軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と鉱物。

翌日。四層エリアに再度集まった三人は飛行機械で次なるクエストの目的地まで飛んでいく。あくまで異界への扉を越えてからが本番なため、そこまで行くのはそう難しくない。

無事目的地まで辿り着くと出力を抑えて着陸し、扉を出現させて中へと入る。

昨日一度経験したこともあり、恐れることもなく中へと入ると目の前には幅の広い渓谷が広がっていた。

「下は……急流か」

「こっちから崖沿いに下りていけそうだね」

端に立って下を覗き込むと、断崖絶壁に挟まれた底の底で勢いのいい水が音を立てて流れていた。流れる水に巻き込まれた時に命の保証はできない。落ちた際に死ぬように作られているのなら、それは圧倒的な防御力を持つメイプルでも同じことだ。

「飛行機械は駄目かな?」

「ぱっと見は駄目じゃない……けど。こんなに露骨に飛行機械で下りられれば楽って構造になってるのはちょっと違和感がある」

「同感だ。罠というほどではなくとも、何かしらの対策が待っているような気はする」

昨日の戦闘は間違いなく飛行機械を意識した作りだった。全てのエリアで対策を打っているわけではないだろうが、飛ぶだけであまりに簡単になるというのは間違った道に招かれているようで少々気味が悪い。

「順路通り行った方がいいかな?」

「そうしてみようか。日を改めて時間の余裕もあるわけだし」

「ならこっちだな。落ちないように気をつけていこう」

崖沿いに飛び出した狭い道は幅四十センチ程。ここで満足に戦うのは難しい。飛行機械があるとはいえ先程の通り飛ぶことへの懸念があるためあくまで最終手段だ。

三人がしばらく進むと崖に亀裂が走っており、中へと入れそうな道を見つける。

かろうじて三人が横に並べないこともない広さの道でしかないが、崖沿いよりはよっぽど安定した足場である。

「こっちだな」

「よかった、一旦歩きやすくなりそうだね」

「敵も出てくるかな?」

「おそらく。防御の準備はよろしくね」

「分かった!」

「明かりはこちらで確保しよう」

狭い道で天井も高くないため、ここもサリーとカスミの機動力は活かしづらい。

ここはメイプルを前に出して、先頭で不意の攻撃に備えるのがベターだ。

メイプルはしっかり大盾を構えつつ曲がり角ではそっと顔を出して慎重に先を確認する。

「五層エリアでの経験が活きてるね」

「急に撃たれたりしたら大変だし!」

「いい警戒だ」

緩やかな下り坂を進んでいくと、前方に壁に埋まったオレンジの輝きが見えてくる。

「私が確認するね!」

「うん。よろしく」

大抵のものに触ってもいいメイプルが輝きの元まで歩いていくと、それはゆらめく光を内部に湛えた鉱石だった。鉱石は壁から生える形でしっかり固定されているようで、メイプルにはぽろっと落ちたりはしなそうに見えた。

メイプルがそれをちょんちょんとつつくと中の光が溢れ出てボッと小さな炎が飛び出た。

「わっ!」

驚いて手を引くメイプルだが、ダメージは受けなかったようで、それなら一安心と胸を撫で下ろす。

「炎が出るみたい」

「素材を手に入れてこいって話だったしこういうのかな?」

「必要なのはボス素材だ。だが、これはこれで何か属性に関わるアイテムになりそうだな」

「持って帰れそうなら持って帰ろっか!」

「いいと思うよ。イズさんも喜んでくれそう」

目の前の小さな一つはあくまでどういったものかを示すもの。アイテムとして手に入れられるよう、採掘ポイントを探しながら奥へとしばらく進んでいった三人の目の前に、自分達のライトの光がかき消されてしまう程のオレンジの輝きが姿を見せる。

「おおー!」

大きさも数も先程とは比べものにならない鉱石がずらり。メイプル達が探していた採掘ポイントもきっちりあって、これはいいとばかりにツルハシを取り出してメイプルが歩いていく。

「……?」

そうして鉱石の元まで来た所でメイプルは視界の端に一瞬違和感を覚えてそちらをちらと見る。

カタカタ、コロッ。軽い音を立てて動き出した手のひらサイズの一つの鉱石が壁から剥がれ落ちる。その上にはHPバー。メイプルがモンスターだと気づいた時にはそれは地面に落ちて小さな火花を生んでいた。

「み、【身捧ぐ慈愛】!」

火花が連鎖し辺りの鉱石が全て炎を噴き出していく。まるで火竜の口の中に放り込まれたかのような豪炎が、通ってきた道ごと全てを炎に包み焼き尽くした。

「……ま、間に合ったあ」

「大丈夫!?」

「うん!そっちはー?」

「問題ない。今行く」

ばちばちと火の爆ぜる音が響く中声を張り上げて無事を確認する。少しして収まり出した炎をかき分けて二人がメイプルの元までやってきた。

「驚いたな……何が?」

「えっと、ちっさな鉱石と同じ見た目のモンスターがいてそれが点火しちゃったみたい」

「これ連鎖するんだね。ちょっとボスも使ってきそうだなあ」

「可能性はある。同じ仕様ならメイプルがいれば問題はないが……」

強烈な範囲攻撃の予感。今のように通路全てを巻き込んでこられるとカスミの【心眼】もサリーの技術も役に立たない。

「とりあえず【身捧ぐ慈愛】はそのままで。今回はちょうど目の前で燃え出したけど、いきなり奥から炎が噴き出してくることもないとは言えないし」

「了解!二人も近くにいてね」

「ああ、ボスに辿り着く前に燃え尽きるわけにはいかないからな」

「あとはここで採掘もしていこっか。メイプルがいれば間違って発火しても大丈夫みたいだし」

「まっかせて!まずはここから……あ」

メイプルが採取のために叩きつけたツルハシの根元で、何らかの判定が行われたようなエフェクトと明らかに良くないことが起こると思える暗く低い音。

この危険物を安全に掘るにはどうやらメイプルのステータスは低すぎたらしく、先程の比ではない大きな火花をきっかけに辺りは業火に包まれることとなるのだった。

戦闘特化前衛タイプの三人ということもあってステータスは全く足りず、採掘イコールギミック起動になってしまってはいたものの、メイプルが全てを庇うことによって無理やりその問題点をクリアし無事満足いくだけの鉱石を手に入れることに成功した。

「上手くいったね!」

「うん。上手く……上手く?いった。うん」

「過程は想定されたものではないだろうが……それはそれだ」

インベントリにどっさりと鉱石を詰め込んで奥へと向かう。途中幾度も炎が吹き荒れたが気にする必要のないことだ。

そんな三人が次に出会ったのは青い輝きを放つ鉱石。

「……水かなあ?」

「水っぽい」

「水だろう」

満場一致でこの鉱石は水が出てくると読んだメイプル達は何が起こるかを考える。

「何でもない水の刃とかならいいけど……激流でノックバックとか、水で窒息狙いとかは嫌だよね」

「とりあえず窒息の方をアイテムでケアするか。幸い八層の時の余りが山ほどある」

「ノックバックは……とりあえず私が何とかするよ。玉座置くのはもったいないし、ノックバックがあるかどうかは確かめておきたい」

そう言うとサリーは糸で自分を地面に固定するとメイプルにもそれを伸ばした。

「カスミ、チェックお願い」

「分かった」

自由に動けるカスミが青い鉱石の光溢れる中へ踏み出すと、想定通り小さな鉱石が転がり出て直後一瞬で通路全てを水が埋め尽くした。

「これは……ノックバックはないね」

糸の感覚からはメイプルがひたすら引かれているような勢いは伝わってこない。水も辺り全てを沈めただけで流れはない。

「メイプル、どうだ?」

窒息狙いもなくはないだろうが、それは先程の炎と比べて随分弱いように思われた。

ダメージこそ入っていないものの、攻撃の全てを自動的に庇っているメイプルに、何か影響があるのではないかとカスミが確認する。

「……あっ!あー、そういうことかも!」

「何か分かった?」

「HPとMPと【VIT】が半分になってる!効果時間は十分だって!」

「全ステータス50%ダウン?重……ま、まあでもメイプルなら?」

「うん、まだまだ【VIT】は一万くらいあるよ!他は元々ゼロだし……」

「なら問題はない、か。それで耐えられない攻撃は普通ない」

「だね。これも私達は当たっちゃダメかも。ありがとうメイプル、気をつける」

「火の次に水か。まだ属性は存在するが果たして……」

「とりあえず前に進もう。この水がいつ引くかもわからないし」

「そうだね!足はこれ以上遅くなってないから大丈夫!」

「ん、じゃあメイプル先頭で。糸ほどくよ」

「はーい」

水のギミックも問題なく切り抜けて、三人はさらに奥へと進んでいくのだった。