軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と毛刈り。

クロムが人外への一歩を踏み出してから数日。

短いメンテナンスが入り新スキル【毛刈り】が追加された。

【毛刈り】は文字通り毛を刈るためだけのスキルだ。

それに伴い一部のエリアに羊が現れるようになったのである。

イズ曰く、素材として優秀なため暇があれば取ってきて欲しいとのことだった。

ちょうど暇だったメイプルとカスミは、二人で一層の草原を探索していた。

「暇だから来てみたが…【毛刈り】しかない私達で大丈夫だろうか?」

「私達じゃないよ、カスミしか持ってないよ……」

防御力に全てを注ぎ込んだメイプルが【毛刈り】を取得出来るわけがない。

メイプルは【パラライズシャウト】による足止め担当である。

羊のHPはかなり低いためHPを削らないようにして足止めをする必要がある。

メイプルはその点において適任だった。

「毛がある羊はいないねー」

「そうだな…他のプレイヤーも【毛刈り】に来たんだろう」

既に【毛刈り】を使われた羊は見かけたものの、普通の羊が見つからない。

そうして探すこと三十分。

「いたぞ!」

カスミが指差す先には三匹の羊。

「【パラライズシャウト】!」

メイプルが即座に羊を麻痺させにかかるが、範囲から外れていたため一匹しか麻痺させられなかった。

二人が麻痺させた羊に近づいていく間に残りの二匹の羊は逃げていく。

「取り敢えず一匹いこう。【毛刈り】」

カスミがスキルを使うと羊の毛が綺麗さっぱり消えてインベントリに羊毛が一つ追加された。

「絶対足りないよな……」

「うん……多分」

羊毛一つを持ち帰ったとしても何かを作るには足りないだろう。

「ふむ……私一人なら逃げた羊に追いつけそうだ。動きを止められるスキルも…ないことはないしな。ちょっと行ってくる」

「うん!分かった」

そうして、カスミは羊の逃げた方に走っていった。

その場には麻痺した毛のない羊とメイプルが残された。

「……………」

メイプルが羊をチラッと見た。

柔らかそうだった。

カスミが一匹の羊を追いかける。

「【超加速】!」

カスミが【超加速】を使うことで追いつけるようになる速度である。

気付かれないように動きを止めなければ【毛刈り】は困難だろう。

「一応……【毛刈り】!」

カスミは駄目元でまずは走りながら【毛刈り】を試してみる。

羊の横を並走するカスミがスキルを使うと羊の毛は綺麗に刈られた。

カスミが立ち止まる。

「動きを止めなくても、スキルと射程圏内に入れればいいのか。ゲームならではだな」

インベントリを確認するときっちり羊毛が増えていた。

もう一体の羊は別方向に逃げていき、そのまま見つからなかった。

メイプルならモンスターにやられることなどそうそうないため、安心して戻ることが出来る。

そうしてカスミはメイプルの元へと戻ってきたのだが、そこには謎の真っ白い球体が鎮座していた。

「は?」

カスミは刀を抜くと警戒しながらその球体に近づく。

「これは……羊毛?」

カスミがその球体を見て触って確かめると確かにそれは羊毛だった。

「【毛刈り】!」

ならばとカスミがその球体に対してスキルを発動させる。

スキルはこの球体にもきっちりと効果を発揮し、羊毛の球体は羊毛十個になってカスミのインベントリに入った。

それと同時、ガシャンと音を立ててメイプルが地面に落ちた。

「メイプル?…あの中にいたのか?」

「中にいたというか……あれ自身というか……」

「ど、どういうことだ?」

「………ちょっと、出来心で」

メイプルはそれ以上詳しくは話さなかった。

「な、何だかよく分からないが…聞かない方がよさそうだな……」

カスミは空気を読んでそれ以上は何も聞かなかった。

「私が二十四時間ごとに羊毛を作れるようになったから、【毛刈り】はお願い」

「あ、ああ。分かった」

二人はシロップに乗ってギルドホームに帰っていく。

途中、メイプルは自分のスキルを再確認した。

【 羊喰(シープイーター) らい】

ギルドホームに戻ったカスミはクロムと二人でテーブルを挟んで椅子に座り話していた。

話題はメイプルと羊毛のことである。

「私がちょっと離れた間に何かスキルを手に入れていたんだ」

「俺の知り合いの言葉を借りるなら……目を離すとすぐそういうことになる」

クロムは俺はもう慣れたと付け加える。

「……慣れたのか?」

「俺もあっち側に深くまで足を突っ込んだしなぁ……」

クロムは自身の装備を見ながら言う。

クロムも一般からかなり外れてきているのだ。

「なら、どうなったら驚く?」

カスミのその問いにクロムが考え込む。

しばらくして、クロムが話し始めた。

「そうだな…そのまま空に浮き上がって雲になって雷でも落とし始めれば驚くかもな」

クロムは冗談っぽくそう言う。

「はははっ!流石にそれはないな」

「ああ、俺もそう思う。ああそうだ。運営からメッセージが来てたが見たか?」

カスミは見ていなかったようで首を横に振る。

クロムはメッセージの内容をかいつまんで話し始めた。

「第三回イベント。二週間後だ」

「なかなか立て続けにくるな……それで?内容は?」

「期間限定のモンスターが現れて、そいつの落とすアイテムを集めるんだ。集めた個数で個人報酬とギルド報酬がある」

クロム曰く、ギルド報酬はギルドの大きさによって必要個数が変わるとのことだった。

メイプルのギルドは小さい証なので必要個数は少なめである。

個人にはランキングがあり、それに応じて報酬が追加される。

また、アイテムの譲渡は出来ない。

インベントリに入るものではなく、個数だけがカウントされるためである。

「……まあ今回はキツイだろうな」

「……そうだな」

二人が言っているのはメイプルのことである。

今までのイベントでメイプルは常に結果を残してきたが、それは強さによるものであり、時間をかけたものではない。

今回ランキングの上位に入るようなことはどうやっても不可能である。

「俺も結構時間はかけてるが……上には上がいるからな」

楓の木内も第三回イベントに向けて準備する期間に突入した。