軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と参戦。

【集う聖剣】の面々はメイプル達の陣営において、最も強力と言っていい戦力である。それが町から離れたことで、拠点を守る戦力に関しては大幅に低下したことになる。

「よーし、頑張って守ろうね!」

「「はい!」」

メイプルは近くにいる【楓の木】のギルドメンバーに声をかけて、フィールドの方に向き直る。イズに貰った高性能の双眼鏡で正面に続く平地をじっと観察するものの、敵陣営のプレイヤーの姿は見えない。

「まあ、流石にいきなり正面からは仕掛けてこないかな?」

「そうね。まだまだ様子見といったところかしら?」

サリー達が出会ったプレイヤーがそうであったように、一デスも許されない今回のイベントでは、やはりそうそう大胆な動きはできないものだ。

防衛をすり抜けてそのまま王城に直行できる空からのルートも、今の所誰も通ろうとはしていない。相手としても地上のプレイヤーは避けられても、これだけ見張りが多くては城に辿り着く前に撃ち落とされてしまうことが分かっているのである。

「どちらかが動き出さない限り、大きな戦闘は起こらないだろうね」

「そうだよねー」

このまま待っていれば、町を出た【集う聖剣】が敵陣営とぶつかったところで大きな戦闘が起こることが予想される。

「と言っても、他の皆もじっとしているばかりってことはないみたいだけど」

カナデが外壁上から下を確認すると、そこではまさにもうすぐ進軍開始とばかりに集まっているいくつかのギルドが見えた。

「すごい人数です……」

「これから攻めていくみたいだけれど……」

いくつかのギルドがまとまったこともあり、先に出た【集う聖剣】の部隊よりも多くのプレイヤーが集まっている。ここまでの数となると隠密行動は難しく、攻め込んだ先で互いに被害の出る激しい戦闘になってもおかしくない。

「んー、メイプル。ここはついていってあげた方がいいかもしれない。あの人数が一気に動くならここで待ち構えているより効果的だと思うんだ」

カナデの提案ももっともである。メイプルがここで待機している理由は序盤に相手の出方を窺うことと、もし突撃してきた際に最強の防衛ラインとなることである。

ただ、こちらの陣営も全員が同じ考えの上で動いているわけではないため、柔軟性も必要だ。

ここでいきなり多くのプレイヤーが死亡するようなことがあっては戦況はすぐさま大きく不利に傾く。

「サリーちゃんも人が多いところに行って守るのがいいって言っていたものね」

「私が行っちゃっても町は大丈夫かなあ……」

「はは、心配しないで。僕も準備はしてきてある。すぐに機械神で飛んで戻ってきてくれるなら、時間くらい稼げるからさ」

そう言うとカナデは中に浮かぶ本棚から真っ黒な表紙の本を手に取り、自信ありげに笑みを浮かべる。

「ま、足止め役はいると思っておいて。マイやユイもいてくれるなら問題ないよ」

「頑張ってくださいメイプルさん!」

「気をつけてくださいね……!」

「安心していってくるといいわ。ここはむしろ私のアイテムの力を見せるチャンスね」

「うん!じゃあ行ってみる!」

心強いギルドメンバーによる後押しを受けて出撃することに決めたメイプルは一つ短く息を吐くと、ピョンと外壁から飛び降りた。

「これで、【集う聖剣】もより動きやすくなるかな」

「そうね」

脅威度の高いプレイヤーが複数箇所に散らばっていればいるだけ防衛は難しくなる。

攻めるという行為にはリスクがあるが、守っているばかりでは勝てないのも事実だ。攻めるならより効率よく、リスクを負う回数を減らすことが重要になる。

「さてと、改めて防衛に使える設備の確認と……イズのアイテム設置を手伝おうか」

「「はいっ!」」

自分達にできる準備をしつつ、四人はメイプルを見送るのだった。

その少し前。高い外壁の上から飛び降りたメイプルは、地面に激突して大きな音と共に砂埃を舞い上がらせていた。そんなことをすれば敵の奇襲かと注目が集まるのも当然で、出撃しようとしていた複数のギルドも立ち止まって振り返る。

メイプルは追いつけなくなる前に止まってくれて助かったと、ぱたぱた走って集団に近づいていく。

「これから出発ですか?」

「お、おう。そのつもりだが」

「私も一緒に行って大丈夫ですか?防御なら自信あります!」

メイプルがそう言うと集まったプレイヤーがざわつき出す。ある程度レベルが高く、ここまでのイベントにも参加してきているプレイヤーなら、メイプルのことは当然知っているのだ。であればこれほど心強いことはない。

「ならそうだな。真ん中に位置取ってくれるか?ほらあの、【身捧ぐ慈愛】あるだろ?」

「はい!詳しく説明した方がいいですか?」

「んー、まあそっちがいいなら助かるが」

今は味方同士でもまた次のイベントでは敵になるかもしれない。提案を受けた男も無理にとは言わないといった風だったが、メイプルは今役に立てるならと【身捧ぐ慈愛】の弱点について話し出した。

「なるほど。そういう仕様だった訳か……ノックバックと貫通攻撃には注意する。集まった皆にも伝えるから、全員を範囲内に入れられるよう中央にいてくれるか」

「分かりました!」

「……その見慣れない黒い箱は?」

メイプルの近くに浮かぶ黒いキューブを見て、また妙なものが増えていると、その正体について尋ねる。

「これは新しい武器です!」

「オーケー、分かった。必要なら使ってくれ」

メイプルのスキルについて、名称やおおよその効果を知らないプレイヤーは少なくなったが、パーティーを組んだことがなければ知らないようなこともある。伝えておくことでメイプルもやりやすくなるというわけだ。

メイプルは指揮をとっていたリーダーに言われた通りに集団の中央までやってくると、周りにいるプレイヤーにぺこっと頭を下げて挨拶をする。

「よろしくお願いします!」

挨拶が返ってくるが、やはりまだメイプルの参戦にざわついており皆落ち着かないようだった。

「心強い味方も増えた!改めて進軍するぞ!」

「「「おおおおっ!!」」」

各ギルドのギルドマスターなのだろう数人のプレイヤーが先頭に立ち、武器を掲げて呼びかけ、士気を高める。

それに全員が返して、いよいよ大部隊が動き出す。

「っとと!?」

「ご、ごめんなさい!」

そして、当然そうやって動けば中央にいるメイプルは一人足の遅さで置いていかれて後ろと衝突することになる。流石に【AGI】が移動速度に関わるにも関わらずそれを完全に捨てているプレイヤーはそうはいないのだ。

「ま、マジで遅いんだな」

「荷車でも出すか?数人手が塞がっても乗せていくだけの価値あるだろ」

「そうね。ちょうど持っているから出すわ」

「助かります……」

メイプルは取り出された荷車に乗るとそのまま運ばれていく。

「なるほどなあ。飛び出しすぎないように注意か」

「そうだね。気づいた時には置いていっていたなんてことになったら予定通りにいかなくなるから」

味方になってみて改めて分かるメイプルの隙に注意しつつ、メイプル達は全員で敵陣へと進んでいくのだった。