軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と作戦立案。

ペイン達が四人の捜索を切り上げて町へと戻ってくると、メイプルとサリーがそれを待っていた。

「どうでした?」

「駄目だった。見つかんねえわ」

「おそらくスキルによって逃げたと思われる。最初からそのつもりだったようだ」

「もう一度攻め込んでくることはないだろう。【陣形変更】がなければ同じように逃げることも難しくなる。」

ペインがこれからこちらも策を練る予定だとサリーに伝える。勝つために勝負に出るなら【楓の木】と足並みを合わせるべきだからだ。

「ですね。クロムさん、メイプルを連れて戻ってもらっていいですか?」

「おう。安全第一でいくぜ」

サリーが上手くやったのだ。ここで俺がしくじるわけにはいかないと、クロムは大盾を掲げてみせる。そんな中、行動が裏目に出たメイプルは少し元気がなさそうだった。

「ごめんねサリー」

「あはは、気にしないで。ほら、たまには私にも守らせてよ」

それを聞いてメイプルもいくらか元気を取り戻す。

「……うんっ!次は上手くやるから!」

「そうそう。その意気で」

「なら、私も一旦戻るとするか。また必要なら呼んでくれればいい」

クロムとカスミはメイプルを挟むようにして、外壁の先に意識を向けながら王城へと戻っていく。残されたのはペインとサリーの二人だ。

「追いかけた後のこと詳しく聞いてもいいですか?」

「ああ。元よりそのつもりだ」

ペインがサリーに情報を共有すると、なるほどと頷きながら起こった現象について考え出す。

「私もスキルによるものだと思います。現状それが何か正確に分からないのが不気味ですが、移動速度上昇というよりは……瞬間移動」

「俺も同意見だ。上手く逃げられてしまった。結果として今回は一方的に被害を受けた格好になる」

「こちらも何か仕掛ける必要がある。ということですね」

「そうだ。撤退に使ったスキルが再使用可能になる度にあの奇襲を仕掛けられてはやりづらい」

「……つまりあの四人を倒したい、と」

「話が早くて助かる。【楓の木】には何か策はあるか?聞いておきたい」

「…………」

その質問に対し、サリーは考え込む。

「ある。が、リスクが高いか?」

「まあ、はい」

「おそらく俺と考えていることは同じだろうな。なら俺から提案しよう……メイプルを戦場に出したい」

「そうなりますよね」

先程の戦闘。もしウィルバートが実行に移せば、クロムやカスミ、ペインを死角から射抜くことは容易だったはずだ。

そのチャンスを捨てて、ベルベットとヒナタにより長い時間リスクを負わせてでも待ったのはメイプルを倒したかったからだ。

今回のように相手が対応せざるを得ない場所にまで踏み込まない限り、目的のプレイヤーとの戦闘は難しい。四人を倒すため出撃しても、相手が応じてくれるわけではないのだ。

戦場に引きずり出すためには、相手にとって戦うことで得られる旨味。すなわち『餌』が何か一つ必要だ。

「無理にとは言わない。分かっているだろうがリスクは高い。【楓の木】として取りたくないだろう戦略であることは理解している」

「はい、避けたいところではあります。ただ……」

個人の感情を除いた時、作戦自体は実行に移すだけの価値があるものだとサリーは理解できていた。

「代案がないのは事実です。私が出ても四人を釣るには足りないでしょうから」

「メイプルと同じだけの価値を持つプレイヤーはいないだろう」

作戦にはメイプルの存在が不可欠だ。それも、【不屈の守護者】がない状態でなければならない。日を跨げばこの作戦の価値は著しく落ちるだろう。

「今回はメイプルに聞いてみてください。私は、自分からは選べないです」

「やると言ったら」

「準備をします。ウォーミングアップがしたい」

「分かった。俺でよければ付き合おう」

「お願いします」

限界までパフォーマンスを引き上げる。今回はただの一度のミスも許されないのだ。

「メイプルの返答次第だが、もしやるとなれば細かい部分を決めた後出撃する」

「はい」

ペインはそれだけ伝えると、先に行ったメイプルを追って王城の方へと歩いていく。

「……やるだろうなあ。メイプルのことだし」

サリーはメイプルがこの作戦を受けるであろうことを予感していた。

だからこそ、思いついた上で提案すらしなかったのだ。

メイプルは作戦の良し悪しが分からない訳ではない、考えればあの四人を倒すことの価値は理解できる。

その対価が自分のリスクなら、メイプルは許容してしまうだろうとサリーは分かっていた。

「ふー……集中しろ」

全ての攻撃を叩き落とす。そのつもりでなければ話にならない。

サリーはそう溢すと、ウォーミングアップのため、一足先に訓練所の方へ歩いていくのだった。