軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化とその後で。

後日、メイプルとサリーは【楓の木】のロビーでギルドメンバーに別れを告げていた。

「じゃあ、ギルドのことよろしくお願いします!」

「おう。ペインやミィ、それにベルベットにリリィとも話をつけておいてくれたんだ。上手くやるさ」

「落ち着いたら戻ってくることもあるだろう。私達は変わらずのんびりやっておく」

「それに、僕ら見違えるほど強くなってるなんてこともあるかもね。十層はまだまだ探索が済んでないところもあるし、十一層もくるだろうしさ」

「私としては新アイテム……ギルドホームの改築なんかも実装されたら嬉しいわね」

「メイプルさん、サリーさん!」

「ボスの討伐は私達が頑張ります!」

「うん。皆頼もしいし、変に心配しなくても良さそうだよ。メイプル」

【楓の木】の面々はもう今となっては全員最高峰のプレイヤー。初々しかった頃のマイとユイなど、懐かしく感じるほど前のことだ。

「PVEイベントで新【楓の木】としての戦い方も試してきたしな。こう言うのもなんだが、中々いい手応えだったぞ」

「二人がいないことの影響はもちろんあったが、その分はクロムが埋める。気にするな」

「そうそう。ふふっ、ちゃんと頼りになるんだから」

クロムもまたどのギルドも欲しがるトップクラスの大盾使い。防御力で守るメイプルと回避盾のサリーが中心となり、危険な一瞬に反応するのがこれまでの【楓の木】におけるクロムだったが、そのプレイヤースキルは本物だ。

二人の分まで役割を引き受けてもそう簡単にキャパオーバーにはならない。

「でも、メイプルがいなくなると予想外の驚きをもたらす役を誰にしようかな?僕らいつもメイプルに驚かされてばっかりだったから」

「ええっと……その役は……」

「うーん……誰も代わりになれないかもしれません!」

「ええっ!?」

他のギルドメンバーもそれには納得のようだ。

戦闘において開いた穴は埋められても、まるで強力な磁石のようにレアスキルを引き寄せてくるメイプルの行動は真似できない。

真似できていたなら、分身で【暴虐】を増やさなくとも、今頃全員異形になってフィールドを化物の群れが駆け回っていただろう。

「それはまた戻ってきた時を楽しみにしておこうぜ。多分また新鮮な気分で驚かされるぞ?」

「そうね。これまで見慣れちゃうくらいたくさん見せてもらったもの。そんなに何回も驚かされるだなんて変な話だけれど」

「ではその役割はメイプルに預けたままとしようか」

「う、上手くいくかなあ?」

「深く考えずにいつも通りにしてれば勝手にスキルが寄ってくるよ。多分ね」

「うー、サリーまで……分かった!きっとまた何か見つけてみせますっ!」

「「楽しみにしてます!」」

「天使に機械に化物に……他にも色々。次は何かなあ。ふふ、僕達も時間をもらって考えればもしかしたら予想が当たるかもね」

「お、いいな。一人一つ予想して待つとするか!」

「うんうん。その時の階層のテーマにもよるわよね。私ものんびり考えておこうかしら」

「なら当たった人に何か全員で賞品とか用意したいですね」

「なるほど。その方がより楽しめるかもしれないな」

「「面白そうですっ!」」

サリーの提案にカスミが頷き、マイとユイが目を輝かせる。実際、これまでメイプルの進化を的中させた者はいない。

探索から帰ってきたと思ったら触手が生えているなどと、事前にぴたりと予想できたなら、今すぐに占い師にでもなった方がいい。

別れのその時もいつもと同じように他愛ない話をして笑い合って、【楓の木】に和やかな時間が過ぎていく。

そうしてひとしきり話した後で、メイプルは顔を上げて皆を見回した。

「あはは、うんっ!やっぱりしんみりしちゃうのは変だよね!よーし、新【楓の木】の活躍期待してますっ!」

「私も期待してます。メイプルを不安にさせちゃ駄目ですよ?」

「ははっ、おう!任せろ!【楓の木】の大盾使いは一人じゃないってな!」

「ああ!イベントでも上位をまた掻っ攫ってこようじゃないか」

「ふふっ、ギルドマスターにこう言い残されたら、僕もたくさん本を準備しておかないとだね」

「工房もフル稼働させないとね。足りない部分はアイテムで埋めてあげるわ」

「「メイプルさんとサリーさんの分まで、敵を倒して見せますっ!」」

全員からの心強いメッセージ。心配するなと胸を張る六人にメイプルは笑顔を返した。

「じゃあ……また会ったら、あったこと色々話してくださいっ!」

「私からも。また、会いましょう」

二人は一つお辞儀をするとギルドホームを後にする。

そうして扉を出た先で二人は並んで青いパネルを呼び出した。

「じゃあサリー、行こっか」

「うん。あー、勉強大変だなあ」

「現実もゲームも大事だからね」

「こうして送り出してもらったし、戻るにしてもちゃんとやってからじゃないと」

「うんうん!それに、その方が楽しめるよ!」

「ん、間違いない」

「ね、せーのでいく?」

「いいよ。じゃあ……」

二人は一度互いの顔を見て、それぞれのパネルの同じ位置に指を置く。

「「せーの!」」

とんっ、とボタンが押され、メイプルとサリーは『ログアウト』を選択したのだった。