軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と嵐の前の2。

夜のフィールドを二人歩くメイプルとサリー。今の所敵プレイヤーの気配もないが、サリーは常に二本のダガーをその手に持って攻撃に備えていた。

「誰もいなそう?」

「どうかな?仕掛けられるまでこっちからは分からないし」

二人が歩くのは障害物の少ない荒地だ。隠れられる場所は少なく、いきなり敵プレイヤーが大量に現れることはないだろう。

「そろそろタイムリミットだけど……」

サリーは改めて時間を確認する。日付が変わるまで、もうあまり時間はない。今回はあくまで相手の出方に依存した作戦だ。メイプルが出歩いていることに気づいていなければそもそも何もおこらない。

このまま拠点に戻ることになりそうだと思い始めたその時。夜の闇を裂いて、弾ける雷の塊が弾丸のように手前に着弾する。

「出てくるとは思わなかったっすよ!」

目の前に現れたのはヒナタを連れたベルベット。

弾ける電撃は戦闘の意思の表れだ。

「そっちこそ。結構動き回ってたけど、元気だね」

「まだまだ余裕っす!」

疲労は溜まっているはずだが、それでも言葉通り余裕そうに笑って見せる。疲れよりも、この後の戦闘が楽しみだという風に。

ベルベットは力強く踏み込むと一気に加速し、二人に迫る。

「【極光】!」

自身を中心とする強烈な雷。

いかにサリーといえど隙間がなければ避けられない。

「【身捧ぐ慈愛】!」

だが、それもメイプルがいれば別だ。ベルベットのスキルの範囲と重なるように展開された【身捧ぐ慈愛】があれば【極光】内部でもサリーを生き残らせることができる。

これならサリーも攻められる。メイプルもまた自分の役割を理解しているのだ。

しかし、そんなベルベットの隣をすり抜けるように、後方からの赤い閃光。【極光】の光に紛れるようにして飛来するのは高速の矢。

【極光】は目眩し。本命はウィルバートの一射だったのだ。

「はっ!」

バキィンと大きな音を立て、それでもサリーがその矢を叩き落とす。

【身捧ぐ慈愛】のお陰で攻めることも可能だった。それでも、優先すべきはもしもの時の防御。

いざ戦闘が始まるというその瞬間も、サリーの意識はメイプルを狙うものにのみ向けられていたのだ。

「うわっ、本当に弾いたっす!やるっすね!」

「やっぱり……偶然ではないみたいですね」

狙い通りに行かなかったことで、二人は一旦距離を取る。

ベルベット達が二人の前に着地したことからの予測。観測した誰かがいなければ、そもそもベルベットとヒナタがここに来ることもない。

それはそのままウィルバートがいる可能性が高いことを示しているのだ。

「メイプル、盾構えて!」

「うん!」

サリーはメイプルの裏に隠れ素早くインベントリを操作すると取り出した閃光弾を打ち上げる。

それは作戦決行の合図だった。

閃光弾の数。それがウィルバートのいる方向を伝える。

遥か後方。フレデリカとカナデ、イズによる強力なバフを受けて加速したレイが文字通り流星となって夜空を飛ぶ。

何重にもかけられた移動速度上昇。ウィルバートは自分達へ向かって一気に迫る存在を視認する。

空に輝くはベルベットにも負けない聖剣の光。

放たれた輝く奔流がリリィ達に迫り来る。

二人は即座に装備を入れ替えると、攻撃を受け止めにかかる。

「【傀儡の城壁】!」

リリィが素早く召喚した兵士は何とか二人を守り切ったものの、そこにレイに乗ったペイン、カスミ、クロムが降りてくる。

「豪快な索敵だ。辺り一帯吹き飛ばせば、対応しなければならない。私のスキルを見て居場所を割り出したか」

リリィは粉々になった分の兵士を補充しつつ武器を構える。

「俺達としても二人の支援をさせるわけにはいかない」

「こっちはこっちで勝負と行こうぜ!」

「退くことはできないはずだ」

レイの接近速度を鑑みても、逃げ切るのは機動力のそう高くない二人では難しい。そうでなくとも、ここで二人が撤退すればベルベット達が挟まれる。それはできない。

「オーケー。ウィル、『全力』で行こう」

「はい」

二人もまた武器を構える。

それと同時にさらに多くの兵士が呼び出され、本格的に戦闘が始まった。

頭上を通り抜けた流星。後方での戦闘の気配はベルベット達にも伝わっていた。

「援護は難しそうっすね」

「助けには行かせないけど」

サリーが武器を構え直す。ウィルバートからの攻撃はない。これで、攻めに移ることができる。

「あはは!でも、これならシンプルっす!私達で二人を倒して、そのまま挟みに行くっすよ!」

「はい」

ベルベット達も方針は固まった。

どちらにも撤退はない。

「負けないよ!」

「こっちもっす!」

想定通り戦闘まで持ち込むことに成功したメイプル達。ペインを送り出した残る面々はもしもの時のために後方に待機していた。

「何もない……なーんて都合良くもないよねー」

現状の確認のため散開し、索敵を続ける【集う聖剣】のメンバーから連絡が入り、フレデリカは渋い顔をする。

「はー……ミィ達も来てるって!」

密に連携をとっているのは【thunder storm】と【ラピッドファイア】だが、万全を期すというのなら【炎帝の国】に声をかけるのも当然だ。

「そっか。ちゃんと呼んでたかあ」

「そうなると……」

「お姉ちゃん」

「うん。行かないと!」

「皆行くよー。そのための私達だしー」

「「「おおおっ!」」」

フレデリカ、カナデ、イズの三人でその場にいる全員の移動速度を跳ね上げる。

フレデリカ達はこの時のために控えていたのだ。さらなる介入、【炎帝の国】の参戦を防ぐため、戦場へと向かっていくのだった。