軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と撮影。

骨でできたボスの体が木っ端微塵に弾け飛び消滅していくのを見届けると、命を吹き込まれた骸骨達もその場に崩れ落ちて動かなくなった。

「予定通りいったな。四人ともナイスだ」

「上手くいって良かったです……」

「次もこの調子でいこうねお姉ちゃん!」

「勝つ時は圧勝になる分時間もかからない、まだまだ攻略も進められそうだ」

じりじりとしたHPの削り合いなど起こらない。隙を見せればボスすらほぼ即死、攻撃はメイプルに有効かそれ以外かを気にして、メイプルが受けられないものをクロムが受ければいい。

プレイヤーのように思考して弱点を的確に突こうとしなければこのパーティーは崩せない。最後の保険としてメイプルが名前を呼ぶと、事前に決めたスキルを発射して水で妨害をしてくれるサリーもいる。攻撃に対する妨害も防御も手厚いのだ。

「よし、次だな。このペースならそうかからずに『魔王の魔力』まで辿り着けそうだぞ」

「頑張ります……!」

「どんな敵も任せてくださいっ!」

タイムアタックでもしているかのような勢いでダンジョンを一つクリアしてみせた五人は、現れた魔法陣に乗って地上へと戻り、次なるダンジョンの位置を確認し、目的地を定める。

「乗ってくださーい!」

メイプルはぺたんと地面に伏せると背中に三人を乗せて、次の蹂躙先へ向かって移動を始めた。

「ん?ユイ、それ何だ?」

移動を続けるメイプルの背中で手に持った水晶を右へ左へと向けるユイ。手に持っていたのは映像が記録できるアイテムだった。

「メイプルさんが映像を残しておこうって……思い出としてサリーさんに見せることもあるかも……?」

「ある、か?ま、まあ残しておいて損はないか……」

録画されているのは今周りに見える景色だ。何度見てもどこを見ても幽霊と多種多様な死体で溢れていて、サリーが見る気になりそうな場所はない。

「どっかあったっけな……」

ホラーエリアといえどダンジョンによってテイストは異なる。一箇所ぐらいならサリーが見ても問題ない場所があったかもしれないと、集めた情報を隅々まで確認する。

「ゾンビの親玉……とかは?」

「サリー?……駄目みたいです」

「幽霊騎士……ネクロみたいな奴だ」

「……難しそうです!」

「あとは見るからにゴーストって感じのやつばっかなんだよな……狭いダンジョンはそれはそれで問題あるしなあ」

元よりサリー用の映像確保は駄目でも仕方ない計画だ。できる限り接写でホラーテイストの少ないモンスターを撮るのがベストだろう。

「なら次はゾンビの方に行くか。なーに、こっちはさっきのやつみたいに変なこともしてこない。サクッと終わるはずだ」

「「「はーい!」」」

「頑張って……」

メイプルはクロムの指示に従ってフィールドを駆け抜けていくのだった。

目的地に辿り着いてすぐクロムの言うようにギミックを解いていく。メイプルは細かい作業ができる体ではないので、ここはマイとユイ、クロムの三人の担当だ。

「ユイ、そっちの骨を左に移動させてくれ。マイはそっちのを右だ」

「はいっ!」

「えっと、右に……」

言われた通りにあれこれと動かして、最後の一つを終えた所で、動かした骨がカタカタと揺れ始め紫の怪しげな炎に包まれる。

それは一気に広がって、五人を別世界へと連れていった。

どこまでも広がるのはいくつもの墓標の並ぶ荒れ地。メイプル達が構えるより先に、マイとユイ、クロムの足を地面から生えたゾンビの腐肉の腕ががっしりと掴んだ。

「「わっ!?」」

「お、おぉ……」

驚いたマイとユイが抵抗して足をぐんと動かすとゾンビの腕が千切れ飛ぶ。

驚くクロムの足を掴むゾンビの腕も、近づいたユイが雑草でも引き抜くように無造作に引き千切りぽいっと投げ捨てた。

「二人は、対象外か」

サリーは口の中、メイプルは普通のプレイヤーの形態でないこともあってか、腕は寄ってきていなかった。

ただ、これはあくまで多少驚かせつつ可能なら拘束する程度のもの。

ボスはここにいるとばかり、ドォンと大きな音が鳴り地面が避け化け物が現れる。いくつもの死体が重なり合い組み合わさった死肉の塊。

四本の長い腕と二つの頭。地面に体を引き摺りながらゆったりと全身する巨体はメイプルの【暴虐】以上の大きさだ。

それは移動に合わせボトボトと自分の体の一部を地面にこぼし、次なるゾンビを生み出していく。同時に溢れたドス黒い血は、地面に落ちる度じゅぅっと音を立てて土を焦がす。

見た目は強烈。いくつもの死体が組み合わさっていることも威圧感と存在感を増す要因となっていた。

「怯む必要はない!マイ、ユイ、正面突破だ!」

「いきます!」

「メイプルさん、防御を……!」

「まっかせて!」

メイプルの背に飛び乗って、ゆっくりと近づいてくる死肉の塊との距離を一気に詰めた二人は、【救いの手】による遠距離攻撃の射程内にボスが入ったことを確認して先制攻撃を仕掛ける。

「「【ダブルスタンプ】!」」

振り抜かれた鉄塊は十二。防御しようとした四本の腕を叩き折って吹き飛ばすと、そのまま胴体に力のままに叩きつける。

肉を潰す鈍い音、直後勢いよく弾け飛ぶボスの肉体。形を保てない程にグズグズになって体は辺りに散らばったが、ボスのHPは全く減っていない。

「それだ!浮かんでる赤い心臓を狙え!」

クロムが指差した先、死肉の塊が弾け飛び剥き出しのまま宙に浮かぶ、拍動する大きな心臓。

「……!お姉ちゃん!」

「【飛撃】!」

即座に放った追撃の八つの衝撃波が心臓を強烈に打つ。一つ一つが必殺の八連撃はボスのHPを半分まで削って停止し、心臓の拍動は強まり赤々とした輝きを外へ拡散させるように、反撃の熱波を全方位に放ってきた。

確実に耐えた上で強力なカウンター。ただ、それはあくまでダメージが通るのならだ。

「大丈夫大丈夫!心配しないで!」

クロムが最初に言った通り、警戒すべきものはないのだ。メイプルの守りを崩せないものに挑戦権はない。それは何度も繰り返されて今も変わらない絶対のルールである。

熱波で敵を退ける予定だったボスは散らばった死体を集めて体を再構築する。腕を八本に、体をより大きく、地面には焼け付く血液の海を広げていく。

強力になっての再生。しかしより迫力を増した巨体はその瞬間、先程以上の勢いで木っ端微塵になった。

既に距離を詰め終えて再生を待っていたマイとユイによって、大きなダメージが叩き込まれたのだ。

「お姉ちゃん!撮っておくから決めちゃって!」

「うん!」

空に向けて録画を開始するユイの前で、マイは飛行機械の力を借りて空へと飛び上がる。

「【ダブルストライク】!」

振り抜かれた大槌、それが心臓を強打してダメージエフェクトと共に血液を撒き散らす。確実な死の手応え。HPが全損するのを確認したマイに地上から声がかかる。

「いいの撮れたよー!」

「ふふっ、うん……!」

画角的にもゾンビは映っていない。これならサリーにも見せられるだろうと、消滅し光となっていくボスのエフェクトをバックにユイ監督からマイにオーケーの合図が出るのだった。