軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と脱出作戦。

「「【超加速】!」」

サリーとカスミの体がぐんっと加速してメイプルを引きずりながら扉に近づく。カタツムリは左右からそれぞれ三匹現れていて、斜め前には二匹のカタツムリの姿が見えている。

その二匹が三人が扉へ向かうことを許すはずもなく、粘液がばら撒かれてその進路を妨害する。

「くっ…左に!」

「ああ!」

サリーとカスミが咄嗟に問題ない地面の方へと方向転換する。

メイプルは引きずられていてそんなことは出来ないため体に付きそうな粘液を【悪食】で処理することで難を逃れる。

カタツムリの速度はメイプルよりは速いがサリーとカスミには遠く及ばない。

粘液さえ躱すことが出来れば扉へたどり着くのは容易だった。

「よしっ!カスミ!」

「ああ!任せろ!」

カスミはインベントリから素早く鍵を取り出すと鍵穴に差しこもうとした。

その時。

「うわっ!」

びちゃっと言う音と共にカタツムリから何かが伸びてきた。

触手と言うのが適当だろうそれは手元の鍵だけを掠め取っていく。

触手はそのカタツムリの頭の上にピトッと鍵を置くとカタツムリの体の中に引っ込んでいった。

「と、取り返さないと!」

「【跳躍】じゃ届かない…!」

サリーだけならば可能な高さだが、メイプルとカスミを連れてとなると不可能な高さだ。

「ここに留まっている訳にもいかない!来るぞ!」

カタツムリがジリジリと近寄ってきているのだ。留まっていては粘液にやられてしまう。それに、あの触手がまた伸びて来ないとも限らない。

「カスミ!【孤月】はどう!?」

「隙が無ければ無理だ!硬直している間にやられる!」

こうしているうちにも地面はどんどんと粘液に覆われていく。

残された時間はあまり無い。

「………サリー!横穴の方に真っ直ぐ突っ切って!」

声を上げたのはメイプルだった。サリーがメイプルの方を見ると、その目には確かな自信が宿っていた。

「…分かった、やってみる!」

カスミと共にダッシュする。

横穴の方に戻るにはどうしてもカタツムリの間を抜けていかなければならない。

既にカタツムリ達は三人を取り囲んでいるのだ。

「ここは任せろ!【六ノ太刀・焔】!」

燃え盛る刀身が振り下ろされて炎がカタツムリの間を割いていく。

ダメージこそ無いものの威嚇は一瞬だけ通用することが道中で分かったことだった。ほんの一瞬だが、この状況ならば十分過ぎる時間だった。

三人が駆け抜けた後をカタツムリ達が追ってくる。

「やっぱり!動きが単調だよ!」

メイプルの言う通りだった。

カタツムリ達は概ね三人の通ったルートに沿って追ってきている。

メイプルがこの後何をしたいのか、言わずとも二人には理解出来た。

「【跳躍】!」

「【三ノ太刀・孤月】!」

「【 毒竜(ヒドラ) 】!」

三人のスキルがそれぞれの役割を果たしていく。

メイプルがカタツムリを怯ませ、その隙にカスミとサリーによってカタツムリの殻の部分まで到達する。

メイプルのスキルはカスミの硬直時間が過ぎるまでの助けになった。

「ここなら、粘液も無い!…それに」

サリーが前を見るそこには同じ動きで近づいてきたカタツムリ達がいる。

そのうちの一匹の頭には鍵がある。

一直線に走ったことで追ってきたカタツムリと扉がほぼ直線上にあった。

幸運なことに鍵を持ったカタツムリは遅れてきたようで体が少し斜めになっていたのだ。

「今なら殻に邪魔されずに鍵だけを取っていけるよ!」

「【跳躍】!」

殻の方が頭の位置よりも高いため、飛び降りるようにして鍵だけを掠め取ることが出来た。

「よっし!」

「急げ!」

しかし、着地した地面の状態が悪過ぎるためにどうしてもロスが生まれる。

扉にはたどり着けたもののカタツムリの触手が伸びてくる時間と粘液を撒く時間を与えてしまった。

それでも。

「【カバー】!」

メイプルの大盾がそれらを防ぐ。

防御を受け持つメイプルはたったの一撃すら後ろへと攻撃を通さない。

「二回もやられたりしないよ!」

「よし!開いた!」

サリーが扉を開けると転がり込むように部屋に入る。

この部屋に入った直後に扉は消えて無くなってしまったので先程のカタツムリに襲われる可能性は無くなった。

そして、それと同時に三人を繋いでいた鎖がボロボロと崩れて消えていった。

それはこのダンジョンをクリアしたことを意味していた。

「ふー……生き残った…」

「ああ…疲れたな……」

「当分カタツムリは見たくないなあ…」

この部屋には宝箱が四つ、それと魔法陣が一つあった。

「宝箱……開けていこうか」

「そうだね!そうしよう」

三人で一つずつ宝箱を開けてみる。

「私のは槍だったよー!」

「私は大盾だな」

「私のところは杖だった」

三人がそれぞれ中身を手に持って見せ合う。この中で三人の誰かに有益なのは大盾くらいだろう。

「メイプル、これはメイプルが貰うといい。私が持っていても無意味だしな…」

カスミはそう言ってメイプルに大盾を渡す。

「いいの?」

「ああ、構わないさ」

代わりにならないだろうけれどとメイプルが持っていた槍とサリーの杖を渡す。

「ふむ……いい装備だな」

カスミが装備の性能を見て呟く。

装備出来るプレイヤーならば欲しがるくらいの性能はあった。

「まだ後一つ宝箱が残ってるしね」

サリーが残り一つの宝箱に向かう。

二人も後を追ってサリーが開けている宝箱を後ろから覗き込む。

「んー…巻物が三つ、だけかな」

メダルが無いかどうかを確認して、巻物を宝箱から出す。

「どれも同じ巻物だね。スキル【鼓舞】を習得出来る」

サリーが巻物を二人に渡す。

それをインベントリに仕舞い込めばこの部屋での作業は終了だ。

「じゃあ、出ようか?」

「そうだね…この洞窟は大変だったなぁ…疲れたよ」

三人は魔法陣に乗って洞窟を後にした。

この洞窟を無事に抜けられたのはそれぞれの個性を生かすことが出来たからだった。

足りない部分を補い合え無ければ結果は変わっていただろう。

三人は元の砂漠に戻ってきた。

「はぁ…夜空だ…」

「そんなに長くいた訳でもないのにね」

「ああ、何故だか嬉しい」

洞窟では見ることの出来なかった夜空は解放感に満ちていた。

「そうだ…私達、カスミと戦うつもりだったんだっけ……もう、戦意が湧かないや」

サリーには協力し合った後で再び戦闘に持ち込む気にはなれなかった。

もちろんメイプルもだ。

「私も戦う気は無い…まぁ、最初から無かったがな」

「そうだ!なら、フレンド登録しようよ!」

「ん、構わないぞ」

三人はそれぞれフレンド登録を済ませると寝転がって空を見上げた。

疲れからか、安心からか、しばらくの間はそうしていたいと思ったのだ。

「カスミは…この後どうするの?」

「そうだな…取り敢えず二人とは別れようと思う。フレンド登録もしたことだしイベント後にでもまた会えるしな」

「私達と一緒に来てもいいけど…」

「うん、いいよいいよ!」

「はは…嬉しいが今回は止めておく。金メダルが一箇所に二枚もあれば戦闘回数も増えそうだしな」

カスミの言うことももっともだった。

カスミとメイプルは金メダルを持っているのが他のプレイヤーにバレている。

当然それを狙う者も多い。

二枚もあるとなれば尚更だ。

「そっか…残念だけど仕方ないね」

「ああ……よっ、と!私はもう行くとするよ」

カスミが立ち上がり砂を払う。

「頑張ってね!」

「二人もな」

カスミは最後に二人に手を振って二人から離れていった。

こうして、奇妙な共闘は幕を閉じたのである。