軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と朝を待つ2。

翌朝。メイプルは窓から差し込む日の光で目を覚ます。

どうやら夜のうちに敵が攻め込んで来ることもなかったようで、城内は静かなものだ。

「んー……」

ぐっと伸びをして体を起こす。体力は十分回復し、体調は万全だ。

メイプルがベッドから降りて部屋の扉を開けると、ちょうどメイプルを起こしにきたサリーが立っていた。

「おはようサリー!」

「おはようメイプル。元気そうだね」

「サリーは大丈夫?」

「うん。十分回復した」

きっちり休息も取れた。これならいつも通りのパフォーマンスを発揮することができる。

「朝食を取りにいこう、作戦会議も込みで」

「分かった!」

【楓の木】が使っている一室へと向かうと、そこには既にイズがいた。

「おはよう。疲れは残っていないかしら?」

「大丈夫です!」

「それはよかったわ」

イズはインベントリに保管してある料理をテーブルの上に並べる。食べることで長時間のバフがかかる。

効果量はさすがに戦闘用のスキルには劣るものの、僅かな数値の差が勝敗を分けることもある。

そして何より、とても美味しい。

二人が朝食をとっていると、残りの三人もやってくる。全員が揃ったことで、今日の方針についての話が始まる。

「モンスターが移動を始めるのは昼だから、それまではあまり戦いたくないですね」

「だな。同じようにやればベルベットとミィの攻撃は回避できる」

「はい。ベルベットとミィは強いですがペインさんもまあ……滅茶苦茶なので」

発動までが早い光の奔流にフレデリカがバフをかき集めればあらゆるものは消し飛ぶだろう。

勝ちへの道筋は明確だ。ならばそこまでは大人しく待っている方がいい。

「相手はどうしてくるかしら?」

「何かしかけてくるかもね。夜中に僕達が誘い出した時みたいに」

「そうなったらどうしましょう?戦うなら私もやれます!」

もちろん戦えないということはない。しかしその必要はないとサリーは考えていた。

「それよりはプレイヤー全員で息を合わせられる方がいいかな」

ミィやベルベットが飛び込んできたとして、対応できるプレイヤーが多いに越したことはない。

いかに範囲攻撃に優れた二人であるといえど無敵や攻撃の打ち消しも存在する中、無策で無理矢理敵陣のど真ん中に侵入することはできないだろう。

「ゆっくり待つってことだね!」

「メイプルもその方が得意だし。ちゃんとやれば勝ちきれると思う」

サリーもまた、敵の防衛戦力の要となるプレイヤーが脱落していることをプラスに評価していた。

「となるとどうする。適度に数を減らしながら待てばいいか?」

「そうですね。それでいいと思います。メイプルは念のためできるだけ王城待機で、んー、イズさんもアイテム製作がありますし……」

ユイは基本決戦兵器なため、戦闘以外は向いていない。守るための陣形を作っていなければリスクの方が高くなってしまう。

「不審な動きがないかチェックだけしておきましょう。出撃したところで挟み撃ちにされても具合が悪いので」

「オーケー。面子は?」

「クロムさんと私、カナデもついてきてくれると何があった時に対応しやすいかな」

「分かった。問題ないよ」

次の大規模戦闘が起これば戦況がどちらかの優位に大きく傾くことになると予感していた。

だからこそできるだけの準備は今のうちにしておくのである。

「メイプルも夜に【暴虐】を使ったのはギリギリ今日になる前のはずだから」

「うん!使えるよ!大事にしないとね」

攻撃よりも緊急避難用と割り切って温存する予定だ。幸いにも今回はダメージを出し、脅威となってくれる味方はいくらでもいる。

基本的にメイプルがすべきことは適切なタイミングで適切なスキルによって全体を支援すること。【救済の残光】に【再誕の闇】そして【機械神】による射撃。後方からでも戦闘参加ができるのがメイプルの強みだ。

あとはその場その場の判断次第だとサリーはメイプルに伝える。

「集中力高めておいて」

「おっけー!」

サリーは朝食を済ませたクロムとカナデと共に部屋を出ていく。

「さて、次の戦いで終わるかあ?」

「可能性はあると思うよ。どうするサリー?」

カナデは背後に浮かべた本棚から何冊かの本を取り出してみせる。

決めに行くと言うならカナデにもまだ使える魔導書がある。防御用の強力な札は使い切ったが攻撃用はまだ残っている。

「状況次第かな。結局敵と味方の数にもよるし、最後は城攻めしないといけないし」

「それもそうだね。全部使うと攻城戦の時には何もできなくなっちゃうからなあ」

「俺達が地道に削るより先にペインが仕掛けるだろ。やるならその後だな」

三人はフィールドに出る前に現状生き残っているプレイヤーの数を確認する。

昨日の昼の大規模戦闘で敵の大技を避け優位を築いた分、夜にあちこちで起こった少数戦を終えてなお、こちらの陣営の方がプレイヤー数は多い。あとはこの人数差をひっくり返されることがないよう、今のうちにあらゆる可能性を潰すだけだ。

「カナデ、索敵スキルは残ってる?」

「夜は【集う聖剣】の人に担当してもらったからね。大丈夫」

「よし。じゃあまずはアイテムが設置されてないかの確認からいこう。他にも夜のうちに隠れて潜んでいるプレイヤーがいないかも見ておきたい」

大規模戦闘で主要なダメージ減になるのは範囲攻撃を得意とし射程も長い魔法使いだ。

サリーやクロムは一対一では強いが、集団戦でできることは限られる。

あくまでも次の戦闘は多対多。奇襲によって脆いダメージディーラーが吹き飛ばされるのが最悪だ。

「敵も何もしてないってことはないと思います」

「だな。気をつけていこう。何なら俺達が襲われてもおかしくない」

「その時は防御よろしくね」

「任せろ。今度はちゃんと守るぞ」

こうして三人は城を中心に辺りをくまなく索敵し、怪しいものがないか、敵が潜んでいないか、戦闘前の最終確認を済ませることにした。

時を同じくして【集う聖剣】拠点でも中心となる話題は同じだった。ただ、より大きな戦力を有する【集う聖剣】では【楓の木】より具体的な内容について話されていた。

【集う聖剣】は【楓の木】以外のギルドとも同盟を組み、密に連絡を取り合っている。

他のギルドの戦力状況、方針などを聞き、陣営全体としての動きを決定していく。

攻めるのか守るのか、重要な場面で意思統一ができていなければ、集団戦で勝つのは難しいのだ。

「ペイーン。どう、皆どんな感じ?」

「ああ。多くのギルドがここで勝負を決めるつもりで動くことで意見が一致している」

「へー。まー、今は人数差がついてるしねー」

「ああ。致命的なミスが起こって状況が変わる前に素早く畳みたいということなのだろう」

上手く凌ぎはしたものの、ミィとベルベットの超広範囲攻撃の恐ろしさは拭い去れてはいない。完璧に決まれば一転窮地に陥るのはこちらだ。

故に万が一のことを考え、二人の攻撃を受けうる機会を減らせるだけ減らしたいのである。

「そういうことならいいんじゃないのー?皆が攻めたい時に一緒に攻めるのが一番だよねー」

「問題は敵がどうくるかだが……」

【集う聖剣】の初撃は決まっている。全員にバフをかけ、フレデリカの【多重全転移】を使った聖剣による攻撃だ。

シンプルかつ強力。これに勝るものはない。

「私はどうするー?合わせて【マナの海】切ってもいいけど」

「押し込むならそれは悪くない。ただ……少し気にしていることがある。意見を聞きたい」

「んー?いいけどー」

ペインはフレデリカに気にしていることについて話すとフレデリカは少し考え込む。

「なるほどー。確かにちょっとやだねー……んー」

フレデリカはどうしたものかと少し悩んで自分の考えを話す。

「じゃあこうしない?」

その内容を聞いてペインは頷き、その提案を受け入れる。

「それで行こう。あくまでこれは可能性の一つでしかない。他のギルドにも共有はしておく」

「おっけー。弱気すぎても駄目だしねー。それに相当勇気いると思うよそれー」

二人はそのまま他ギルドと連絡を取り合い、細かい部分を詰めていく。

有利から勝利にもっていくのが一番難しい。見落としはないか、【楓の木】と同様に一つ一つ穴を潰すようにペイン達もペイン達のやり方で盤石な体勢を整えるのだった。

二度目の大規模戦闘が迫る中。

メイプル達と逆側。自然と水の国の外壁前にイグニスが降り立つ。

こちらもまた、まず始めに自分達の拠点周りの安全確保から行っていた。

「助かりました。流石に速いですね」

イグニスの背からウィルバートが降りる。メイプル達よりも遥かに簡単かつ正確な索敵は確固たる安心を与えてくれる。何せ、イグニスの背に乗せて辺りをぐるっと一周回るだけでいいのだから。

「便利なものだな」

「何もいませんし、設置されていませんね。間違いありません」

「信じよう」

であれば後は正面から攻めてくるであろうメイプル達にどう対応するかだけだ。

二人が街の中へと戻るとリリィとベルベットがそれを待っていた。

「ウィル、周りには?」

「特には何も。異常なしです」

「オーケー。作戦の最終確認のために待っていた」

【炎帝ノ国】【thunder storm】【ラピッドファイア】の動きが作戦の肝となる。

「前もって決めておいた条件を満たしたタイミングで仕掛ける」

「そうならないならそれでいいっすけど……」

「そうですね」

「じりじりと不利になっていけば作戦の実行すら難しくなる。やるとなったら覚悟を決めよう」

「そうっすね!分かったっす!」

ミィの言う通りだと、ベルベットは気合を入れるようにパンっと自分の頬を叩く。

「戦闘中は気をつけてくれ。うっかり死んでしまっては話が始まらないからね」

それだけは念押ししておいて、四人もまた集団戦を待つ。ペイン達が早く畳みたいと感じている中、こちらでは既に人数差がついている状況でこれ以上人数差がつく前に差を縮めたい、逆転の手を打ちたいという考えが主流になっていた。

理由は違えど戦いたいという意志は同じ。

であれば必然戦闘は起こる。イベントのギミックによって、出撃のタイミングも重なるだろう。

こうして四人もやがてまた来たる戦闘に向け備えを進めるのだった。