軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

168.明らかな侮蔑の表情〜シエナside

『どういう意味ですの?』

いつも通りに怒りを隠しながら微笑みかける。

もちろんアイツのように圧のある微笑みをね。

『まあ、まだおわかりになられないなんて』

けれどアイツのような、凄みはあるのに淑女然とした微笑みは不得意みたい。

効果は無かったわ。

不愉快そうに眉を 顰(ひそ) められてしまっただけ。

『半分は四大公爵家の血筋でいらっしゃっても、やはり半分は平民の血筋であるようね。

もしくは人生の半分以上を市井で過ごされたのなら貴族としての品性を欠いていても、ある意味仕方ないのかしら?』

挙げ句、おっとりした口調はそのままに、侮蔑まで……。

『まあ、そのような悲しい事をおっしゃらないで?

それでも今は……』

瞬間的な怒りを辛うじて抑えこみ、今度は悲しみを表現する。

こっちの方が得意だもの。

『今はロブール家の 養(・) 女(・) 、ですものね。

ですがお姉様であるはずの第1公女と婚約者であられた殿下との仲を取り持つわけでもなく、むしろ引き裂きましたのよね?』

わざとらしく話を遮られた上に、養女の部分を強調されたけどめげずに続けたわ。

『そんな、引き裂いただなんて。

お義姉様は努力がお嫌いでしたから、そこにシュア様が……』

『ジョシュア殿下、でしてよ?』

『それはシュア様がそうしろと……』

この女、何回遮るのよ!!

思わず睨みつけそうになるけど、品行方正な淑女という体裁でやってきたのだから、絶対に崩せない。

戸惑った顔をするに留めた自分を褒めてやりたいわ。

すると目の前の令嬢、ううん、この女と後ろで黙って成り行きを見守る2人もこれみよがしに、それぞれがため息を吐くのよ?!

心底腹が立ったわ!

けど、そこについてもグッと我慢したの。

『はあ。

全く、何度も言わせないで下さる?

例え殿下が愛称で呼ばれる事を許したとしても、あなたは婚約者ではありませんのよ?

今も候補にすら上がっておりませんし』

何なの?!

おっとりと的確に私の神経を逆なでしていくこの女に殺意が湧くわ!

我慢して困惑した顔で居続けるのも限界がきそうなんだけど!!

それでも悲哀の表情を鋼の精神で維持する。

『共にいる間だけ愛称で呼ばせて頂くのが、貴族令嬢として当たり前のマナーですのに。

まさかあれ程執拗に、義理とはいえ仮にもご自身のお姉様に向かって無教養だの、マナーがなっていないだのと公衆の面前で第2王子殿下方共々詰め寄っていながら、そんな事も知らなかったなんて仰いませんわよね?

一(・) 応(・) は(・) 、ロブール公爵家のご令嬢で、ご自分はお姉様より出来が良いと暗に、というよりも随分と仰々しく周囲にアピールしてらしたのですもの』

『それは……』

『その点、あの方は貴族令嬢としての最低限のマナーだけは、しっかり守っておりましたのよ?』

『……お義姉様が?』

アイツと比べられて反射的に怒鳴りつけそうになったわ。

1番されたくない事だもの。

けれど何とか怪訝な顔で静かに反論するだけに留めて堪えたわ。

どこがよ、という思いを声と全身に込めた反論だけれど。

『貴女方も気づいてらしたわよね?』

『『もちろんですわ』』

話を振られれば返事はするんだろうけど、この女達は何を言ってるのよ?!

『お義姉様はDクラスになってしまうくらいには、お兄様の用意して下さった学びの機会を放棄されていましてよ。

上級生のお三方にこう申し上げるのは心苦しいのですけれど……ああ、でも……』

そう言って、意味ありげに言葉を区切って様子を窺う。

どうにかして動揺を誘いたい。

『どうぞ、仰って。

ああ、1つ先に申し上げておきますわ。

私の家柄は四大公爵家には劣れど、代々重鎮を務める公爵家の、 生(・) ま(・) れ(・) な(・) が(・) ら(・) の(・) 令嬢ですの。

つまらない言い回しに動揺は致しませんわ』

くすりと笑って明らかな侮蔑の表情を向けられた。

他の2人もよ。

お前のような下賤な者と一緒にするなと、暗にそう告げられたようなものよ。

でもそれだけじゃない。

見透かされていた。

だからよ。

不覚にも頬がカッと熱くなってしまったのは。