軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と遥か水底2。

クラーケンの消滅によってメイプル達の前に遺跡への入口が姿を現す。

それはメイプルの【古代兵器】に似た漆黒の板でできた扉だった。

カナデは扉に取り出した紋章を突き当てる。すると、扉は二つに割れて三人を中へと招き入れた。

「わっ!?……っとと、水が……」

「遺跡の中は空気があるみたいだね。潜水服はやっぱりちょっと動きにくいから助かるかも」

「ここから敵の雰囲気も変わるし、メイプルも気をつけて」

「うん!」

遺跡の扉を境にして水は見えない何かに遮られるように押し留められている。扉が開いていても水が入ってこないことを見るに、不思議な力によるものなのだろう。

三人は潜水服を脱ぐと遺跡の中を奥へと進んでいく。しばらくすると正面の壁に暗号文字が書かれており、道は左右に分かれていた。

「二文に分かれてる。メイプル、左読んで」

「おっけー!」

メイプルとサリーで書かれた文字を読み解くと、この文は左右の部屋の内容を示していることが分かった。

「右の部屋は攻め滅ぼす大型の守護兵だって」

「左は……悉く撃ち抜く弓兵隊って書いてあるよ!」

これはつまりまずどちらと戦うか選べとそういうことだろう。であれば相性のいい方を選ぶに越したことはない。

「うーん、二人はどっちがいい?」

「メイプルと相性がいい相手がベストだし、守護兵の方がいいかな。弓の方はガードの難易度も高いと思うし」

「守護兵の方は近接型っぽいよね。うん、僕もそれがいいかな」

「じゃあ右だね!防御は任せて!」

大盾だけは白装備にして【悪食】は温存中。メイプルの近接攻撃能力は落ちるが、大盾使いらしく防御を担当していればパーティー内での役割通りの動きはできている。

あくまで攻撃はプラスアルファ。ただ、プラスアルファが大きすぎるといえばそうなのだが。

メイプル達が右へと進むと同じように扉があり、三人が目の前に立つことでそれは自動で開いた。

中は円形の部屋。形容するならコロシアムといったところだろう。

三人が部屋へと入ると後ろの扉は勝手に閉まり、ロックされたことを示す赤い錠前のマークが浮かび上がった。

「僕らが敵を倒すまでは出られないみたいだね」

「元よりそのつもり」

「あ!あれかな?」

メイプルが指差す先、部屋の中央に浮かぶのはメイプルの【古代兵器】と同じ黒いキューブ。それは青いスパークを放つと、ぐんぐんと大きくなり、ガキンガキンと音を立てて変形し大剣を手にした人型になった。変形元がキューブであることを示すように、所々が角張ったままで、人間というよりロボット、アンドロイドという方がイメージに近いだろう。

見るからにパワータイプというような大剣。それでありながら体にはいくつものブースターを着けており、スピードもある様に感じられる。

メイプル達が武器を構えると同時に敵の剣士もまた武器を構えた。

互いに出方を窺う中、メイプルが一歩じりっと足を踏み出した瞬間、剣士の足と背中のブースターが青い炎を噴き上げてその体を一気に加速させる。

「【大規模魔法障壁】!」

その加速を見てカナデが咄嗟に障壁を展開するが、剣士は一刀にしてその障壁を叩き割る。

「【毒竜】!」

「【水竜】!」

メイプルとサリーの放った二つの竜が剣士に直撃するものの、ダメージを受けながらも突進の勢いを緩めることなく肉薄し、その大剣を振るった。

「うっ……!」

サリーは回避したものの、カナデは避けきれずガードの上から叩き切られたメイプルは、【身捧ぐ慈愛】による強制カバーも含めて二重にノックバックを受けて後方の壁に打ち付けられうつ伏せに倒れるが、持ち前の防御でダメージ自体はない。

「大丈夫!貫通効果はないみたい!」

「こっちを選んで正解だった!メイプル、ゆっくり起き上がってていいよ!」

「僕らで相手しておく」

「【水纏】!【フレイムバレット】!」

「【鈍化の雨】」

カナデが降らせたのは【AGI】低下の雨。動きの鈍った剣士に対してサリーは炎の弾丸を放ちつつ、ダガーでの攻撃を仕掛けにいく。

「……!」

サリーは剣士の黒いボディに青いラインが駆け巡るのを見て危険を察知し、咄嗟にバックステップを踏みつつ飛行機械も使って距離を取る。

剣士の体からドーム状にエネルギーバリアが展開されたのはその直後だった。

「へぇ、いいスキル持ってるね!」

「【フレイムランス】!」

「【古代兵器】!」

起き上がったメイプルも攻撃に参加して、バリアが消えたタイミングでサリーが再度飛び込む。剣士は手に持った大剣を勢いよく振るうが、飛行機械で機動力を強化したサリーにはただの攻撃など当たりはしない。

「【ダブルスラッシュ】!【ウィンドカッター】!」

隙は最小限に止めての攻撃がHPをさらに削る。サリーはそのまますれ違うように位置を入れ替えるとダガーのうち一本を弓へと変形させた。

見た目こそ揃えているものの、最近のサリーのダガーのうち片方は、自在に形を変えられる新しいユニークシリーズのものだ。

サリーは距離を取りながら矢を連射してダメージをさらに稼ぐ。そうして剣士の注意を引けば今度は二人へのガードが甘くなる。

「【滲み出る混沌】【砲身展開】【攻撃開始】!」

「【呪いの炎】【大凍結】」

メイプルの攻撃がヒットして動きが止まった剣士の足元に赤と青、二色の大きな魔法陣が展開され炎が体を焼き、そのすぐ後からパキパキと音を立てて凍りついていく。

「これだけ隙ができれば十分じゃないかな?」

凍結し完全に動きの止まったボスの向こう、朧を呼び出し炎と水を纏ったサリーが両手にダガーを持って距離を詰め直す。

カナデの言う通り、ただの牽制でない大技を叩き込むための余裕は確保できた。

「【セクスタプルスラッシュ】!」

凍りついた体をサリーのダガーが切り裂く度、ダメージエフェクトが弾ける。

最後の一刀が胸部に深い傷を残すと、剣士の漆黒の体にヒビが入り一気に砕けて消えていった。

「ふー……シンプルな相手でよかった」

「メイプルにもダメージ入らなかったしね。僕もちょうど引いてたスキルにいいのがあってよかった」

「よーし、どんどん先に進んでいこう!」

「今回でちゃんと『魔王の魔力』まで辿り着こう」

「うんうん。この調子ならやれそうだね」

まず一体古代の技術によって作られたガーディアンを破壊して、メイプル達は最深部を目指すのだった。

八層エリアのラストダンジョンというだけあって、遺跡内部は暗号を解読しながらの謎解きによる分岐が多く、さらにその上で戦闘も多い。

それでもコスパのいいアタッカーであるサリーと、【身捧ぐ慈愛】による防御が貫かれなければパーティーごと無敵にするメイプル、カナデはソウの【擬態】を使って第二のメイプルを生み出すこともでき、この中で唯一いくつもの無敵スキルを携えた防衛ラインも完備されている。

楽にとはいかないものの、戦いは順調に進んでいた。

「【セクスタプルスラッシュ】!……ふぅ」

「ナーイスサリー!」

漆黒のビームライフルを持った敵をまた一体サリーが斬り捨てる。

カナデが【神界書庫】で引いてきた今日限りのスキル【大凍結】。これによって動きを止めることで、サリーとメイプルが敵の攻撃を気にすることなく攻めに転じる展開を作り出せていた。

「実弾なら弾けるんだけどな」

「ははは……それもおかしな話だけど。弓兵が出てきた時は普通に弾いてたね」

「ウィルバートさんのに比べたら遅い遅い」

「あれすごかったよねえ」

「さっきのライフルより速いし。サリーはそれも弾いてたけどさ」

実体がある限りサリーは弾く。それはメイプルの防御が貫通攻撃でなければ貫けないのと同じ程確実なことだ。故に三人も当然のように弾けるものとして戦略に組み込んでいる。

ドロップした素材を拾うと、三人は部屋を出て廊下を歩く。廊下を歩く時はメイプルがドリルを体に複数個巻き付けることで【古代兵器】のエネルギーをチャージする。普段は一つで十分なのだが、絶え間なく前方にガトリングを発射し続けているため、ドリル一つではエネルギーの減りが早すぎるのだ。

前方から何が来ようと光弾のガトリングに蜂の巣にされるところからのスタート。積極的滅殺系索敵で三人は道中の細かな戦闘を有利に進められていた。

そんな三人が行き着いたのは三方向に分岐した通路の前。それぞれの手前には暗号文字で何かが書かれている。

「三つだし一人ずつ読も!」

「オーケー」

「僕は左の方を読むよ」

三人がそれぞれ何が書かれているかを読み解く。するとどうやら今回は正解の道を選ぶためのヒントなどというわけではないようだった。

「うーん……読めたけど……」

「私の方は良くないことが書いてあった」

「僕の方もだね」

「え?二人も!?」

「私の所はここから先、ダンジョン内で一つのステータスがランダムにゼロになるみたいなことが書いてあった」

「僕の方は敵のエネルギー充填、攻撃力と移動速度が1.5倍になる」

「私はHPの最大値が半分になっちゃうって……」

「なるほど、当たりはなしっていう作りなのかな?カナデ、何か不審な所とかありそう?抜け道とかどれも踏まなくていい方法」

「うーん……いや、特にそういうのはない気がする。勿論僕が気づかないこともあるし、絶対ではないけど」

「オーケー。ありがとう」

「じゃあどれかには入らないといけないってこと?」

「そうなるね。ボス戦まで継続してかかる効果だから慎重に選ぼう」

「ステータスゼロは危ないよね。僕とサリーの攻撃力と機動力が落ちたらまずいし。何より……」

「うん。メイプルの防御力がなくなった時本当にどうしようもない」

メイプルから防御力を取ったなら全ステータスゼロの怪物の誕生である。

レベル1のプレイヤー以下の能力に、攻撃を受けることを前提とした立ち回り。これではいくらスキルが強くとも流石に苦しい。

「HP半分もメイプルに受けてもらう可能性を考慮すると嫌かなあ。こっちは僕とサリーはあんまり関係ないけどね」

「じゃあ残ったのにする?」

「私はそれが一番いいと思う」

「攻撃力は結局貫通攻撃かどうかしか気にしなくていいし、移動速度も待ち構えるなら影響は少ない」

「じゃあこれにしよう!」

三人は敵の攻撃力と移動速度の強化を選択して奥へと進むことにした。

そうして進む中、次は二方向への分岐と暗号文字を見て、三人はこのダンジョンで降りかかる試練を概ね把握した。

「これ、不利な効果が増えていく感じだね」

「避けられないみたいだし、僕らに影響の少ない方を選んでいくしかないかな」

「慎重に決めよう……!」

一度効果が発揮されれば解除はできない。道を選ぶ前こそ慎重に。メイプル達は後悔することのないよう相談して三人の総意で道を決定するのだった。