軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と海岸探索。

二人は海岸線を歩いていく。

ここは今回のイベント島の外周である。

この島は周りがぐるっと海に囲まれているのだ。

そして、空には浮遊島がいくつか漂っているのである。

「あのうちの一つに図書館があるのかぁ…あそこもフィールドの一部なんだね」

メイプルが空を見上げて呟く。

島の周りに浮かんでいるといっても結構な距離がある浮遊島は見えている限りで六個あった。怪鳥のいた山岳の後ろにも隠れているかもしれないため正確な数かどうかは分からない。

つまり、カナデが言っていた図書館のある島を除くとあと五つは探索出来ると思われる浮遊島があるのだ。

「まあ、もう探索されてるかもしれないけどね」

「【四日で出来るジグソーパズル】を解いてダンジョンクリアなら…二人でやればすぐに終わりそう!」

「同じようなダンジョンがあるかは分からないけどね」

「そうだけど…そういうタイプのダンジョンもあるんだなぁって」

メイプルとサリーは戦闘系のダンジョンばかりと出会っていたため、メイプルは探索や謎解きによってクリア出来るダンジョンもやってみたいと思ったようだった。

「見つけられるかは運次第、かな」

「そうだね」

会話を続けながら二人は海岸線をひたすらに進む。

隣は何の変哲もない森が続くばかりで、モンスター一匹姿を見せない。

時折海から出てくる大きめの蟹型モンスターとの戦闘が唯一の変化だった。

それ以外はただ歩くだけである。

そうして進むこと一時間。

砂浜が終わって地面に傾斜が出てきた。

次第に海面との距離が離れていき、崖になっていく。

「メイプルー落ちないでね?」

「だ、大丈夫だよー!」

道幅は決して狭くは無いし、隣はただの森だ。

壁に張り付くようにして歩いている訳でも無いのだからよっぽどのことが無い限り落ちるということは無いだろう。

「まあ、メイプルなら落ちても死なないだろうけど」

「でも、登ってこれないけどね」

何にせよ落ちるべきではないということである。

二人がさらに歩くこと二時間。

長い間横にあり続けた森は姿を消して、苔むし、古びた石レンガで出来た廃墟が右手に姿を現した。

見るからに何かがありそうな地形だ。

廃墟から伸びた石レンガの道は二人の前を横切って海の方に突き出た崖の先端にまで続いている。

そしてそこには幾つかの石が突き立ち、中央にある台座を囲んでいた。

「何かあるよね?」

「既に探索されてなければね」

二人が廃墟の方に足を踏み入れる。

ボロボロになった建造物の中を片っ端から探索していくが何も見つからない。

それでも隠し部屋などがあるかもしれないと探索を続けていた二人に遂に変化が訪れた。

「おっ…と」

サリーが廃墟から出ようとした所でその体を物陰に引っ込める。

メイプルもサリーにならう。

そこには三人のプレイヤー。

今まで出会ったプレイヤー達と比べれるならば装備は中の上の物を着けているように見えた。

ユニークシリーズには遠く及ばないもののそこそこ上質な装備だ。

レベルもそれに伴っているだろう。

かなり近い。物音を立てれば見つかってしまうだろう。

「どうするの?」

メイプルがサリーの耳元で小声で聞く。

ここまですれば流石に聞こえない。

「戦ってもいいし、戦わなくてもいい…もしやるなら…私が一人でやってもいいしメイプルと一緒でもいい」

メイプル一人で行かせるという選択肢は無いようだった。

そこで、プレイヤー達が興味深い内容を口にする。

「なぁ、あの本、どういう意味か分かったか?」

「いや、ボロボロ過ぎて断片的にしか読めないし…水が関係するのは分かるんだけど、【古ノ心臓】の場所がなぁ」

「頼むぞ、その本は死亡時に落としちまう特殊アイテムなんだからな…早く解読してくれ」

「分かってるよ」

そう言って、拠点にしている場所があるのかそのまま歩いていく。

二人には気付かなかったようだ。

距離が離れていく。

「メイプル。あのプレイヤーは倒したい…けど、本があるから恐らく逃げに徹してくる。だから…」

サリーがメイプルの耳元で早口に作戦を告げる。

「……分かった。大丈夫?」

「ふふふ、もちろん!」

プレイヤー達が歩いていく。

これ以上離れられては見失ってしまうだろう。

二人の作戦が始動する。

「やったー!!五枚目のメダルだー!」

廃墟に少女の声が響く。

その声に三人のプレイヤーが振り返りつつ物陰に隠れる。

それが本当なら狩りたい所だ。

しかし、相手の強さが分からない。

そのため、声の主を観察しようというのである。

スキップをしながら物陰から出てきたのは一人の少女。

満面の笑みを浮かべている少女の装備は海のように青いマフラーにそれより暗い色のレギンス。綺麗な装備は嫌でも注目を集めることだろう。

しかし、全身となるとそうではなかった。

他の装備は初期状態。

何も装備していない、ただの服である。

補正など一つも無いだろう。

靴も初期装備であることが分かった。

「どうだ?」

「明らかに初期装備だ。部分的にいい装備があるが…今回のイベントで手に入ったのを着けているんだろう。俺の初心者の頃を思い出す。あの格好悪いちぐはぐさはな…」

「だけど…メダルが本当にあるかは分からない」

プレイヤー達が観察を続ける中、少女はモニターを操作してインベントリから何かを取り出した。

それは、五枚のメダルだった。

「うふふふ…後半分、後半分!」

それが彼女の日課なのだろう。

崩れた石レンガに腰掛けて一枚一枚メダルを眺め、ぎゅっと握りしめて嬉しそうにインベントリに戻す。

「確定だ。行くぞ」

「ああ、潰そう」

三人が物陰から飛び出すと少女はビクッとして三人の方を見た。

少女は立ち上がってダガーを構えながらじりじりと距離を取る。

「な、何ですか?」

「ごめんな?こっちもメダルが欲しい」

「………っ!」

少女が駆け出そうとした所で三人が少女を囲むようにして逃げ道を潰す。

三方向からじりじりと詰め寄って来ているプレイヤー達に少女は上手く対処する術を持たないのか足を震えさせながらキョロキョロとしている。

「かかれ!」

「「おう!」」

三人がそれぞれの武器を振るう。

それを苦し紛れに振るったダガーで弾ける筈もなく、少女の体に武器が沈み込んだ。

三人がメダルを思い描く。

しかし。

メダルなどそこには無かった。

少女はまるで幻のように薄れて消えていってしまう。

「「「は?」」」

驚きを上書きするように、一人のプレイヤーからダメージエフェクトが噴き上がる。

二度、三度。

呆然としているうちに斬りつけられ続けたのだ。

そして、それは致命傷となった。

「ごめんね?私も本が欲しいんだ」

そう言って地面に落ちた本を拾おうとするのは、弱者だと思い狩ろうとしていた少女だった。

「は?ふ、ふざけんな!」

ありえない状況に、冷静さを失ってスキルを使って斬りかかるもまるで剣が避けたかのように躱されてしまう。

少女の両手には一本ずつダガーが握られている。

それが回避の最中に斬りかかった腕を斬りつけていくのだ。

「ぐあっ!?」

怯んだ隙に、少女は本を拾ってインベントリにしまうと駆け出した。

「ま、待て!」

ダメージエフェクトを散らしつつ少女を追いかけた男は。

次の瞬間腹部から鮮血のようにエフェクトを散らして光となった。

いつの間にか走っていた少女は消えて、男のやられた地点でダガーを弄んでいる。

「二度も同じ手に引っかかるのは良くないなぁ」

「は?え?な、何だこれ…」

残りの一人も状況が受け入れられないようでうわ言のように何かを呟いている。

そんな状態で少女。

もとい、サリーに勝てるはずがなかった。

「バイバイ」

少しの後、最後の一人も光となって消えていった。

初期地点が何処かはサリーには分からないが、彼らには本を取り戻すことは出来ないだろうことは分かった。

「私に勝てないようじゃ…メイプルは倒せないしね」

メイプルがサリーに駆け寄ってくる。

「どう?上手くやったでしょ?」

「うん!いつもと違う雰囲気のサリーがちょっと面白かった!」

「そんなとこは見なくていいのっ!」

「ねえ、もう一回して!やったー!って言ってスキップして!」

「しないよ!しない!それより、戦利品の確認しよ?」

「……今回は見逃してあげるー」

「…それはよかった。……普段と違うことするのはやっぱり恥ずかしいなぁ」

サリーはこれからはよっぽどのことがない限りしないようにしようと心に決めた。

二人はこの戦闘で手に入れた物をチェックし始めた。