軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と燃え盛る森。

そうしてしばらく、周りの地面で凍っていない場所がなくなってしまうくらい二種類のブレスを受けたメイプルだったが、どれだけ受けても氷漬けになるだけなのは変わらなかった。

時間こそかかったものの、負ける要素がない戦闘を作り出せるのはメイプルの強みである。

全ての攻撃を体で受け止めて目的の葉を集めきったメイプルは満足気に凍りついた森を出ていく。

「ふー、大変だった……でもこれでクリアできるね!」

クエストクリアの要件には竜の討伐は入っていない。あの森には必ず出現するようであり、今後のクエストで再戦することになるかもしれないが、今回のところは気にしなくてもいい。

森から出たメイプルは、また来ることがあればと一度後ろを向いて別れを告げようとする。

そんなメイプルの目に映ったのは、凍てつく森の中、氷と水のブレスではなく、煌々と燃え盛る炎が駆け巡る瞬間だった。

少しして炎は収まっていき、それでもなお木々を覆う氷が溶けずにそのまま残っていることはメイプルを驚かせた。

「もう一体いるのかな……?」

メイプルは凍らせてくる竜にしか出会わなかったが、普通に炎を吐くものがいてもおかしくはない。そもそも、これまでであった竜と言えるようなものは大半が炎のブレスである。今回のような氷や水を吐くタイプの方が珍しいのだ。

とはいえ、サリーやイズから聞いていた話ではそんなものの存在については一切情報がなかったのが事実だ。

「何か珍しいものかも!」

自由に探索していていいと言われているのだから、クエストの済んだ場所へ引き返しても咎めるものは誰もいないだろう。

こうしてメイプルは炎の正体を確かめに森の中へと戻っていく。

炎が広がったのはほんのわずかな時間だったものの、かなりの規模だったのは間違いない。一体どんなものがいるのだろうかと辺りを見て回るメイプルはモンスターより先にプレイヤーを発見した。

「あっ、ミィ!」

「メイプル!そっちもここに来てるってことはクエスト?」

「うん!それは終わったんだけどすごい炎が見えたから、何か珍しいものかと思って戻ってきたんだけど……」

「あはは、それは私だね」

「そうだよねー。ドラゴンが炎を吐いてるのかと思っちゃった」

持っているスキルが強力になればなるほど、プレイヤーよりモンスターの規模感に近い現象が起こせるようになるものだ。そんなメイプルもよくモンスターと勘違いされている。もっとも、それは見た目がそのままモンスターのそれなためであるのだが。

「文字通り火力も上がったからね。【楓の木】でもスキル一つでここまで広範囲に攻撃できる人はいないんじゃない?」

「私は全部のスキルを知ってるわけじゃないけど……流石に見たことないかも!」

イズの広域爆破は下準備にかなりの時間を要するし、カナデもそういった魔導書の一つや二つは持っていてもおかしくはないがあくまで基本は使い切りだ。

メイプルの【機械神】を超えるようなダメージと、点でなく面を焼く炎による避ける隙間のない範囲攻撃は、自分の強みを押し付けるのにこの上なく向いているものだ。

「ドラゴンももう倒しちゃった?」

「倒してはないけど、しばらく撃ち合ったら逃げていったよ。撃破っていうより、撃退したって感じかなあ」

そのおかげで自由にクエストを進められたと、ミィは採取した葉をメイプルに見せる。

「流石だなあ……私は倒すの大変だと思ってそのままにしちゃった」

「残っている方が大変じゃない?」

「時々カチコチに凍らされちゃうけど、少ししたら解放してくれるから探索できたよ!」

「流石だなあ……」

そんなものをミィが真似しようとすれば町まで強制送還となるのは間違いない。

あくまでそれぞれのスタイルに合った攻略法を選ぶのが一番だ。

「メイプルはこの後は?クエストは終わったみたいだけど」

「他にもいくつか受けてあるからどれかに行こうと思ってるよ!」

「へー、どれ?」

「えっとねー」

メイプルはミィに現在受けているクエストについて話す。まずクエストの種類が限られており、さらに誰でも簡単に受注できるため、当然と言えば当然だが、ミィの受注した中にもメイプルと同じクエストが存在した。

「メイプルがよかったらさ、一緒にいくつかクリアしない?二人だったらより楽になると思うし」

「いいよー!」

「よしっ、じゃあ決まり!イグニス出すから乗っていってよ」

「はーい!」

こうして二人は次のクエストの場所まで空を飛んでいくことにした。

「やっぱり速いね!」

「シロップと違って最初から飛ぶように能力が設定されてるからね」

不死鳥であるイグニスは、メイプルのスキルで宙に浮いているシロップとは違い、元から空を飛んでいる。異様な飛行方法を用いるシロップではこの速度に追いつくのは不可能だろう。

「空を飛べるテイムモンスターを仲間にしたプレイヤーも結構いるみたい。どうしても飛べるモンスターがいいって最近まで仲間にしてなかった人も私のギルドにいたりしたよ」

「やっぱり空を飛べるってすごいもんね」

「戦闘面では上を取るってだけで強いし、地形を無視して移動できるから機動力もあるし……人気な理由も分かるなあ」

「それに、現実世界だったらこんなに自由に飛び回れないし!」

「あはは、そうだね。そういう魅力も人を惹きつけてるのかも」

メイプルが一人シロップで空を飛んでいた時から時間も経ち、空もプレイヤーの行動範囲として随分と開拓されたものである。

「それに城攻めなら城壁を飛び越えられる方がつよいでしょ?」

「……!」

ようやくテイムモンスターを仲間にしたという【炎帝ノ国】のギルドメンバーなどは、こういった時に有利を掴めるようにというのを考えて待っていたのだろう。

確かに空を飛ぶことができれば町を囲む高い壁もどうということはない。飛行能力を有するプレイヤーとモンスターは、地上を主戦場とする場合と比べ圧倒的に少ないのは事実であり、守りが手薄なところを突くことができるのはそれだけで脅威となりうる。

「それにしても気の長い話だったと思うけどね。だって間にもう一つイベントと八層もあったんだし」

「すごい忍耐力……」

「その分その狙いが上手くいってほしいなあ」

互いに近況を話しながら二人はクエストの目的地へ移動を続ける。

「【楓の木】は今はこっちにいる感じ?」

「多分そうかな?逆側も見に行ってる人がいるかもしれないけど」

「一回はどっちも見ておきたいしねー」

「ミィは?」

「私達も今のところは決めきってはないんだ。それに、今回はギルドメンバーも別々に分かれることができそうだし」

「そうなの?」

「うん。って言ってもちゃんとアナウンスされるまでは確実じゃないけどね。ほら、入国した時の紋章はプレイヤーごとにつくでしょ?」

「確かに……」

「そのままなんだったら、同じギルドに所属してても敵対することもできそうだなって」

ミィはついてきてくれているギルドメンバーのやりたいようにさせたいとのことだった。

「もちろん敵になっても手加減したりしないけどね!これでもギルドマスターだし、負けないようにしないと」

「ミィくらい強かったら大丈夫だよー」

「ギルドの皆も強いからね。気は抜けないなあ……【楓の木】はやっぱり最後は皆で?」

「まだそんな相談はしてないけど多分そうなると思う!」

「ちょうどパーティー一つ分でキリもいいしね。チームワークも完成されてるし」

前衛から後衛まできっちり存在し、それぞれが尖った能力を持ちつつも上手くフィットして足りない部分を補い合えている。

わざわざバラバラになるメリットなど考える方が難しいくらいだ。

「他のギルドの人だと誰と仲間になるかなあ」

「それは始まってみないと分からないね」

「ミィとも仲間になれるといいな!」

「ふふ、じゃあ私がどっちに行くかよーく予想して当てないと」

「頑張る!」

「頑張って。っと、そろそろ着くよ!しっかり掴まってて!」

「はーい!」

ミィが合図を出すとイグニスは旋回しつつゆっくりと地面へ降りていくのだった。