軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

128.信用のない食欲

「ああ、あちらの世界のB級特撮映画のような蜘蛛とムカデの対決の末に勝利した蜘蛛の巣に絡み取られている家格君は放っておいていいのよ?

生きていても助からないし」

あの家格君まで連れて行けとお願いしたと思わせてしまったのかしら?

さすがにそんな事はお願いしないわ。

定期的に索敵魔法で様子を探っているけれど、今の彼をここから出したら前世でいうところのエライコッチャな事態になりかねないもの。

『いや、そもそもあの阿呆は絶対助けん。

ラビも流石にそんな命令はしないだろう』

「そうね。

だからあの3人が家格君を見つけたら、ね?

死亡確認はさせないと、彼の本当の過ちに責任を取らせられない。

それにタイミングを考えれば気持ちよく眠っているうちのグループとお孫ちゃんも引き上げ時よね」

皆で楽しくキャンプはいつかの機会にして、今回は諦めましょう。

『お前以外は王族も四公も嫌いだ。

お前のグループはともかく、命令でないなら知らん。

自力で出るなり、蟲の餌食となるなり勝手にしていればいい』

「ラグちゃんたら、あなた達に命令するのが嫌いなの知ってて言うの?」

ほっぺたふくらまして拗ねちゃうわよ?

なんて思いつつ、そうだ、といい事を思いつく。

「でも交渉はしちゃうわ。

ラグちゃんを美味しい食材でお・も・て・な・し」

さあさ、どうかしら?

『……どんな?』

ふふふ、乗ってきたわ。

「蛙型魔獣の唐揚げはいかが?

ここにならいるでしょう?

ラビお手製タルタルソースもマヨネーズもつけちゃう。

あとは……蛇……」

『!!!!』

何やらガーン、とショックを受けたような気配ね。

「は、やめてこの近くの川にいたナマズの魔獣で鰻重もどきなんてどうかしら?」

『……わざとか?』

まあまあ、ちょっと声が震えているわ。

うちのラグちゃんてば可愛らしいんだから。

ああ、またあの素敵な白銀の 鬣(たてがみ) に……いえ、あんまりやるとキューティクルが傷んで ま(・) た(・) 落ち込ませてしまうわ。

「ふふふ、ついうっかり。

ラグちゃんのお陰で蛇は襲ってこないわ。

孫達が入ってすぐに襲った蛇もラグちゃんが説得してくれたみたいだし。

わざわざ見つけてまで食べないし、襲ってこないなら手も出さないわ。

もちろん襲われたら……」

ふむ、と少し考えてみる。

「命に感謝しながら美味しく頂くしかないけれど」

『絶対に襲わせない。

頼むからうちの子達は食うな』

あらあら、ちょっと食い気味に被せてきたわ。

少なくともここの蛇ちゃん達は絶対食べないわよ。

「ふふふ、この森の蛇ちゃん達はラグちゃんの可愛いお子ちゃま達ですものね」

『ベルのお陰で生き残った俺の子孫達だからな。

孫や曾孫もいるが、皆等しく我が子だ。

食うなよ』

まあまあ、大事な事だからかしら。

2度も食うなを頂いたわ。

「ええ、そうよね。

全員は無理だったけれど、あの時咄嗟に結界を張って住み分けができて良かったわ」

『俺の伴侶が低俗なあの王太子の策略で我を失ったせいで、ベルだったお前には迷惑をかけてしまった』

「そんな事はないわ。

あの異母兄が悪すぎたのだもの。

ぎりぎりだったけれど、ラグちゃんと番の聖獣ちゃんの世代交代ができて、悪魔からも守れて良かったわ」

そう、ラグちゃんは元々蛇型の魔獣。

でもここでの生活と奥さんがラグちゃんに聖獣の素養を与えて育んでいたの。

姉さん女房だった奥さんが聖獣ちゃんだったのだけれど、悪魔まで絡んで、まあとにかく色々あって奥さんとラグちゃんとで聖獣の世代交代が行われたわ。

『だがあの時のベルの功績は無かった事にされた。

それどころかお前は謂れのない罰をあの王太子とその母親に与えられた』

まあまあ、今度は明確な殺意が四方へ散ってしまったわ。

触発されたように蟲達が騒ぐ気配がし始めたわね。

「ふふふ、落ち着いて。

蜘蛛が騒いだら面倒よ」

そう言いつつ、索敵であの3人と家格君の居場所を探り、タイミングを見計らうわ。

「それじゃあ、そろそろラグちゃん、お願い。

ついでに伝えた事をさらっと暴露しちゃって」

『はあ、わかった。

唐揚げとナマズの鰻重を頼む。

ナマズだぞ!

うちのチビ達は食うなよ』

「……もちろんよ」

あらあら、だいぶ念を押されて……はっ、まさか私の食欲ってそんなに信用ないの?!

やだ待って、ラグちゃ……弁解の機会もなく行ってしまったわ……クスン。