軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と最終決戦3。

カナデが守る王城前。弾ける黒いスパークは辺りの建物全てを瓦礫に変えて、城下町を荒れ果てた更地へと変貌させていた。

「【灼熱】」

「【紫電】!」

「【超加速】【スロウフィールド】【破壊砲】!」

加速と減速により広がった速度の差。カナデはミィとベルベットの攻撃を避けると、災禍の嵐を縫って突っ込もうとする敵前衛から距離を取り、白く輝くレーザーによって逃げ遅れた一人を葬る。

「本当、何でも持ってるっすね!」

「うん。何でもじゃないけどさ。【死神の鎌】」

カナデが宣言するのに合わせてベルベットの首に血に汚れた鎌があてがわれる。

「っ!」

「流石、反応早いね」

鎌が引かれベルベットの首をかき切る直前、上体を反らして攻撃をかわす。

予測不能なら、反応で避ける他ない。

「ミィさん。このままやってても仕方ないです!」

「ベルベット。アンタが詰められるなら隙を作るが、どうだ?」

それぞれのギルドメンバーからの提案を受けて、二人はリスクを負っての攻めを決断する。

カナデの漆黒のスパーク。それがいつまで続くかは分からない。時間をかけている余裕はあまりなく、カナデとずっと戦っているわけにはいかないのだ。

「【エレキアクセル】!」

ベルベットが周りの味方を加速させ、複数人で、カナデに向かって一直線に駆ける。

ミィはイグニスに乗り空へと舞い上がった。

「【大自然】!【トルネード】!」

カナデは巨大な蔓で動きを制限し、竜巻を引き起こす。足を止めれば、漆黒のスパークはその身を焼くだろう。しかし、それはカナデにとっても同じこと。対面しているのは雷の雨を操るベルベットだ。範囲内に入ることは避けたい。

「【カバームーブ】【カバー】!」

駆け抜けるベルベットを庇い、風に飲まれ漆黒のスパークで全身が発火する。

「助かったっす!」

ベルベットは短く礼を言ってカナデへと接近する。カナデを倒す。それが庇ってくれたプレイヤーに報いるためにできる唯一のことだ。

「【疾駆】【超加速】!」

ベルベットが急加速しカナデを稲妻の雨の範囲内に捉える。

「【大規模魔法障壁】!【グランドランス】!」

「【パリィ】!」

障壁で稲妻を受け止め、大地から突き出す岩の槍でベルベットを牽制する。

しかし、ベルベットはスキルによってカナデの攻撃を無効化し最後の一歩を踏み出す。

「【渾身の一撃】!」

「【ブリンク】」

「んんっ!?」

残像をその場に置いてカナデは後方へ移動する。

ベルベットの拳は空を切るが、逃げたカナデを囲い込むように魔法が放たれる。

「「「【紅蓮波】!」」」

【炎帝ノ国】らしい炎の波。プレイヤーの数は三分の一程減っただろうか。それでも、強力な魔法が振るえるだけのプレイヤーは健在だ。

しかし、強力な魔法とはいえ、距離が離れていることもあって避けられないほどではない。

余裕を持って回避し、炎の波が残る中、ベルベットの雷の雨に注意を向ける。

「【轟雷】!」

ベルベットから拡散する雷の柱。スキルの硬直を狙い、隙間を縫うように移動し、こちらもスパークでもってベルベットを守るプレイヤーを焼却する。

ただで勝つなどできはしないとベルベット達も認識している。犠牲になったのは勝つために戦略のうえ仕方ないと心を決めた者達だった。

「【火炎牢】!」

「……!」

複数の範囲攻撃で逃げ場をなくし、全く攻撃してこないミィから意識がそれたその一瞬。作り出した巨大な炎の牢獄がカナデを閉じ込めた。

「無敵は……ないね」

カナデの記憶に間違いはない。故にこの状況を打開するスキルがないことも分かっていた。じりじりと燃える体と減っていくHPを見つつ、ここまでかと笑みをこぼす。

「うーん、サリーくらい上手く動けたら勝てたかもなあ」

「あんなことできる人が二人もいたら困るっす!」

「ふふ、それはそうだね」

それでも時間はある程度稼げたと、あとはメイプル達を信じてカナデは消滅する。

「行くっすよ!」

ベルベットが先頭を走り、王城へと向かう。

カナデが誰一人踏み入れないような領域を展開していたこともあり、近くには誰もいない。

「ミィ!先制攻撃したいっす!」

「分かった。王城内部のプレイヤーは私が焼こう」

「手前は私がやるっすよ!」

カナデが倒されたことを認識したプレイヤーが王城から少しでも遠くに釘付けにすべく魔法攻撃を開始する。

「【過剰蓄電】!」

次に電撃が使えなくなる頃には、このイベントにも決着がついているだろう。全力を解放したベルベットの上空に稲妻が輝き、雷神の力が振るわれるその時を待つ。

「【電磁跳躍】!」

万に一つも逃さない。その気概でベルベットは前へ飛ぶ。

「【雷神の槌】!」

天地を繋ぐ稲妻の柱。何とか防御しようとスキルを切る中、【thunder storm】のギルドメンバー達は躊躇なく突撃する。

ギルドマスターたるベルベットの強みと、それを活かした戦い方は体に染み付いている。

「おらあっ!」

「そっちだ、逃すな!」

「ぐっ……」

「くそっ……」

雷に飲み込まれたプレイヤーは生き残っても視界を奪われる。その隙に無敵で耐えたプレイヤーに急接近して撃破するのがベルベットとの基本的な連携だ。

光が収まった時、そこに生き残ったプレイヤーはいない。元々そういうスキルであり連携攻撃なのだ。一度目にあれほど綺麗に躱されたことがレアケースなのである。

範囲外まで逃げているなら、玉座に向かうベルベット達には追いつけない。帰りのことなどどうだっていい、それならば後ろから遅れて追ってくるプレイヤーは倒したのとそう変わらない。

「流石っす!やっぱり頼りになるっすね!」

「言ってる暇ねえぞ、ほら行け!」

「分かったっす!」

ベルベット達は階段を駆け上がり、王城を目指す。一足先にイグニスに乗って高台の上まできたミィは不死鳥の炎を身に纏う。

「【我が身を火に】……【インフェルノ】!」

迸る炎は入口前を焼き払い、扉を燃やし尽くして、王城内部を駆け巡る。近くの部屋全てを業火につつむミィの攻撃に逃げ場などありはしない。射程内にいれば問答無用で消し炭になる。

今はクリアリングに割く時間すら惜しいのだ。

「ミィ!入るっすよ!」

「ああ、最短ルートで行く!」

城の構造は頭に入っている。通路を走り、階段を抜けて、曲がり角を曲がる。

その瞬間。

「【多重炎弾】!」

「【カバームーブ】【カバー】!」

「あー、それで倒れてくれればなー」

奥には玉座の間、左右には他の部屋へと続く通路が何本も伸びる一際広い通路でフレデリカは待っていた。

しかし、ただ待っていたわけではない。

自らの前にクロムを含む大盾使いを並べて待っていたのである。

「何でいるっすか!?」

「はは……快適な空の旅だったぜ」

ユイの打ち出した球体はきっちりと王城付近に着弾した。あとはカナデの稼いだ時間でひた走る。

カナデの粘りのお陰で、何とか最終局面に滑り込んだ。

「しぶとくやらせてもらう!ネクロ、【バーストフレイム】!」

「【多重炎弾】!ノーツ【増幅】【輪唱】!」

「「【カバー】!」」

クロムとフレデリカが放った炎を受け止めて、敵の大盾使いが火に包まれる。

まともに回避に使えるスペースはない。だがそれはクロム達も同じだ。

「【紫電】!」

「【蒼炎】!」

「「「【カバー】!」」」

通路全てを埋めるような炎と雷。それはまともに受けられるようなものではない。少しでも時間を稼ぐため、一人を犠牲に一人を庇う。攻撃の度人数は半分になるが、これで限界までダメージ源であるフレデリカを守れる。

「【電磁跳躍】!」

「「【超加速】!」」

「すり抜けだけ気をつけて!」

身体を張って突っ込んでくるプレイヤーを押しとどめる。

クロムはベルベットの前に立ち、大盾を構え、短刀を振るう。

「【重双撃】【連鎖雷撃】!」

「ぐっ……!」

二連撃を大盾で受けた所に弾ける雷がクロムのHPを吹き飛ばす。

「「【紅蓮波】」」

「【豪炎】!」

「クロム!」

「【精霊の光】【カバー】!」

ダメージを無効化し、フレデリカを庇いながら襲いくる炎の波を凌ぐ。しかし、炎を貫いて飛び込んできたベルベットが無敵時間が終わると同時に鋭い拳を叩き込む。

「【多重回復】!」

「くっ……運がねえな」

盾でベルベットを跳ね飛ばし、クロムは苦い顔をする。一度目の【デッド・オア・アライブ】は発動せず、【不屈の守護者】が使われる。

「押し込むっすよ!」

「ネクロ【死の重み】!」

「【多重炎弾】【多重風刃】!」

「構うな!」

フレデリカの魔法が多くのプレイヤーの命を刈り取る。それでも怯まず魔法を打つことでフレデリカを守る大盾使いも次々に沈んでいく。

「【渾身の一撃】!【放電】!」

ここさえ越えれば終わりだと、ベルベットはクロムの盾を避けるようにサイドステップを踏み、重い拳でクロムを吹き飛ばすと、魔法による火力支援と合わせて一気にHPを持っていく。

壁に叩きつけられたクロムに襲いかかるのは、ベルベットの雷による多段ヒットダメージ。

【デッド・オア・アライブ】によって複数回耐えて、しかしクロムは視界が暗くなっていくのを感じる。

「ったく、いい対策してるぜ……」

クロムが消滅していく中で、残るフレデリカにミィの火球が迫る。

「【炎帝】!」

「た、【多重障壁】!」

「もらったっす!」

「しまっ……!」

ミィの攻撃を捌くために障壁を使用した所にベルベットが滑り込む。身体を横から殴りつけて右へと吹き飛ばす。

純粋な魔法使いであるフレデリカではその攻撃に耐えられず、そのまま並ぶ甲冑を巻き込んで動かなくなる。

目の前には玉座。先頭にいたベルベットはそのまま駆け出した。