軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と決定。

数時間の戦闘を終え、最後の準備を整えたメイプルは【楓の木】のギルドマスターとして【集う聖剣】のギルドホームにやってきて、同じくギルドマスターであるペインと話をしていた。

「では同盟といこう。どちらの陣営を選ぶか希望はあるのか?」

「うーん、私は特にないんですけど……ペインさんは?」

「モンスターもそのまま場に残るということだったからな。自分達が倒しやすいモンスターが敵陣営に行くように選択するのがいいだろう」

「なるほど……じゃあベルベット達は炎の方に行くのかなあ」

「ベルベット?……【thunder storm】か?」

「今回は敵になるって宣言されているんです」

「なるほど。だとすると……」

こうして二人が相談をしている頃。外ではフレデリカ、ドラグ、ドレッドが近くのソファで話し合いの結果を待っていた。

「今回はメイプル達が仲間かー」

「おいおい、まだそうと決まったわけじゃねー」

「だが向こうにとっで悪い話じゃあないはずだぜ」

「だよねー?」

しばらく待っていると、部屋の中から二人が揃って出てくる。

「ペイン!どーなのー?」

「同盟を組むことに決定した。それに合わせてどちらの陣営を選ぶかも確定させた」

ギルドメンバー全員に伝え、情報は外部には秘匿することにし今日のところは解散した。

その後、メイプルを見送りギルドホームから出ていったドレッドが話しかける。

「とりあえず戦力は増えたみてーだな」

「ああ、期待できる。それに……噂の黒い染みが消えていた」

「ねー。確かにあったんだけどなー」

「他に目撃者もいるし見間違いってこともないと思うぜ」

「ああ。俺は何かのイベントを終えたのだろうと考えている。また強くなっていてもおかしくはない」

「そりゃ頼もしい。楽できるならそれに越したことはねー」

「ちょっとー?ちゃんと【集う聖剣】が頼れるってとこ見せてあげるんだからしっかりしてよねー?」

「ははは!イベントが楽しみだな!」

【機械神】【暴虐】以降、メイプルが新たな何かを使っているところは見ていない。皆何かを隠し持っているだろうという予想は立てている。

味方であればその隠されたものに期待だけしておけばいい。

「最後の準備をしておこう。イベントが始まれば慌ただしくなる」

「はいはーい」

「オーケー」

「やれることはやっておくぜ」

今回の対人戦。【集う聖剣】は負ける気などさらさらない。やるからには全て尽くして勝つつもりなのである。

【集う聖剣】や【楓の木】が陣営を決定するような時期となれば、他のギルドも同様だ。

【炎帝ノ国】もまた、ここまでに集めることができた情報をもとに戦略を固め陣営を決定するところだった。

「でねミィ。ここに面白いものがあるんだけど……」

「なるほど。確かにこれは……」

「へぇ、俺は気づけなかったなぁ。他にもあるのか?」

「うん。探しただけでもいくつかある。でも多分見つけてない人がほとんど……もしかしたら僕だけかも」

マルクスはそう言って開いたマップからいくつかの場所を示す。

「皆が知ってて隠してるだけの可能性もあるけど……覚えておいて損はないと思う」

「マルクスのスキルで見つけた場所なのでしょう。真似できる人は見たことありませんから、お手柄かもしれませんよ」

「そうかな……?」

「ああ。ともあれこれは共有しておこう。であれば陣営にも関わってくるか……」

「そうだなあ……ってなると」

「うん。僕はあっちがいいと思う」

「そうですね。何より私達の強みを出せると思います」

「皆、予想はついているようだな。この情報とともに私が向かう陣営を伝えておく。その上でどちらに行くことも構わない」

「って言っても、大体答えは決まってそうだけどな」

「そうだね」

「ええ」

「そ、そうか?」

どうやら三人はミィについていくつもりらしい。そしてそれはギルドメンバーもそうだろう。どちらでもいいなら、ミィにつくというわけだ。

「ならば、全力で勝つとしよう!」

「うん……!」

「おう!」

「はい!」

集団戦での強さなら自信がある。【炎帝ノ国】もまた【炎帝ノ国】にあった作戦を立てる。

【炎帝ノ国】は事前に同盟といった動きは取っていないが、もちろんそういった作戦を取るギルドは【集う聖剣】以外にも存在する。

まさにそれが【thunder storm】と【ラピッドファイア】の二つだった。

「うーん、広いですね」

「【ラピッドファイア】も大規模ギルドですから……そこまで構造に差はないと思いますけど」

「こっちだ。二人とも入ってくれ」

ベルベットとヒナタはリリィによって部屋の中に通されると、テーブルを挟んで座る。

部屋の中にいるのはリリィについてきたウィルバートを含む四人だけだ。

「では話をしましょうか」

「はは、他所行きモードかい?改めて見ると不思議な感じがするが、対外的な場と考えるとらしいとも言えるか」

関係のない話もそこそこに、リリィは本題に移る。

「現時点で所属陣営が既に固まっているギルドもあるようでね。もちろん、それをそのまま信じることはできないが、どちらも戦力にそこまで差はないように思える」

それは即ち、戦局を一方に傾けるだけのスキルを持ったプレイヤーをより多く投入できることが大きな意味を持つことを示す。

「どうかな?意思は変わっていないかい?」

「ベルベットさん」

「はい、もちろん。共闘ですね」

「私達としてはそれを願っています。【thunder storm】と協力できれば、勝ちに近づくと」

「いいですよ。今日はそのつもりで来たんです」

「おお、それはいいね。色々と長ったらしい話をする必要もなくなったわけだ」

「ただ、一つだけ条件があります」

「……なんだい?」

策略に長けたタイプではないと認識しているものの、条件と言われリリィは少し身構える。

するとベルベットは何か待ちきれないという様子でにっと笑って、机に手をついて身を乗り出す。

「メイプル達と戦える陣営に行くことっすよ!」

「……ははっ、何だ身構えて損したよ。もちろん、そのつもりでリサーチをかけている。それは約束しよう」

「なら大丈夫っす!」

「調子が出てきたね。そっちの方がらしいよ」

「気にしていたのはこれだけみたいですから……私達からはもう特別なことはないです」

「ではより細かい点を詰めていきましょう。特に強力なプレイヤーをピックアップして。でなければ一瞬で崩されかねませんからね」

「はい。守りは私が担当できます……色々、聞いていいことがあれば聞かせてください」

よりプレイヤーに絞った対策をするのは、一対多が得意だという自負があるからだ。それを突破しうる強力な一を警戒すれば、生存しているプレイヤーの数が大きな意味を持つ今回のイベントで有利になると考えているのである。

「私はどうするっすか?」

「敵陣に飛び込んでくれればいいさ。それが一番強力で慣れているだろう?」

「そうっすけどー、こう作戦って感じのやつっすよ!」

「それも考えておくとしよう」

いつどこで投入するかは大事になる。ベルベットも、ヒナタも、ウィルバートも戦局をひっくり返しうる。さてどうしようかと、リリィはイベントの展開を想像し思考を巡らせるのだった。

そうして、全プレイヤーが最後まで調整を行う中。イベント開始は日々迫り、ついに当日となった。【楓の木】では少し早めに集まって最後の確認を行っているところである。

「この辺りは警戒しておいて……あとこっち。ここは厄介なモンスターがでるから……」

サリーを中心に立ち回りを再確認する。どのギルドが敵対しているか運営から開示されてはいないため、全てを把握することはできていない。ただ、既に陣営が決定しているこの日、町の中で見かけなかったプレイヤーは敵になっているだろう。

「【thunder storm】は宣言通り敵になってると思う。特にマイとユイ、あとカナデは気をつけて」

ベースのレベルも低く防御力もないため無差別攻撃の雷一発でも持っていかれかねない。

そうして注意すべきプレイヤーの確認も済ませ、いよいよイベント開始秒読みとなる。

「皆!頑張ろうね!」

「おう!防御の手が足りないところは任せとけ!」

「「はいっ!精一杯頑張ります!」」

「もちろんだ。油断なくいこう」

「今回は魔導書も大盤振る舞いしようかな」

「補給は任せて。危なくなったら下がってね」

「聞きたい情報があったら聞いて、答えるよ」

メイプルの呼びかけに全員が合わせて、いよいよ転移の光が全員を包んでいく。戦場はここと全く同じ別空間だ。

「よーし!勝っちゃおう、サリー!」

「……今回は勝つ。そう決めた」

サリーも集中しているようで、メイプルもそれにならって気を引き締める。

その直後八人は大規模な対人戦の舞台。ここまでで強くなったスキルをぶつけ合う戦場である、イベントフィールドへと転移するのだった。