軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

116.深夜の聖獣ちゃんとの内緒話

『ラビ』

真夜中、ふと呼びかけられて目を覚ます。

辺りは真っ暗ね。

蟲は灯りに寄ってきやすいから、使用不可なの。

「むにゃ……ロブール様……美味しいです……」

ふふふ、夢の中の私も眼鏡女子のカルティカちゃんに何かをふるまっているのね。

今は眼鏡をかけていないから、可愛らしいお顔をご拝謁し放題よ。

気配を消してそっとテントから顔をのぞかせるわ。

地面が遠いから間違っても寝ぼけてそのまま降りちゃ駄目よ。

怪我しちゃうから。

魔法で身体強化してから降りるの。

一応縄でできた簡易梯子も設置してあるけれど、今それを使うと起こしちゃうかもしれないわ。

改めて見上げれば、5メートルほど上空に真っ黒なテントがこちらとお隣に2つ。

少し距離を空けて夜目には浮いているように見えるわね。

実際は幾つかの細身の木に人が3人ほど寝られる程度の布を張って足場を作っているようなものなの。

魔物素材の蚊帳式魔法具を布の周りに釣るしつつ、竹素材の支柱を使って下の布と固定してあるわ。

蚊帳には防水と認識阻害機能を、支柱には物質強化を簡易の魔法回路を描きこんで付与してあるの。

見た目はそうね、あちらの世界の懐かしの食卓風景でよく見るご飯の虫よけみたいな造りね。

フードカバーとか、キッチンパラソルなんて小洒落たネーミングじゃなかったかしら?

つまり下からの侵入があればテントは揺れて知らせてくれるし、上から何かが落ちてきたり攻撃があってもまずは支柱がしなって衝撃を緩和しつつ、やっぱり揺れて知らせてくれるの。

後は天候が急変してどこかから洪水が起きても床がべちょべちょになったり浸水する事もないわね。

森や山って天候が不安定でしょ。

2つのテントの中間地点くらいには、新しく起こした焚き火があるの。

ラビ印の正真正銘の蟲避けの草を適度に燃やしているわ。

危険度Bくらいまでなら避けてくれるはずよ。

燃焼用の魔石を使っているから、火の番は特に必要ないの。

数時間おきに魔石をテントから投げこむだけ。

あらあら、あっちには投げ損じの魔石が2個転がってるわ。

1つは私が犯人よ。

ふふふ、しれっとそちらは投げ入れておきましょう。

ボッと日火の勢いが一瞬増して、またパチパチ燃え始めたわ。

あちらの魔石は誰が投げたのかしらね?

ふふふ、しれっとそちらは回収しておきましょう。

『ラビ』

頭に直接響くのは、よく知る年若い青年男性の声。

自分の周りに消音の魔法をかける。

『あいつらを消していいだろうか?』

ん?!

うちの可愛らしい聖獣ちゃんの不穏な声が頭に直接響いたわ?!

「あらあら、ラグちゃん?

いきなり何の殺害予告?」

『俺の愛し子に害を及ぼそうとした』

あら大変。

少し気配が遠いけれど、どことなく殺気を感じるわね?!

そういえばつい最近、キャスちゃんともこんな念話をしたような?

今は蠱毒の箱庭の周りの結界に阻まれて私の方は念話を届け辛いから声を直接発しているけれど。

聖獣ちゃん達はその気になればいつでも音を拾えるから、彼らとの物理的な距離は問題ないわ。

四方に向かって索敵魔法を広げれば、ラグちゃんてばこの箱庭の真上でぷかぷか浮いているみたいね。

というか、他にも気になる存在を感知してしまったわ。

どういう事かしら?

そうそう私の索敵魔法は極限まで細くした魔力を網状に広げるの。

蜘蛛の糸よりも細いから、どんな臆病で敏感な魔獣も気づくことはないはずよ。

「ふふふ、駄目よ。

あんなポンコツ達でも一応上級生だもの」

『昔もそう言って甘い顔をしていたから、あの子供達の上の世代が増長した』

「あの時は悪魔が絡んだだけでしょ」

『俺を救い、2つの国をも守った稀代の善人が悪女にされた』

「だからあれ以降王家にあなたも愉快な仲間達も見向きもしなくなったんだから、それで十分だわ」

『王族も四公も上の世代から何も学んでいない』

「だから未だに彼らの血筋の誰か1人にしかあなたも愉快な仲間達も手を貸していないんだから、それで十分だわ」

『生まれ変わっても善人だ』

「そんな事を言うのはあなたと愉快な仲間達くらいよ」

『他にもこの森に侵入したぞ?』

「そうみたいね。

何がしたいのかしら?」

あらいけない。

うっかりため息が出ちゃったわ。