、愚か者がまた何か面倒な事に?

どこか辟易とした気持ちになりながら、叫び声の主を見れば、蔦が愚か者を絡め取っている。

「今さらね。

本気で人質になると……」

「うわ!」

言い終える間もなく、蔦がこちらに向かって愚か者を勢い良くぶん投げてきた。

もちろん、ヒョイッと避ける。

愚か者は空間の出入り口間近でゴッ、と鈍い音をさせ、そのままゴロゴロ転がり出て行ってしまった。

……死んでないわよね?

「まあまあ。

あなたは駄目よ、ジャビ?」

直後に出て行こうとしたジャビの腕を掴んで、ジャビの勢いを利用して体重移動。

出口の方向に動いていたジャビを、出口から遠ざけ、私は出口の方向へ向かうようにグルンと回転。

そのまま手を離す。

動きのベクトルに逆らわないように出口に背を向けた状態で、地面を後方に向かってければ、私は空間からジャビより先に出る。

雷を降らせてジャビを阻む。

__ガラガラ、ドーン!

__ガラガラ、ドーン!

__ガラガラ、ドーン!

「くそ!

させるか!」

「そのまま一生、そこにいなさいな」

扉を閉め、ベルジャンヌの魔力で作った鍵を亜空間から出して即座に鍵をかけた。

鍵は役目を終えたかのように霧散する。

故人の魔力を具現化させた状態では、長く保たないもの。

「お、お前……お前っ、ヒッ、寄るな!」

「あらあら、困ったわね?」

螺旋階段の下まで転がり落ちていたのね。

愚か者がまだいたわ。

腰が抜けたのか、ズリズリとお尻を擦りながら後退り。

愚か者と秘密の小部屋まで後戻りした私は、ふと窓から外を見やる。

私が魔獣達の体を、魔力を養分に咲かせ続けたリコリスの金花粉は、校舎内はもちろん、聖獣ちゃん達が張った結界の中を蔓延していた。

それだけ魔獣の数が多く、それだけ人も死んだのでしょうね。

ポツンポツンと倒れ伏す亡骸を見て、お兄様をふと思い出す。

そんな私には目もくれず、愚か者はスローテンポでこちらに背を向け、四つ足で逃げようとしていた。

それを見て、ため息を吐く。

「本当に、どこまでも困った子ね」

「ああっ、痛い!

背中、背中がっ、焼ける!」

確かに痛いでしょうね。

その背中には呪印と同じ色をした、赤黒い召喚陣。

焼きつけたように爛れているのだから。

あの蔦に絡め取られ、投げ捨てられる直前に焼きつけられたみたい。

きっと私があの空間に ジャビ(自分) を閉じこめる事を見越していた。

陣から手が、頭が、肩から胸が……と、ゆっくりとジャビが姿を現していく。

「先ほどぶりね」

「ああ、本当に。

腹立たしい。

しかし今度は出し抜かれなかったらしい」

言うが早いか、ジャビが魔法を行使する。

__バリバリバリバリ!

同時に私は、ジャビの魔法を無効化する。

魔法が発露する前に打ち消す音が響き、閃光が走り、秘密の小部屋の壁やドアを吹き飛ばす。

「やはり油断を誘う為にわざと魔法を使わず、わざと傷を負っていたか!

この稀代の天才魔法師が!」

「残念だけれど傷を負ってしまったのは、わざとじゃないわ」

__バリバリバリバリ!

「どこまでも邪魔を!

俺だけがお前を理解してやれるというのが、まだわからないか!」

「何様かしら。

あなたは私の何も理解できていないわ」

__バリバリバリバリ!

自分が神に等しい存在でいられた空間から出てみれば、思った以上にゴリゴリと魔力が削られていく。

特にジャビは攻撃力の高い魔法を行使しようとしている分、それを打ち消すのに同じだけの魔力を消費せざるを得ない。

合間にこちらも攻撃を仕掛ける。

けれど、それはジャビがバリバリと無効化する。

私達の力は拮抗している。

それなら……。

亜空間収納から、とある魔法具を手の平に転送する。

「『神妙にお縄につけぃ』!」

起動ワードを叫んで、ジャビに魔法具を投げつける。

「な、え、ええ?!」

けれどジャビはそれを避けると、愚か者に発動して亀甲縛りで縛られる。

「わ、私を縛って何をするつもり?!

ぐっ、食いこ、むんん?!」

「ふん、そんなもの当たる……」

「『悪霊退散』!」

__ペチ、バゴン!

ジャビの頭上から 魔法具(ハリセン) が落下して軽く当たり、作動した。

ちなみに新旧リアちゃんの羽根をつけてあって、効果は以前の2倍。

悪魔の力を浄化しつつ霧散させる優れ物。

ジャビは後頭部寄りの頭上から、大きな打撃を受けたように地面へうつ伏せに倒れた。