軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

244.騎士団長と魔法師団長〜ミハイルside

「内側がもふもふ……」

「ギャ……ギャ……」

どことなく目を輝かせ、興味津々な妹は抱き上げたアルマジロの腹に釘づけだ。

何となく嫌な予感しかしない。

当然、後ろからのぞきこむ俺の戸惑いには全く気づいていない。

対象的に弱々しく鳴く白灰色のそれは、鎧鼠という別名がピッタリな外見をしている。

丸くなればボールや卵のように見えるが、外側の甲羅は硬いんだろうか?

鑑定すれば、確かに魔獣の子供だったが、魔力も尽きかけているし、かなり衰弱している。

恐らくはもう……。

王子はそんな死にかけの魔獣に俺の隣で黒い嫉妬らしき視線を向けるな。

拗らせ過ぎだ。

そして妹の足元に背後から這いずって近づいていたのは半透明のシエナ。

上げた顔を改めて見れば、顔や体の色は元に戻っても魔法呪の時のように醜く歪んでいた。

「なんで……わたし……わるく、ない……からだ……わたしの……まりょく……よこし……あんたの、よこせ……」

そう言いながら妹の足首を掴むが、途端に何かに驚いて手を離す。

止めようと思うものの、妹の腹には札が貼られているのを思い出して静観する。

妹もこちらに横目で目配せしたから、これで良いのだろう。

「ど、して……あ……うそ、だ……」

「あらあら、駄目よ。

あなたが吸い取れるような魔力なんて私にはないの」

吸い取ろうとした?

魔力体のはず……だがシエナとヘインズだけは顔もあった。

何かが違うのか?

ただ妹は確かにハリセンであれだけバシバシやっていた。

元々の魔力が少ないから、今は魔力が枯渇しているのかもしれない。

枯渇耐性があるらしく、全く症状が出ていないが。

「それよりシエナ、早く体に戻らないと……」

__ドサドサッ。

妹が皆まで言い終わるまえに不自然な鈍い音が後ろからして、後ろを全員が振り返る。

屋上の出入り口には4人の人影。

2人は立っていて、2人はまるで放り投げられたかのような格好で転がっていた。

「ほら、体を手放すから」

妹はまるでこの異様な事態を予想していたかのように落ち着いて、しかし困ったようにシエナに視線を戻していた。

転がっているのはシエナと……ヘインズか?

ヘインズは体を起こして座りこんだまま震え、誰とも目を合わそうとしない。

少し距離はあるが、相変わらずの顔色の悪さを確認する。

シエナの顔は見えない。

しかし見えている手足が干からびたミイラのように俺の目には映るんだが……。

そして出入り口に立つ壮年の男2人は……。

「アッシェ騎士団長、ロブール魔法師団長が……何故」

王子がボソリと呟いた。

騎士団長の名はダリオ=アッシェ。

赤銅色の髪に紫の瞳をした、アッシェ家当主。

言わずもがな、ヘインズの父親だ。

騎士団長だけに帯剣はしているものの、今のように最低限の装備で軽装だと鍛えた体躯がかなり厳つく見える。

瞳は俺とは印象の違う紫だ。

血筋だろうが先王の母であり、稀代の悪女ベルジャンヌ王女の没後に蟄居した王妃と同じ色らしい。

そして魔法師団長……俺達兄妹の父親だ。

こちらも軽装だが、薄手のローブを羽織っている。

王家の剣とも盾とも評される団長2人が何故……。

それにシエナだけでなく、ヘインズまで?

「陛下より許可は得ております。

そこに転がる2人は魔法呪の依り代だとロブールが言いだしたので始末しに本体のある場所に向かいましたが、いざ対面すれば愚息の方が違う可能性が出てきたと。

魔法呪に本体を近づければすぐにわかるだろうと連れて参りましたが、保健室と違って王子がここに張っていた結界は下手に解くとまずいと判断して近くで静観しておりました。

それで、どうなんだ?」

最後の言葉は王子ではなく父に向けた言葉だろう。

「お前の息子は依り代になりかけたが、どうやら防がれた結果、ロブール家の 元(・) 養女が依り代に 選(・) ば(・) れ(・) た(・) ようだ」

元……やはり父上は既に切り捨てたのか。

それにあくまで被害者のように話すという事は……。

「何者かによってお前の息子が魔法呪の依り代になりかけたが、代わりとなって元養女は取りこまれたらしい」

それにヘインズが反応し、バッと顔を上げた。