軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33 気まずい

色々とあってから、ようやく男爵令嬢として落ち着いた生活を送っていた私はエドワードの持つ『加護』に認められるための方法を、近いうちに彼から告げられるだろうと思い待って居た。

けれど、エドワードは以前と同じように、多忙な中にも時間が空けば、フォーセット男爵家に出入りしている。私と話して、まったりと寛いだ後は帰る。

そういう込み入った話をすることは、これまでになかった。

私だって別に神に試される試練を受けたいという訳ではないけれど、やるならさっさと済ませて置きたいというのが本音だ。避けられるなら避けたいけれど、それは出来ないので待つしかない。

だから、私はエドワードが次に来た時に、自分からその事について彼に聞こうと思っていた。

そして、ある昼下がり、図書室で本を読んでいる時にエドワードがやって来た。

「……リゼル。今日は天気良くてちょうど良いね」

明るい日差しの元で見るエドワードは、やはり整っている容貌に光彩がはっきり見える黒い瞳。魅力的な容姿を持っていた。

「ねえ。エドワード……私、聞きたいことがあるの」

いつものように挨拶をしようとしていたエドワードの話を遮り、改まって話し出した私に驚いているようだった。

「……え? うん。何だろう……?」

「あのね。エドワード。私……エドワードと結婚することになれば、伴侶として認められ神に許される必要があるって言っていたでしょう? 難しい試練だとは思うんだけど、出来れば早くしてくれないかしら? 先延ばしにされると、あまり良くないと思うの」

それに、一度失敗したなら、もう一度挑戦したら良いと思っていた。『令嬢ランキング』でも、三年間出続けるご令嬢も居て、それはそれで周囲に良く思われるようなのだ。

神妙に切り出した言葉を聞き、エドワードは言葉をなくしたようになり、確認するように聞いてきた。

「あの……試練を受けたい、ということ? リゼル」

「そうよ。本音を言うと待たされる事が好きではないから、さっさと済ませてしまいたいの。エドワード。何をするかはわからないけれど、失敗したならもう一度挑戦すれば良いと思っていて」

エドワードの黒い瞳はまじまじと私を見つめ、半信半疑のようだった。

……何よ。失礼ね。エドワードが何も言ってくれないから、私から言い出したと言うのに。

「あっ……ああ! ごめん。リゼル……そうだな。今日はあまり時間がないから、今週末に一緒に出掛けないか?」

「今週末……? 別に構わないわよ」

もうすぐグレイグ公爵となるエドワードは当たり前のように多忙だし、時間を合わせるのならば礼儀作法を新しく習い始め社交を始めた程度の私だった。

お茶会にも『令嬢ランキング』の参加者も居たりして、あの時の話が弾むこともある。私には知らない裏事情なども知っている方も居て、そこから人との繋がりが出来たりする。

同じ時に同じ挑戦をしたというのも、大きいのかもしれない。これまでにろくに社交界に出ずとも、私がそれなりに馴染めている理由でもあった。

「わかった。また時間なんかは連絡する。それでは、今週末に!」

エドワードは先ほど来たばかりだと言うのに、軽い足取りでさっさと図書室を出て行ってしまった。

え……これは何? と、正直に言えば思って仕舞ったけれど、もしかしたら私に挨拶をして帰るつもりだったのかもしれないし……一度も、そんなことはなかったけれど。

◇◆◇

約束の週末、エドワードはなんと一時間遅れの遅刻だった。

「……エドワード。私あまり……忙しい貴方の遅刻に、うるさく言うつもりはないんだけど……」

私はグレイグ公爵家の家紋が描かれた馬車に乗り込み、隣に座ったエドワードを睨んだ。

「うん……ごめん」

下手な言い訳も出来ない状況にあるエドワードは、申し訳なさそうに苦笑いしていた。

「せめて遅刻するとわかった時点で、教えてくれれば良かったのに。ドレスも髪型も一生懸命考えていたのに、遅刻するなんて信じられないわ……」

せっかくのデートだしあまり不満は言わない方が良いかもしれないとは思って居たけれど、どうしても我慢仕切れずに言ってしまった。

だって、ドレスはこのデート用に新しいものをおろしたし、髪型だって髪結いをしてくれるメイドと共に今流行の形を何日か前から考えていた。

私がそれだけ楽しみにしていたというのに、エドワードは遅刻して来たし、何の連絡もしなかった。

これは、怒っても仕方ないし、許されることだと思うの。

「いや、リゼルが怒るのは当然のことだよ! 僕がすべて、悪いんだ。今日は楽しませるから、どうか許して欲しい」

エドワードは必死に謝ったので、私はこれ以上責めてしまっては良くないと思った。

「……ちゃんと謝ってくれるなら、もう良いわ。そういえば、シルヴァンは一緒に居るの?」

彼の周囲には神獣である白いイタチ、シルヴァンが居るはず。二人っきりの時になら姿を現しても良いだろし、私はそのつもりでエドワードに聞いた。

「シリヴァンはデートは邪魔出来ないと言って、近くには居ないはずだよ。けど、そんなには遠くに行っていないはずだから、大丈夫」

エドワードはそう言って微笑んだ。与えたのは神かもしれないけれど『加護』を直接実行してくれるのは、あのシルヴァンだそうなので、彼が生きた『加護』とも言えるかもしれない。

「……そうなの。そんなものなのね」

「それはそうだよ。リゼルだって、もしスチューのデートに同行したなら、気まずいだろう?」

想像してみた。お兄様とシャーリー様のデートに同行する私……確かに気まずくて居たたまれなくて『私、先に帰るね! 二人とも楽しんで!』と、なってしまうかもしれない。

「それは、絶対に嫌だわ」

シルヴァンの気持ちが理解出来たとエドワードに言えば、彼は苦笑いをしていた。