軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

397.聖獣との誓約

「な、何て破廉恥な?!

嘘だ嘘だ、あの方がこんな?!

う、嘘だー!」

リリの絶叫が隊長の精神魔法のレベルの高さを物語っている。

私がちゃんとリリを探していた事も、リリの脳内で再現VTRを流しつつ、小説のイラストをリリの目に直焼きしつつ、朗読もしてくれているようね。

「とか言いながら、リアルでは挿絵に首ったけじゃ〜ん。

特にほら、この縛り方はラビの肝いり……」

「や、やめろー!

姫様がけが、汚れる〜!」

ふと、氷の向こう側の奥さんズがニヤニヤと笑い始めた事に気づく。

「体に巻きついたべっ甲色のムチが亀のようにゆっくりと 蠢(うごめ) き、もがくほどに食いこんで、ほどけない。

いや、どうして……体の力が抜け、徐々に熱く……。

まさかこのムチ……縛り方も、こんな効果も……酷い……」

「ひぃ〜……」

防音の魔法を図書館の中全体にかけると、隊長の情感深く役に入りきった朗読と、リリの悲鳴が途中から途切れた。

途端に奥さんズが残念そうなお顔になったのは申し訳ないけれど、乳幼児が眠っているんだもの。

ただリアちゃんは乳児になるか微妙……あらあら?

ギラギラギンギンした形だけはつぶらな赤い瞳が、ベビーベッドの隙間を縫って小さな図書館に釘づけ。

いつの間に起きていたの?

「リアちゃ……」

「クエェェェェ!」

「バビュンと行って……ハッ、奥さんズまで?!」

氷壁の外に転移した瞬間、つむじ風が吹いて目を閉じた。

直後、この場には私とベビーベッドで眠るディア、すっかり存在感を無くした兄と王子だけに?!

『ひぃ~……姫様〜……』

何だか悲痛な幻聴が僅かに聞こえない事もないけれど、防音魔法をかけているもの。

気の所為、気の所為。

それより……。

未だに存在しているどこかに繋がる2つの転移陣を見やる。

魔力を干渉させ、水の属性が強いラグちゃんの魔力を借りて、転移した先で歪みを感じる全ての生命体の水分を蒸発させて滅する。

赤黒い方の魔法陣の奥に感じた、よく知る魔力が宿る た(・) だ(・) 一(・) 体(・) だけを残して。

ディアとリンダ嬢とで蓋をしてあった地中の生命体は、風の属性に強いキャスちゃんの魔力を借りて風化させ、滅する。

行き止まりかと思っていた岩壁の更に奥に、それとなく感じる前々世の私と似た魔力。

恐らくそこに在る何かに、私の瞳を移植したかったんでしょうね。

リリの無念の象徴は、私の魔力にキャスちゃんの力を上乗せして、その空間ごと炎風で滅する。

新リアちゃんが契約してくれていれば、もっと楽に焼却できたけれど、仕方ない。

この付近一帯を魔法で索敵して、他に見落としがないと確認してから、ディアを抱き上げる。

隊長の精神魔法で、未だに深く眠りにつく男子2人と共に、リンダ嬢達がいる神殿の食堂の前に転移した。

それと同時に地下は二度と使えないよう、ディアの元々強かった土属性の魔力で土を発生し、圧を加えて固めておく。

これで地盤沈下もしないわ。

もちろん地下に残っている皆は、保護結界で暫くは潰されないようにした。

氷壁をベースとして使っているから、溶けきるまでは安全。

リリがベルジャンヌへの拘りを捨てれば、悪魔の力を体に呼びこみ、留めていた核__行き過ぎた 負の感情(憎悪や嫉妬) を失う。

そうすれば残るしつこい 悪魔の力(汚れ) も、聖獣ドラゴレナだけで消滅させられる。

契約を負債なく破棄できるわ。

もちろんそんな事ができるのは、聖獣と聖獣の契約者だけよ。

核が人の感情からできる物である以上、人の魔力で発現する魔法では悪魔の力を消せないから。

似て異なる悪魔の力は本来とっても厄介で、だから対抗できるのは似て異なる聖獣の……。

「……っく」

前触れなく走った熱痛に、思わず呻いて思考が停止する。

懐かしいけれど、二度と経験したくない熱さと痛みに、視界が歪んで倒れそうになった。

腕に抱くディアが怪我をしないよう、食堂の扉に肩からぶつかる。

ガタンと大きな音がしたけれど、何とか倒れるのだけは踏み止まれた。

「…………っふ……ふぅ……」

止めてしまいそうな息をゆっくり吐き出し、痛みをやり過ごす。

今回はさすがに、祝福の名を与える聖獣との誓約に……抵触したみたいね。

服に穴が空いて顕になっている腹部には、前々世の最期に自分の体で目にした聖印が浮かんで、ゆっくりと消えていった。