軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

131.歴史ある四大公爵家当主の地位〜ミハイルside

「だが兄としてはそうでない事を願うばかりだ」

同じ兄という立場にある者として、もちろんその言葉に同意はできる。

しでかした事が同じでも、もしわかっていてやったのならあまりにも浅はかだし、巻きこんだ者への悪意の程度があまりにも違う。

しかし巻きこまれた妹の兄としては、故意だろうが偶発的だろうがこんな事が起こった事そのものからして許せるものではない。

その上でこの2人の言うように本当に誰かが故意に引き起こしたのなら、その者のした事はどんな理由があっても、仮にこんな大事にするつもりがなかったとしても関係ない。

絶対に許さない。

「ただし、ニルティ家次期当主としてはそんな事はどうでも良い。

今はまだ俺の中でその可能性が極めて高いだけで終わっているが、エンリケ=ニルティがこの件を引き起こしたと確定した時点で、どのみち物理的に消えてもらう事になるだろうからな」

それまでの雰囲気がガラリと変わり、緑灰色の瞳が冷徹そうに細められた。

仲が悪くないはずの実弟を消す事を軽く口にしているこの男は、やはり抜け目がない、油断できない男のようだ。

今更それに驚きはしない。

やはり俺とは根本的に違うとは思うが、四公の当主の座に近づくほどこうでなければならないのかもしれないと感じるだけだ。

そこでふと両親と2人の妹を思い浮かべる。

父であるロブール公爵は、公女にして嫡子であるラビアンジェを長らく害してきた正妻と義娘に今のところ何の沙汰も下していない。

いや、直接的に害した正妻には魔法を使えなくしたのか。

もし同じように義娘が実娘を直接的に害した時、どう沙汰を下すんだろうか。

そしてその時次期当主である俺もまた……。

今の俺にそれができるのか?

歴史ある四大公爵家当主の地位。

いざこんな場面に出くわすと、あらゆる意味でその責務が重くのしかかる。

ニルティ家次期当主であるこの男は、昨年の4年Dクラスから贈られたあの資料を見た時、瞬時に実弟を物理的に消すと決めたように見えた。

もちろん死をもって償わせた 体(てい) を取るのは、ニルティ家にとって最終手段だろう。

最良は真実が表に出る前に元凶の口封じをして、このまま有耶無耶に処理する事だ。

そう考えて、自分もそれに思い当たるのだから根幹は同じなのかと自嘲した。

それでも今の俺は兄として妹を助ける為に、これからこの男達と取り引きをする事になるんだろう。

この2人が俺をここに呼んだのはその為だと理解し、こみ上げる怒りを抑えて冷静になれと言い聞かせる。

こちらとしても願ったり叶ったりだが、それこそこれは俺の独断。

後で父であるロブール公爵からも、最悪は 王(・) 家(・) からも何らかの沙汰を受ける事を覚悟する。

それよりもこの2人、随分と話のもっていき方がスムーズだが、いつの間に打ち合わせをしていたんだ?

発覚してからそんなに時間は無かったはずなのに。

「ひとまずどういう事か説明してくれ。

2人は事前に打ち合わせをしていたという事だろうか?

随分と情報を共有しているが、この件は故意に行われていて、仕組まれたと?」

わかっているが向こうに取り引きをもちかけさせるよう、白々しく話す。

「だとすればエンリケ=ニルティの狙いは?

わざわざ合同訓練でこんな事をしたのなら、巻きこまれた2年生グループの誰かを狙っていたという事か?

もしそうだとして、可能性が高いのは……」

わかっていても思わず言葉に詰まり、出かけたラビアンジェの名前を飲みこんだ。

「状況から察するに、残念ながら狙いは公女だろう」

「愚弟が本当にすまない。

この落とし前は俺がすると約束しよう」

2人からはっきりと妹への度を超えた悪意の存在を肯定され、抑えていた怒りが噴出してしまいそうだ。

かろうじて抑えているのは、この保健医の身分を知っているから。

ウォートン=ニルティだけなら、お前が落とし前をどうにかしたところで妹は帰ってこないだろうがと、胸ぐらを掴んで揺するくらいはしていたはずだ。

そもそも何故この男が保健医などに扮してここにいるのかと、その理由も知っているのに苛つきが止まらない。