軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と魔王軍3。

数えきれない程のモンスターを消し飛ばして、メイプル達は山を貫く洞窟を抜ける。

そうして広がった視界に映ったのは、既に枯れ果てた草原や森だったもの。

かつては流れていたのだろう川は干上がり、湖は枯れて穿たれた地面を残すのみ。

あらゆる生命がその活力を吸い上げられ、枯れた大地だけが残る景色の中央にそれはあった。

地面に接する大きな紫色の球体。

同色の煙を辺りに撒き散らしながら鎮座する球は、どう見ても自然の一部とは言い難い物質だ。

初めてその目で見たメイプルも一瞬にして理解する。あれが魔王の居場所、メイプル達の決戦の地だと。

「ああやって力を蓄えてるってわけかあ」

「強そう……」

「大丈夫。私達も強い」

「……!うんっ!」

周囲の生命を絶滅させて得ている力を想像して、メイプルが少し不安そうにするも、サリーがすぐに元気づける。

「いよいよっすね!今回はいつにもまして負けられない戦いっす。ヒナタ、全員の支援頼んだっすよ!」

「はい。準備はできています」

「ウィル。私達も細かい手順を再確認しながら行こう」

「ええ、そうしましょうか」

【thunder storm】と【ラピッドファイア】の四人にも四人にしかできないことがいくつもある。

用意した連携や対応のうちいくつかは、四人がそれぞれ適切に動かなければ成立しないものであり、メイプル達同様一人一人の責任は重い。

「ここから魔物の数は増えるが対処できない相手ではない。予定通り我ら【炎帝ノ国】と【集う聖剣】を中心に捌く」

「【楓の木】も洞窟よりは気をつけていてくれ。万が一がないようにな」

「はいっ!」

「今回のメンバーだと大盾使いは俺とメイプルだけだからな。集中していくぞ」

「頑張ります!」

ここにいるようなプレイヤーは基本自衛のための強力なスキルを持っている。

それでも、それらは当然【カバー】程クールタイムが短くはない、ものによっては一日に一回といった重い制限がかかっているものもある。

魔王と戦うまではすぐに再使用可能になるスキルだけで切り抜ける。

パーティーの防御は大盾使いが受け持つところであり、それは魔王戦でも変わらないだろう。

メイプル達が魔王の元へと進んでいくうち、荒れ果てた地面からは紫の煙が噴き出し、メイプル達を囲むように次々にモンスターが現れる。

煙が人の形を取り、赤い光が目のように浮かび上がる。魔王の兵とでも言わんばかりのそれらは、まるで闇そのもののような輪郭揺らぐ黒の鎧を身に纏い、それぞれの武器を手に持っていた。

メイプル達の命を刈り取るため持った武器に力を込めて駆け出す。

されど、その刃が届くことはない。

「【範囲拡大】【光輝ノ聖剣】」

「【多重炎弾】、ノーツ【輪唱】【増幅】!」

「【灼熱】!」

「【崩剣】!」

変わらず吹き荒れる暴力。洞窟内ほどこちらに有利な地形ではないものの、関係ないとばかりに繰り出される圧倒的な範囲と威力を持つ攻撃は、決して低くない防御力と移動速度を持つはずの兵達の接近をそう易々とは許さない。

「【土波】!」

「【旋風連斬】」

それでも何とか近づいてきたモンスターには、ドラグはノックバック付きの攻撃で、ドレッドはその手のダガーで何かをする前に無力化していく。

とっとと魔王を出せ。そう言っているかのような蹂躙劇はやがて魔王の居場所である紫の球にまで至るのだった。

球体に近づいたことで分かるのは、それが竜巻のように勢いよく渦を巻いていること。

普通に中へ入ろうとしても弾き返される。侵入するために必要なもの、ここまで来ればメイプルもそれが何かはっきりと分かっていた。

ペインとミィは一旦止まるようメイプルに手で指示を出す。

「もう一歩進めば魔王への道ができる。準備があるなら今のうちだ」

「バフをかけたところで開幕と同時に消されてしまう。メイプル、心残りはあるか?」

「皆、大丈夫?」

【楓の木】は勿論、他のギルドのメンバーにも声をかける。できることは全てした上でここまで来た。

もはや準備不足は何もない。

全員が力強く頷いたのを見てメイプルが一歩踏み出すと、インベントリの中にあった『魔王の魔力』が反応して飛び出す。

それはメイプルと魔王を遮っていた目の前の壁と同じ紫の光を放つとゆっくりと渦に穴を開ける。

「入ります!」

メイプルを先頭に全員が内部へと侵入する。中では脈打つ太い血管のようなものが何本も地面に走り、エネルギーを吸い上げては、中央で宙に浮かぶ繭のような蛹のような拍動する紫の塊に送り込んでいた。

飛行機械が魔王の棲家の持つ魔力によって力を失う中、目の前に広がるのはメイプル達が聞いていた通りの情景。

あの塊の中に魔王はいる。

十層の終着点、最強の敵に向かってメイプルがさらに一歩踏み出す。

それは魔王を目覚めさせるきっかけになった。