軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と十層へ3。

ノックバックで跳ね飛ぶメイプルを優しくキャッチして戦闘を繰り返すこと数回。

魔法使いの激流による一方的な陣形破壊を中心として戦闘を組み立てている敵にとって、全てを引き受けてしまうメイプルとそれをその場に止めておける手段は強烈に刺さったと言える。

勝ちパターンに嵌めることに成功したメイプル達は、余裕を持ってダンジョンを突き進んでいた。

「……?浅くなってきた、か?」

「そうみたいね」

「ふぅ、ようやく移動も楽になりそうだ」

最早水路のようだったダンジョンだが、先に進むにつれ水位が下がっていき、やがて水は完全に引いて乾いた床が姿を現した。

「少し狭くなったか。ハクは戻すしかないな」

【超巨大化】は強力だが、スペースの都合上どこでも使えるわけではない。特に屋内では使えないところがほとんどだ。

「まあ、ノックバックがなくなるなら大丈夫だしね。ただの攻撃なら僕らもサポートできる」

「もうないといいなあ」

ここまではメイプルはハクに打ち付けられて身動きが取れないか、戦闘間の移動かのどちらかしかしていない。

それでも役立っているあたり、敵との相性はいいような悪いような微妙なところだ。

「メイプルも防御ありがとう、まだまだここからだけどね」

「うん!頑張るよ!」

「雰囲気が変わりましたね……」

「モンスターも変わってくるんでしょうか?」

「ありえそうね。同じなら地形を変える必要もないでしょうし」

しばらく進んで、背後に水もすっかり見えなくなった頃。前方、薄暗い通路の奥に仄かな明かりが見てとれた。敵かと身構えるメイプル達だが、明かりはその場から動くことはなく、やがてその正体が何なのかが明らかになる。

「うわっ……すごーい……」

メイプルの目の前には深く底へと続く穴と、そこに足場として立ち並ぶ石柱があった。

覗いた穴の底はコポコポと音を立てるマグマが赤い輝きを放っており、落ちればメイプルとて無事では済まないだろう。

石柱間にはそれなりの幅があり、飛び移れないほどではないが足元の状況はかなり不安定だ。

「継続ダメージ……即死ってことはないよな?」

「落ちてみる?命綱はつけてあげるわよ」

「遠慮しておく」

「それは冗談としても、本当に高いね。落ちたら戻ってくるのはかなり大変そうだ」

「飛び移ると……失敗した時が怖いし、私が足場を作るよ」

サリーは【水の道】を利用して足場と足場を水で繋ぐ。

「【氷結領域】」

パキィンと高い音が響き、放った水が凍りつく。足場を繋ぐのは幅の広い氷の橋。滑り落ちないようにだけ気をつけて、八人はマグマの上を進んでいく。

「これなら安全だね!」

「うん……ま、そういうわけにもいかないみたいだけど」

サリーが武器を構えたのを見てメイプルも足元から目線を上げて前を向く。

眼下のマグマだけが敵というわけではもちろんない。

正面から向かってくるのはワイバーン一体に弾ける電気の塊が二体。不安定な足場だが、戦闘は避けられない。

「カスミ、メイプル!」

サリーに呼ばれた二人は意図を察して前に出る。一方的に空中を取られているのは具合が悪い。敵が本格的に攻撃を開始するより先に仕掛けることで少しでも状況をよくしたい。

空中戦ができるカスミとサリーが飛び出して、【身捧ぐ慈愛】でカバーできるようにメイプルが続く。

「【鉄砲水】!」

【氷結領域】の効果が続いているため、生成した水はそのまま凍っていく。せり出した氷の上をカスミが駆け抜け、そのまま跳躍する。

それに反応したモンスター達。素早く炎を吐き出すワイバーンと、それに合わせて電塊も激しくスパークし電撃を撒き散らす。

カスミはそれ全てをその身で受けつつ、落下しながら迫る。

「こっちは大丈夫ー!」

背後から聞こえるのはメイプルの声。攻撃を引き受けても問題がないなら、気にすることは何もない。

「【武者の腕】【血刀】」

目の前のワイバーンを呼び出した二本の腕に攻撃させつつ、モンスター全員を巻き込むように液状の刀を振り回す。

「ネクロ【死の重み】だ!」

クロムは移動速度を低下させカスミの攻撃をサポートする。

「【一ノ太刀・陽炎】」

落下し始めたところでスキルによる再上昇。しかもこのスキルは確実に敵の正面に飛べるおまけ付きだ。

スキルによって成り立つ空中移動も随分慣れたもの。カスミは【三ノ太刀・孤月】も利用し、複数回空を飛び回ると、耐久力の低い電塊をまず撃破して、残ったワイバーンの背に着地する。

「【四ノ太刀・旋風】!」

【武者の腕】と共に繰り出した連撃が完璧にヒットしてワイバーンは力なく崩れ落ちる。消滅するより先に、その体を足場にしてカスミは飛び退き、石柱の一つに着地した。

「ふぅ、こんなところか」

「ナイスー。結構あっさりだったね」

「その分落ちた時は相当まずいことになるのだろう。気をつけよう」

「そうだね」

前に出ていた二人の方へメイプル達も合流する。ここの最大の脅威は戦場そのもの。落ち着いて、足元を確かめつつ戦えばモンスター自体はそう恐ろしいものではない。

「気をつけて進んでいこー!」

目の前にまだまだ続く石柱の足場を見つつ。メイプルは全員に声をかけて氷の橋を渡るのだった。

その後サリーに続いてイズも取り出した板を使って橋をかけたことで、足元はかなり安定した。お陰でマイとユイも落ち着いて鉄球での攻撃をすることができ、石柱エリアを突破する。

工夫しながら道中を攻略した八人の前に遂に現れたのは装飾がなされた大きな扉。

それはボス部屋の証。十層に辿り着く道に立ちはだかる最後の難敵。

「とりあえずバフかけはするか?」

「そうね。もし消されちゃうようならそれはそれで仕方ないわ」

「「よろしくお願いします!」」

アイテムならばまた用意できる。勝つことを目標としているなら、万全の準備を整えて入るべきだ。

道中使った【身捧ぐ慈愛】はそのまま展開しておいて、マイとユイにバフを乗せる。【楓の木】の必勝パターンの一つの一撃必殺。

メイプル達は準備を済ませてボス撃破のために中へと入った。