軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レクトール・ラスナン3

私が唖然としていたら。

「でもゲームではすんなり一緒に旅立てたのに彼のあの態度。やっぱりあの現地の聖女がくっついているから? ということは、あの女も排除しないとね。間違って聖女になられちゃうと、ほんと迷惑よねえ。でも彼には怪しまれないように……ああ! 突然パニックになって自分で階段から落ちたことにしよう。それならすぐに片が付く。ん~じゃあちょっとロロちゃんにも協力してもらおうかな~私とご主人さまとの恋のキューピッドになってね~」

私が物騒な計画を聞いて驚愕しているうちに、ヒメが途中から猫なで声になってロロに歩み寄っていた。

顔がまるで遠足か旅行にでも行くかのように楽しげなのが怖い。

うーん結局私は彼女に殺される運命なのか。それも気軽に。

もしかして私が嫌いだからというよりは、なんだろう、邪魔だからちょっとどかしましょうねー、という感じなのか? さっきも排除とか言っていたよね……。

なんてちょっと遠い目をしていたら。

「なあおー」

『私は彼の魔獣ではないのよー』

いやそこ? ロロが反応するのはそこ?

でもヒメにはそのロロの言葉は聞こえなかったらしい。

「ちょっとあの邪魔な女をおびき出してちょうだい? そしてその後はあなたで私の動物好きで優しいところを彼にアピールしなきゃ。だから仲良くしてね? ああそのためには急いでまたたびを手に入れないと。ねえ、またたび好き? ちゃんと私のために働いたらまたたびあげるから、ねえ?」

「んーにゃー」

『私は主以外の人のためになんて働きませーん。そもそも働くのはキライー』

しかしロロはその言葉のままにつんとそっぽを向いてしまった。

うーん正直だな。働くのはキライなんだ、まあそんな気はしていたけれどね。いつも寝ているか「ごはんー」しか言わないもんね。

しかしロロの言葉が聞こえないヒメは、さらにロロとの距離を詰めたのだった。

「あらロロちゃん、ご機嫌斜め? おいで、抱っこしてあげる」

「んにゃあ!」

『触らないで!』

でもロロは嫌だったらしく、するりと逃げた。すると、

「なによ、生意気な! たかが魔獣のくせに!」

バシッ!

なんと突然ヒメがロロをひっぱたいたのだった。

ええ!? 何するの! 私の猫よ!? やめて!

ロロの小さな体は軽々と吹っ飛んで、どうやらドアにぶつかって、そして床に落ちる寸前にひらりと身をかわして着地したのだった。

「にゃあおう」

『こいつむかつく。殺っちゃっていい?』

どうやらロロがお怒りだ。

でもだめ。気持ちはわかるけど人殺しはだめ。そういう後味の悪いことは私はしたくない。

それに今私が感情のままにヒメを殺したら、私は彼女と同類になってしまう。

そしてこの先『聖女』殺しの罪で追われる未来も見える気がする。

後味が悪いのも自分が追われるのも彼女を『聖女』のまま死なせるのも全部嫌だ。だから我慢して。

あ、でも引っ掻くくらいならいいかな?

私がそう思った瞬間、

「なあおー」

『ばーかばーか』

ロロは一声そう鳴くなりヒメの顔に飛びついて、バリバリとその顔面に爪をたてたのだった。

悲鳴を上げて顔を押さえるヒメ。

そしてロロはそのままドアのノブに飛び乗って自分でドアを開けて、ヒメの私室から出ていった。

ロロ……それ、一応手加減はしたんだろうけれど、なかなか痛そうだよ……。

まあお抱えの治療師がいるなら治してもらえるとは思うけど。

結局、部屋に帰って来たのは、レクトール将軍とロロがほぼ同時だった。

「おかえり~なにやら大変だったみたいだのう?」

オースティン神父がノンビリとした態度で迎えた。

「おやあなたも見ていたんですか? まさかロロと通じ合っていないのは私だけだったということですか?」

レック、いやレクトール将軍が両眉を上げて大げさにショックと驚きのポーズをとる。

「いやいやワシは通じてはおらんよ~。でもアニスの表情を見ているだけで、大体何があったかはわかるのう。レック、ちいと波乱があるかもしれんよ?」

「オースティン殿、もちろん味方してくれるんですよね……?」

そう言いながら少々気まずそうにレクトール将軍が私の方を見た。

ちなみに私の目は若干、据わっている。

「これはこれはお帰りなさいませ、ショウグンサマ?」

「ああ……ええと……タダイマ……」

私の機嫌があまり良くないのを察したらしく、彼はちょっと気弱に応えたのだった。

まあね? 確かに私も悪かったとは思っているよ。

だけど目の前で勘違いしているのがわかっているのにずっと黙っていたのも少々意地悪なのではないかなーともね?

私も悪いかもしれないけれど、でも、割り切れないモヤモヤがね? ちょっとね? だから。

「なおん」

『ただいまーああむかつくー』

ロロの姿が見えた私はすぐさま気まずそうにしている将軍サマを無視してロロの所に行って抱っこして言ったのだった。

「ロロお帰り! よくあれで我慢したわねえ。えらいえらい。ああ可哀想に」

そしてその黒くて小さい頭をぐいぐいと撫でてやる。

「なおーん!」

『主は好きなだけ撫でていいのよー?』

「どうした? 何か可哀想だったか? いたのは知っていたが。そして見ていたんだろう?」

遠慮がちにレックいやレクトール将軍様が言う。

「あなたが出て行ったあとに、腹いせにヒメに叩かれたのよ。ああ可哀想に……!」

だから私はロロをぎゅーぎゅーと抱きしめながらチクってやった。

もちろん、ヒメの将軍「攻略」の邪魔をするためだ。ふん。

私はヒメが純粋な恋愛感情ではなくて、「攻略」という言葉を使ったことがなんだか嫌だった。

なぜなら私にとってこの人はもはや単なるゲームのキャラクターではなくて、ちゃんと自分の人生を歩む一人の人間なのだから。血の通った、触れれば温かい、自分の意思も感情もある一人の人間なのだ。