軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化とイカ退治2。

「もうあれだ!こうなったらもっと水中の毒を強めよう!」

「じゃあ…触手に【悪食】するよー!」

「やっちゃって!」

メイプルの【悪食】がバクンバクンと触手を飲み込んでいく。

その度に表面に赤い結晶が浮かび上がってくる。

これが最後のMPチャージである。

サリーはというとすっかり落ち着きを取り戻し、魚達の扱いに慣れ始めて今は無限に湧いてくる経験値程度にしか思っていなかった。

低経験値ではあるが、低HPのためサリーにも狩りやすい。

さらに、メイプルにちょっかいをかける魚を減らすことにも繋がる。

「メイプルに任せて適当にやっとこう」

サリーはいつものように走り回ってのヒットアンドアウェイで魚達と戦う。

サリーはメイプルに丸投げした。

メイプルはというと。

「さーて…上手くいくといいなあ…」

メイプルが水の壁に近づいていく。

触手は先程消し飛ばしたところなので少しの間は平穏が約束されている。

魚達はお構いなしにメイプルに攻撃を仕掛けている。

「おー…近くで見ると可愛いね!」

メイプルが魚に手を伸ばすと魚はその手にガンガンと体当たりを繰り返す。

メイプルが笑顔なせいで、モンスターに襲われている光景が、魚と戯れるほのぼのとしたワンシーンになってしまっている。

「ちょっと離れてたほうがいいよー?」

メイプルが新月を水の壁に刺す。

「【 毒竜(ヒドラ) 】!」

何を狙った訳でもない毒竜が水の中に飛び出していく。

当然、それは水に溶け込んでいってしまいイカに直接ダメージを与えることは出来なかった。

「綺麗な海をー、毒の海にー!」

水の領域はかなり広く、まだまだ撃ち込む必要があるだろう。

ただ、着実に水の色は紫になりつつあった。先程よりは少し濃くなっている。

「触手に投げ込まれないように壁から離れようっと」

魚の撒き散らしている水も、メイプル自身が生産した毒も踏み越えて中央へと戻っていく。

【毒竜】を使うためには少し時間をおかなければならない。

その間に触手も復活する。

サリーは先程から全くイカに攻撃していないので当然メイプルに向かってくる。

「もういいよ…好きにするがいい!」

メイプルが地面に寝転がる。

どうせ逃げられずお手玉されるのだから抵抗するだけ無駄だと思ったのだ。

「おっ?」

地面に寝転がると触手は上からベチンベチンと叩いてくる。

立っていた時とは違い跳ね上げられるようなことは無かった。

「これいい!これいいよ!」

「うわ…また凄いことしてるよ…」

サリーはサリーで後ろに魚を引き連れつつマラソンしているのでどっちもどっちといえる。

「【 毒竜(ヒドラ) 】!」

しばらくして立ち上がり水中に撃ち込む。そしてメイプルが再び寝転がる。

触手に跳ね上げられることがないと分かったため、寝転がる場所は寝転がったまま手を伸ばすだけで新月が水の壁に届く場所だ。

そうして、次の攻撃機会まで待とうとしたメイプルだったが。

ある変化に気付いた。

それはサリーも同じだったようだ。

「「んっ?」」

イカのHPがほんの僅かに減り始めたように見えたのである。

見間違いかもしれないと思うほどの微量な変化だったが、ちょうどHPバーが減る瞬間を見ることが出来たことが大きかった。

「ちょっと減ったね!」

「うん、そうみたい。でも…」

一度減っているところを見てから次に減るまでの時間が長かった。

何と五分である。しかも一ミリ程しかHPは減らないのだ。

このままダラダラとHPが無くなるのを待つのは流石に辛いものがある。

つまり、まだ毒が弱すぎるということだった。

しかし、効くと分かったことは大きな収穫だった。

「頑張って!」

「うん!頑張る!」

その後、数回の【毒竜】を撃ち込むとHPの減りが目に見えて加速した。

一時間程経過したところでHPを一割削ることに成功した。

イカのHPバーは残り六割である。

このままでは六時間かかってしまう。

「【ポイズンランス】!」

【毒竜】も弾切れとなり、メイプルは少しでも足しになればと別のスキルを放っていく。

「後六時間走るのはちょっと…」

「どうしよう…」

考えても考えても今の状況を瞬時に変えるような手段は無かった。

そうしているうちにまた一時間が経過し、イカのHPが五割を切る。

「うわっ!?」

メイプルは水の壁近くで寝転んでいたためすぐに分かった。

水の領域が広がってきていることに。

壁と天井が近づいてくる。

それらが止まった時には既に、今二人がいる場所の広さは半分になっていた。

さらに、イカがイカスミを吐き出し始めた。

それによってイカの姿が見えなくなってしまう。

正攻法ならば厄介な攻撃だっただろう。

ただでさえ動き辛い水中で視界すらも奪われてしまうのだから。

もっとも、正攻法からかけ離れた二人には関係の無いことだった。

「メイプル!【悪食】は後何回残ってる?」

「あと一回!」

「……とっておいて!」

「了解!」

メイプルにはサリーの意図が分からなかったが取り敢えずとっておくことにして攻撃を引き受け続ける。

水が近づいてきたことによって魚達の流入も加速している。

つまり、サリーが逃げるのも辛くなるということである。

「【挑発】!」

逃げ辛くなってきたのならばメイプルが引き受けるのが得策だった。

経験値のために死んでしまっては元も子もない。

「ありがとう!」

「別にいいよ!」

イカスミは常に出続けている訳ではないようでメイプルの毒が薄く広がっていくのと同様に薄まっていった。

二度目のイカスミは無いようで再び優雅に泳いでいるだけに戻った。

「あそこか…ギリギリ届くかな…?よし!メイプル!」

サリーがメイプルを呼ぶ。

メイプルはもちろん立ち上がって近づいていく。

「どうするの!?」

「ついてきて!【跳躍】!」

近くにきたイカに向かって跳ぶものの後十五メートルほど足りない。

「【カバームーブ】!」

メイプルは言われた通りについていく。

「いくよ!【背負い投げ】!」

サリーはメイプルを引っ掴むと水面向かってぶん投げた。

「うぇええええっ!?」

「【衝撃拳】!」

ゴッという音と共にサリーの拳から空気の弾が打ち出されメイプルを押し出しながら水面を破る。

イカまで一直線に飛んだメイプルはその大盾を振り抜いた。

HPバーがガクンと減る。

「これぞメイプルキャノン!」

「ち、ちょっと着地は!?」

「………考えて無かった」

ガシャンとメイプルが落ちるのは少し先の話。