軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 副将軍の愛妻4

うちの主人はここでどんな感じにお仕事しているのかしら?

私がいくらお手紙を送っても、週に一通しかお返事くれないのよ、酷いと思わない?

でもそこにアニス様のことも書いてあるから、私、ずうっとお会いしたいと思っていたの。もう王都でもとっても話題なのよ。だから王都の誰よりも真っ先にお目にかかれて嬉しいわ。

でもレクトールは相変わらずすましているのね。私が何を言ってもいつもお決まりの笑顔で優等生なお返事しかしないのだけれど、あなたの前でもそうなのかしら? それではつまらなくない? もう彼は昔からあの顔でモテるのに、全く嬉しそうにしないのには驚くわよね。でも奥様だったら違う顔もするのかしら。

うちの主人は見ているといろいろ表情がわかるから楽しいのよ。でも軍人としてはもう少しレクトールを見習えばいいのにって思うときがあるのは内緒よ。

今日もそんな感じの(一方的な)会話をしながら、二人でこの城のお庭をお散歩している私たち。

それでもなんだかんだと近い目線で話ができるお友達のような親しみを持てる女性が来てくれたことで、私は今までにはない楽しい毎日を過ごしていた。

クローウィル姫は明るくて、そして私に好意的に接してくれて、なんだか仲の良いお姉様か年若い叔母様といるような気がするのだった。

うん、年齢的には母親でもおかしくはないはずなのだけれど、どういうわけかそんなお年には見えないのがすごいところ。しかもその溌剌とした言動が世代の違いを全く感じさせないのだ。

だから一緒にいるときは楽しい。

しかし、副将軍のお仕事が終わって奥様が副将軍と一緒にいるようなときには。

私は口から砂糖を吐き続ける毎日である。

あんなに、あんなに! 男臭い脳筋な人だと思っていた副将軍が、奥様と一緒になるととたんにへにゃへにゃとした顔になるのはどうしたことか。

年齢からしてご結婚されてからもう何十年かたっているはずである。

それでもこの熱愛ぶりは羨ましいというかなんというか。

私も結婚して何十年たったあとでも仲の良い夫婦というものに憧れてはいるが、さすがにこれは……。

きっとできない。

そう思う熱愛っぷりで、きっと話に聞いただけでは絶対に信じなかっただろうと思った。

この目で見ていても、これは夢なのかしらと思うときがあるくらいだ。

「今年の闘技大会でレクトールが毒矢に倒れたときは、副将軍の素早い処置がすばらしかったです。あの処置がなかったら、レクトールはもっと危険な状態だった可能性が高いのです」

ちょうどあのときの場所に来たとき、私はクローウィル姫に言った。

もうあれは何ヶ月も前のことなのに、私にはつい最近のことのように思えた。

季節ももうすっかり変わってしまったのに。

「まあそれは良かったわ。あの人はそれはそれはレクトールを大切に思っているから必死だったでしょうね。昔から仲が良くて」

そう言ってクローウィル姫は、懐かしそうに目を細めてふふっと思い出し笑いをした。

「昔から仲が良かったんですか?」

私の知らない二人をこの人は見てきたのだと思うとちょっと羨ましかった。

「ええ、とても仲が良かったわね。どちらも家の跡取りではなかったから、自分で生きる道を探さないといけないという共通点があったからかしら。その上二人には武芸の素質があった。だからジュバンスはレクトールを鍛えることにしたの。そしてレクトールも素直にジュバンスに懐いて、剣の腕もメキメキと上達したのよ。だけれどレクトールはあるとき珍しいスキルに目覚めてしまったから……でも今は幸せそうで良かったわ」

そう言ってクローウィル姫は目を伏せた。あまり詳しくは聞いてはいけないような雰囲気だった。

だけれど少なくとも彼女がレクトールのことを「今は幸せそう」と表現したことは、私には嬉しかった。

きっといろいろあったのだろう。いつか彼らからそのときの話が聞けるといいな、そう思った。

と、ちょうどそこに、なんと噂の今は将軍と副将軍が通りかかったのだった。

奥様を目にしてうっすらとデレる副将軍。

いや傍目にはいつものいかついままなのだけれどね。でもこう、ある程度親しくなるとわかる微妙な雰囲気の違いが感じられる、その程度なのだけれど。

しかしあの副将軍がデレるか……。

もう副将軍もぞっこんじゃあないですか。今でもそれということは、まさか結婚前からあんな感じだったのかしら!?

そして隣のクローウィル姫からもぱああーっとしたなにやら嬉しそうなオーラを感じ。そして、

「まああ! 旦那様がお仕事している姿も素敵~~!」

などとテンションが爆上がりして駆けよって行かれました。

語尾に全部ハートマークがついていそうな感じがさすがです。ああ自由姫……。

本当にいつも感情に素直で羨ましいデスネ。

クローウィル姫にとってはこの世の何よりもジュバンス副将軍が大切なのだとしみじみ思い知らされる私だった。

いや良かったですねえ。大変微笑ましい光景なので、では私はお幸せそうなお二人の邪魔しないようにしましょうね。

ということで私は私で、どうやらクローウィル姫の勢いに弾き飛ばされたらしく、二人から少し離れたところで一人唖然としている我が夫のところに行くことにした。

「レクトールもお仕事お疲れ様。あの二人、本当に仲の良いご夫婦よね。なのに単身赴任なんて副将軍はお寂しいでしょうね」

私はあっという間に二人の世界に入って仲良さそうに寄り添う副将軍夫妻を眺めながら言った。

だって私だったら何ヶ月もレクトールと離れなければいけないなんて、しかもその生活が年単位なんてきっと寂しくなってしまう。それをあの二人はやっているのだ。

そう思うと、せっかく会えたときには心ゆくまで一緒にいて欲しいと心から願ってしまう。たとえ私たちはあっさりと埃のように弾き飛ばされるとしても。

だけれどレクトールはちょっと違う考えのようだった。

「あー。ジュバンスはこれくらいがちょうどいいみたいだよ」

「え、うそ。あんなにデレデレしているのに?」

「だってあの自由姫だぞ? 一日中あの調子なのが毎日、しかも二人が子供のときからだぞ。少なくとも近くでよく見ていた僕はすぐにうんざりした」

「え!? 子供のときから!?」

「あの二人、幼なじみだからな。そもそも彼女は王家の姫だからいいところの貴族の嫡男とか、外国の王子とかいろいろ条件のいい縁談が山ほどあったのに、一貫してジュバンスがいいからジュバンスに嫁ぐと言って全ての縁談を断った猛者だぞ。そしてその気のなかったジュバンスを、十年以上かけて落とした 強者(つわもの) でもある」

「ええ……すごい執念……」

あのクローウィル姫にそんな歴史が……。

ということは、彼女のほぼ一生があの調子ということ!?