軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と十層へ2。

分かれ道もなく幅の広い一本道が続く中、奥からは再度先ほどの魔法使いが現れる。しかも今回は大盾とランスを持ち重鎧に身を包んだ、いかにもな前衛三人付きだ。

「メイプル、やってみて!」

「うんっ、【砲身展開】【攻撃開始】!」

メイプルの背から枝のように支柱が伸び、大量の砲が前方に向けられる。それらは直後火を吹いて、四体のモンスターに大量の砲弾を放った。

まともに受ければ魔法使いは木っ端微塵になるだろう。しかし、攻撃に反応して三人の前衛が素早く間に割って入る。

金属のぶつかり合う激しい音が響き、砲弾は強固な守りに阻まれる。

前衛の三人にもダメージはほとんど入っていない。

「そう上手くはいかないか」

それならそれで仕方ないとサリーはカスミとアイコンタクトをとる。再び渦を巻く激流が放たれたのと、ハクが八人を守るように壁になったのはほぼ同時だった。

激しい水音が響く中、途切れることのないノックバックを受け、ハクに叩きつけられているメイプルを除いて、全員自由に動ける状態を維持できている。

再度ハクに近づかせて一人ずつ捕食してもらおうと、イズがするすると筒を伸ばす。

その時。

ダメージエフェクトと共にメイプルのHPがぐんぐんと減少を始めた。

「うぇっ!?」

「「【ヒール】!」」

反応したのはサリーとカナデ。魔法によってメイプルのHPを回復させるが、一度回復してもすぐにまたHPは減っていく。

「ちっ、あのランスか!」

「私が回復しておくわ!皆で何か手を考えて!」

「うぅ……ずっと攻撃されてるみたい」

イズはインベントリから大量のポーションを取り出してメイプルを回復する。

最初に覚えられる基本中の基本である【ヒール】ではそろそろ力不足だ。カナデなら他にも回復魔法があるが、それが本職というわけでもない。ここはイズの強力なアイテムの出番である。

イズはポーションによって直接HPを回復するとそのまま持続回復のエリアも生成する。

メイプルも攻撃は一旦諦めて【瞑想】により自己回復に専念する。

「カスミ、後ろだけ塞いで前は開けて」

「ああ」

ハクをスルスルと移動させ、メイプルの支えになるように通路を塞いで待機させる。

となれば、敵と自分達の間にあった壁はなくなり、ランスを持った三人の敵前衛が水のうねりと共に突っ込んでくる。

「マイ、ユイ。落ち着いて対処して。メイプルが守ってくれるから」

「「はい!」」

ツキミとユキミに乗った状態で、襲いくる水に飲まれながら、しっかり目を開けて激流に揺らぐ三人の姿を捉える。

「「【ダブルスタンプ】!」」

うねる水の轟音に混じりガァンガァンと激しい金属音。二人の大槌を受けてなお三人は健在だ。これまであらゆるモンスターを消し飛ばしてきた経験から、攻撃力の不足でないことは明らかだ。故に大盾で防がれているうちは与えられるダメージに上限があると二人も理解できた。

「お姉ちゃん!」

「うん……!」

だったら。二人の武器は手に持つ二本だけではない。続け様に叩きつける大槌とは別に【救いの手】に持たせた分をするりと背後に回す。

盾は一枚。全ての大槌を防ぐには枚数が足りない。

「「やああっ!」

挟み込むように大槌を叩きつける。

流石に二人の攻撃を前提としては作られていないため、直撃すれば耐えられない。爆散する前衛を視界の端に捉えつつ、サリーが前に出る。

「使ってみようか【ウェーブライド】!」

【水操術】のレベルアップで手に入った新スキル。【鉄砲水】と【水の道】の合わせ技のようなこのスキルは目の前のものを押し流しながら生成した波の上に乗ってサリーの移動を助ける。

視界を遮る竜巻のような激流から抜け出すと、サリーは奥に魔法使いの姿を捉えた。

「【氷柱】!」

その背後に立てるのは巨大な氷の柱。そこに糸を伸ばすと一気に縮めて高速で接近する。

細かな回避ができなくともメイプルの防御範囲であれば問題はない。

「【クインタプルスラッシュ】!」

素早く飛びかかったサリーから距離を取り直すことは難しく、強烈な連撃が叩き込まれ、魔法使いは耐えきれずに消滅することとなった。

「ありがとうみんなー!」

「私達こそ」

「メイプルさんのおかげで助かりました」

【身捧ぐ慈愛】に時間制限はない。全ての攻撃を引き受けて尚倒れないメイプルだからこそ十全に扱えるスキルの一つだ。

お陰で【楓の木】は【楓の木】にしかできない戦略を取ることができている。

「イズさんとカナデに回復、クロムさんにメイプルの対処できない攻撃の対処を担ってもらって、マイとユイで前衛、私とカスミで後衛に飛び込みましょう」

「分かった。貫通攻撃があると分かった以上必勝とはいかない。必要以上にリスクを負わないためにも、ハクだけ待機させて早期決着を狙おう」

「まだモンスターも増えるかもしれないしね。油断せずに進もう」

カナデの言うように、敵が二種類だけとは限らない。柔軟に対応しつつ、切るべきタイミングであるなら切り札となるスキルも切っていく必要があるだろう。

ともあれ。構成を変え、よりパワーアップして戻ってきたモンスターも跳ね除けたメイプル達は、自信を持ってさらに奥へと進んでいった。