軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化とキューブ。

凄まじい光ではあったものの、起こったことは特段今までと変わらない転移だったようで、二人はどことも分からない暗闇に放り出されていた。

「よかったー、いつもと雰囲気違ったから……」

「んー、昔の町の転移はあれが普通だったんじゃない?」

「目に悪いよぉ」

「……ここも暗くて何も見えないけど、水はないみたいだね」

「あっ、ほんとだ!」

手足を動かしてみても水の中にいる感覚はない。試しに飛び上がってみると、地上にいる時のように落下する感覚があった。

「じゃあ潜水服は外しておこっと」

「視界も多少制限されるからね。それがいいかな」

二人は潜水服を脱ぐと、改めて暗闇をヘッドライトで確認する。

「ちゃんと床だね。さっきの石でできてる」

「何処かの中なのかな?空も見えないし」

空気はあるものの、上を見ても星一つ見えない。床が人工的なものなら、洞窟などというよりは建物の中の可能性が高くなる。

「壁にぶつかるまで歩いてみない?そうすれば広さが分かるかも!」

「いい提案だね。そうしよう。今のところ静かだし、何かが出てくる前に自分達の周りを把握しておくのは大事」

二人は一旦後ろへと下がっていく。これはこれまでボスと向かい合うように転移することが多かったことを鑑みて、それとは逆方向へ進む作戦である。

すると、元いた位置の後ろ側はすぐに壁になっていた。黒い石で作られた頑丈そうな壁に扉はなく、出られるようにはなっていない。

「部屋の端に転移したみたいだね。じゃあ逆は……」

「何かいるかも?」

「うん、この感じはちょっとボスっぽい」

「そうだよね!気をつけないと……」

即座に襲いかかってきてはいないが、奥に何かがいる可能性は十分ある。かなり広そうなこの場所は今まで何度も突入してきたボス部屋の形によく似ている。

どんなものであれ敵ならばできることならこちらの準備が整うまでは待っていて欲しいものだ。

二人は今度は横に歩いてこの空間の幅を確かめに向かう。変わらず無音の暗闇に足音が響く中、また特に中かが起こることもなく二人は壁まで辿り着いた。

「広いね」

「えっと、広いってことは……」

「ボスならかなり大型の可能性がある」

基本的に部屋のサイズはボスのサイズに左右される。部屋の大きさが合っていないと動きを阻害してしまうため当然と言えるだろう。

さらに今回は水中でないため、ボスのパターンも多く事前情報もない今、予想するのは難しい。

その姿を見て、印象から能力を予想するぶっつけ本番での戦闘になるだろう。

「逆も探索したら前だね!」

「いつ何がきてもいいように準備しておこう」

「うん!」

二人は逆側の壁まで歩いていき、そちら側にも何もないことを確認すると、中央辺りまで戻って正面に向き直る。

「行くよ?」

「いつでもおっけー!準備万端!」

二人は最大限警戒しつつ、前方へと進んでいく。すると、二人に反応したのか次第に部屋が明るくなっていき、その全貌が明らかになる。

二人が歩いていたのは予想通り部屋の端であり、正面に向かって数十メートルの奥行きが確保されている。

半分を越えた辺りから、壁際にはクリスタルや岩石、既に八層では見られなくなった植物など、素材と思われるものが大量に並んでいる。

「倉庫?」

「それにしては結構雑に入れられてるけど……あれが一番目立ってるかな?」

「あれだね!」

メイプルが指差した先には一辺が二メートルほどある黒い立方体だった。

それは未知の力によって空中に浮かんでおり、雑多に転がっている他の素材とは雰囲気が違う。

「ちょっと前に水中で見たのに似てるかも?」

「ああいうタイプのモンスターなら攻撃方法も限られるし。やってくることも本当に似てるかもね」

水中にいたタイプは水を生かしての攻撃だったが、今回ここに水はない。さてどう攻撃してくるかともう一歩近づいたところで黒いキューブに反応があった。表面に複雑な青いラインが入り、ここへ入ってきた時のようにそのボディが半分に割れていく。

「来るよ!」

「うん!」

どんな魔法が飛んでくるかと構える二人の前で、ガバッと一気に開いたキューブの間から同じ素材でできた石柱が何本も現れる。

それはまとまってゆっくりと回転し始めると、バチバチと音を立ててエネルギーを溜め、大量の光弾として一気に解放した。

「が、ガトリング!?」

「【カバー】!」

メイプルはサリーの前に立つと盾を後ろに隠して光弾を体で受け止める。ダメージはないものの、弾けるエフェクトによって前も見えないほどだ。メイプルの兵器をも上回る発射速度は、本来避けきれなければ一瞬で蜂の巣になるようなものである。

「思ってるのとちょっと違うよサリー!」

「もっと神秘的なものだと思ったけど……!」

発射されているものと発射元が通常の銃などとは異なるため、弾切れが起こるのかどうかも不明である。

「……もうちょっと観察させて!」

「分かった!ダメージも受けてないし大丈夫!」

真剣な目でキューブの放つ光弾をじっと見つめること数分、サリーはこれでもう問題ないと小さく頷く。

「大丈夫、避けられる。引きつけるからその隙に撃ち返してやってよ」

「まっかせて!」

避けられると言うなら、メイプルがそれを疑うことはない。誰よりもその回避力を知っているのはメイプルだ。

「【クイックチェンジ】……じゃあ行くね!」

「頑張って!」

メイプルの後ろから飛び出したサリーがキューブに向かって接近していく。二人はどちらもまだ攻撃していないこともあって、より近くまで来たサリーへと攻撃の矛先が向く。

光弾はあと一歩でサリーを捉えられそうになるものの、ほんの僅かその速度に届かずに一瞬前にいた場所を撃ち抜いていく。避けられると宣言して飛び出しただけあって、自身の移動速度との差の計算に抜かりはない。

「【水の道】!」

空中に浮かんでいるため、直接攻撃を叩き込むのは水中よりも難しい。そこで、サリーはやっと使い所ができたと水流の中を高速で泳ぎ接近する。

水がないなら生み出せばいいのだ。

「【ピンポイントアタック】!」

すれ違いざまに貫くように短剣を突き出すと、キューブの表面の青いラインが明滅し表面にシールドが展開される。

「貫く!」

サリーはスキルの動作のままシールドへ短剣を突き刺す。それは一瞬シールドに反応してバチッと音を立てるものの問題なくキューブまで届きそのHPを削る。

「防がれた……のとはまた違う?」

何か言い表せない違和感を覚えるが確認のために立ち止まってはいられない。

動き続けることがガトリング回避の絶対条件である。最高速を維持しなければ、計算通りに避け切ることはできないのだ。

「【攻撃開始】!」

一撃を加えて水に乗って離れるサリーの代わりにメイプルの銃撃が飛んでくる。キューブの放つガトリングに発射速度は劣るものの、攻撃範囲はこちらが上である。ほとんど動かないキューブではこの範囲から逃れることはできず、先程のお返しとばかりに正面から大量の弾丸が襲いかかる。

それはサリーの攻撃時と同じように薄い壁に接触しバチバチと音を立てたのちキューブの表面を傷つけていく。

「効いてるね!」

「いいダメージ、だけど……」

メイプルが大量の銃弾を浴びせたことにより、サリーはキューブに起こっている変化に気がついた。HPバーの下には一本見たことのないゲージがあり、攻撃に反応してそれが少しずつ増えているのである。

「メイプル!あのゲージ見える?」

「えっと……うん!見えた!」

「ダメージ受ける度に溜まってる!気をつけてて!」

「分かった!」

それが何を表すゲージか分からない以上警戒することしかできない。溜まりきることで有利になるか不利になるかは不明だが、HPをなくすことが目的となるボス戦の性質から、溜まらないように立ち回ることは不可能と言えた。

ならば、相手がやってくることを全て正面から受け止めて勝ち切るほかない。幸い、二人の能力はそういった場面に適している。

見た目通り硬いキューブはメイプルの弾丸によってダメージを受けているもののまだまだ倒れそうにない。水中で出会った個体と見た目こそ似ていてもボスと中ボスでは格が違うというわけだ。

「そろそろ半分くらいまで溜まる?」

キューブの動きをじっと見て次の動きに備えつつ、ガトリングを避けてヒットアンドアウェイを繰り返すサリーは現在最も気掛かりな点である謎のゲージを常にチェックしていた。

そんなサリーだからこそ、いくつものエフェクトが弾け、まさに攻撃されているその最中でもそのゲージがガクッと減少するのに気づくことができた。

「メイプル!」

「……!【カバームーブ】【カバー】!」

短い言葉で意思疎通し、サリーの元へ駆けつけたメイプルにガトリングに加えて二つ、左右から閃光と爆風が襲いかかる。

「【身捧ぐ慈愛】!」

先程までなかった攻撃にメイプルは咄嗟にさらなる防御を行うとサリーを抱きしめて、兵器を爆発させ無理やり距離を取る。

「おお……!いいね、ナイス判断!」

「えへへ、っとと、何があったのかな?」

二人がキューブの方を確認すると、小さめのキューブが二つ本体の周りをクルクルと周回している。ボスの中央に並んでいるのが何本もの石柱なのに対し、此方は棘のついたボールのようなものが一つ浮かんでいた。

「爆弾かな?さっきの雰囲気的に」

爆風の範囲も広く、サリーが避け続けるのには少しリスクが高くなる。

「じゃあ、私が守るね!」

「助かる。じゃあ私はメイプルの兵器を守るってことで」

【身捧ぐ慈愛】はメイプルの兵器までは守ってくれない。だからこそ、メイプルが守りつつ、サリーがさらに盾になるのが今二人のよく取る戦法だ。

「それに、まだ増えるよ。多分。攻撃を受けた時に獲得するゲージを消費して生成してる」

「本当だ!」

減っているゲージを見てメイプルも現状を把握する。ボスのHPがなくなるまでにあと何度武器が追加されるか分かったものではない。

ボスの素の防御力が高いのに加え、あのシールドはダメージを減衰させてゲージへと変換している。これらの要素がボスの耐久力を想像以上に高めているのだ。

「結構長い勝負になりそう」

「水中じゃないから大丈夫!」

「だね。水中だと向こうも壊れちゃうんじゃない?きっと」

自分達に有利なら特に気にする必要はない。サリーはともかく、メイプルは地上の方が戦いやすいのだ。

「ちょっと前に出るから安心していいよ!」

「貫通攻撃も現状なさそうだしね」

まだまだ勝負はここからである。二人は再度戦闘態勢を取ると一旦開いた距離をまた詰めるために、再度ボスの方へと歩き出した。

【身捧ぐ慈愛】とによって防御を固め、【救済の残光】も発動して緊急避難の態勢も整えた状態で、ガトリングと爆発をその身で受け止めてサリーが安全に行動できるよう範囲内に収めにいく。

「メイプルもゲージは見てて、武器も増えるから分かるとは思うけど」

「りょーかいっ!」

メイプルは射程内までやってくると、巨大なレーザー砲をいくつも生成し、重心を低くすると、その先をキューブの中心へ向ける。当然立ち止まってそんなことをしていればメイプルに向かってガトリングと爆弾が襲いくるが、その間にはサリーが立ち塞がる。

「【鉄砲水】!」

サリーは地面から大量の水を噴出させて爆弾を跳ね飛ばすと、そのまま武器を大盾に変形させてガトリングでの攻撃を防御する。

「【攻撃開始】!」

メイプルが展開したレーザー砲から赤い光が放たれ、こちらはキューブに直撃する。相手には防御する盾もなければ護衛もいないのだから当然である。

メイプルのレーザーが直撃したのに合わせてキューブの下のゲージは伸びていき、また一定値までいったところで消費され新たな武器が生み出される。

「長い筒だ!」

「大砲か何かかな……見た目が似てるから分かんないな」

さてどうなるかと攻撃を続けていると、長い筒かメイプルの額へと細い光が伸びてくる。それはまさにポインターのように。

「それスナイパー……!」

サリーが何かを言う前に轟音が鳴り響き、回避など不可能なほどの速度でメイプルの頭に弾が着弾し、そのまま遥か向こうまで吹き飛ばす。【身捧ぐ慈愛】と【救済の残光】のスキルエフェクトが切れていないことと、吹き飛ぶ瞬間にダメージエフェクトが発生していなかったこと、単発攻撃であり【不屈の守護者】が残っていることを考慮して、声だけをかけて前方に集中する。

「大丈夫そうなら射撃を再開して!」

いかにサリーでもよそ見をしながら避けられる攻撃ではない。その上で、あれを防げるかどうかはまだまだ残っているボスのHPを削る上でサリーが自由に動けるかどうかを決定づけるものだ。【空蝉】が残っている今が試すチャンスである。

「よし……」

サリーはキューブ上空の筒がエネルギーを溜め込んでいるのを確認して、バックステップを踏む。ほんの一瞬、ガトリングがサリーを追うために角度を変更して遅れるタイミング。それはサリーが立ち止まっても追いつかれない僅かな攻撃の隙。

キューブとしてはそれを埋めるように、サリー としてはそこに誘い込むように。轟音と共に空間を切り裂いて弾丸が発射されサリーに迫る。ただ、事前に照射されるポインターによって飛んでくる位置は分かっていた。

「はぁっ!」

時間の流れが遅く、止まっていくような感覚。その中でサリーの目は弾丸をしっかりと捉えていた。半分は反応、半分は予測で振り抜いた短剣は弾丸を横から叩きつけて火花を散らし、その軌道を額から逸らす。

武器で受けた事によるノックバックでサリーの体は後方へ弾かれるが、それでも空中で姿勢を整えるときっちり地面に着地する。

凄まじい速度の弾丸はそのままサリーの左上へとすり抜けていき、壁に激突して大きな音を立てた。

「成功……!」

一瞬の攻防が終わり、圧縮されて感じられた時間が元に戻っていくと、すぐにガトリングが襲ってきて、サリーは再び走り出す。

「弾ける……けど、流石にメイプルに任せたいところだね」

かなりの集中を要するためそう何度も同じことはできないだろう。サリーがガトリングの隙を見てチラッとメイプルの様子を確認すると、予想通り無事だったようで、兵器こそバラバラにされ無くなっているもののHPは一切減っていない。

「ごめーんサリー!大丈夫だった!?」

「うん。そっちこそ、あれが直撃してなんともないのは流石だね」

「今度はちゃんと受け止めるからね!」

兆候がある分、メイプルもちゃんと準備をすれば受け止められる。【悪食】で飲み込んで全てなかったものとしてもいい、【ヘビーボディ】で止まってもいい。そもそもダメージを受けないのだから最悪からは程遠い。

「ガンガン撃っていって。それが一番安全に削れる」

「おっけー【全武装展開】!【滲み出る混沌】!」

「【サイクロンカッター】【ファイアボール】!」

何重にも張られたセーフティーネットの中から一方的に攻撃する二人を傷付ける手段がないままボスのHPは削られていく。対抗策を持たないモンスターでは二人相手になすすべがないのだ。

相性のいい相手はとことん蹂躙する。それが二人の偏った能力が持つ特徴である。

「……一気に二種類増えたよ!」

「その二つだけ警戒!」

一つは二人の真上に舞い上がり、もう一つは胴の辺りで停止する。何をしてくるかと警戒していると、新たに増えた装置から部屋の端から端まで届く太いレーザーが放たれた。

「わっ!?」

「うわっ、動き出した!潜るか飛ぶかで避けるよ!」

「そ、そんなこと言われてもー!」

それぞれ部屋を横切るように移動しているレーザーを器用に飛び越える必要があるが、サリーは可能でもメイプルは難しい。

メイプルの飛行能力はどれも細かい動きは得意でないのだ。

「じゃあさ……」

「……分かった!」

レーザーが迫る中、ガトリングを大盾で受け止めつつ、サリーはメイプルにある提案をする。

それは長引く勝負を決めるための一手についてだった。

提案を受けたメイプルはレーザーが迫る中、兵器を爆散させ、爆風に乗って一気に空へと舞い上がる。といっても、真上ではなく斜め前へだ。

ノックバック効果のあるライフルはチャージ中であり、ガトリングで残った兵器を破壊することはできたものの、メイプルの接近そのものを拒絶する方法はない。

「【水底への誘い】!」

着弾寸前でメイプルは片腕を触手に変化させるとガバっと触手を広げてキューブを包み込む。シールドで軽減してもなお、みずみずしい果物を握りつぶした時のような大量のダメージエフェクトが弾けるように触手の隙間から吹き出す。

「効いてるねっ!もっと……【砲身展開】!」

キューブを鷲掴みにしているのとは逆の手を巨大な砲身に変え、そのままゼロ距離でレーザーを放つ。赤い光に混ざってダメージエフェクトが立ち昇りボスのHPが凄まじい勢いで減少するが、同時にとんでもない勢いでゲージが増加し、発生した衝撃が、くっついていたメイプルを弾き飛ばす。

「わっ!?あーっ!もうちょっとだったのに!うわあっ!?」

地面に落とされたメイプルはそのままガトリングとライフルの追撃を受け、地面近くを焼く移動するレーザーに全身包まれながらサリーの元へと転がってきた。

「……無事、でいいよね?」

「うん!」

「元気な返事ありがとう」

メイプルが後少しだと言っていただけあり、もう数撃与えられれば倒せそうなものだが、二人が行動を起こすより先に大量に溜まったゲージが消費され今までとは比べ物にならない光が放出される。

それが止まった時。キューブの中央にあったガトリング用の筒はなくなり、その十倍近い太い筒に変わっていた。何も知らないものが見たとしても石柱程度にしか思えないそれが、凄まじい威力を持った大砲であることを二人は理解している。

それは生成と同時にチャージを始め、ボスからはそれを守るように光のシールドが何重にも展開される。

「どうするサリー!?」

「できるなら撃たせる前に倒し切りたい!けど……」

威力も範囲も不明、しかし最後の切り札と言える攻撃であるのは間違いない。

撃たせずに終われるならそれに越したことはないが、防御を固めたボスの硬さもまた未知数だ。

今まで通りいなしきって反撃するのも、一気に詰めにいくのも、どちらでも裏目に出るリスクはある。

「じゃあさサリー、これならどう?」

先程とは逆で今度はメイプルが提案する。サリーはそれを聞くとその考えを肯定するように頷いた。

「いいよ。じゃあ撃ってくるのを待つ。メイプルのスキルと防御力を信じる」

「うん!大丈夫!」

メイプルがいるなら攻勢に出たところを突かれ、下手にばらけて守り切れないリスクを生むより固まっていた方が確実だ。

飛び交う全ての攻撃をメイプルの防御力と【身捧ぐ慈愛】によってノーリスクで無力化できている以上、撃ってくる瞬間まで問題なく待機できる。

「そろそろ撃って来ると思う!」

様子を観察していたサリーが武器に収束する光が強くなったのを見て発射の兆候を感じ取る。

「念のため……【ピアーズガード】【不壊の盾】!」

メイプルは直撃した時のためにスキルを発動し、触手を解除し大盾を構える。それからほんの少しして、発射準備が整ったことを示す高い音が響き、轟音と共に部屋のほとんどを放たれた白い光が覆い尽くした。

それは一瞬のことで、全てが焼き払われた地面に二人の姿はなく、溢れかえる水だけが残っていた。しかしそれが意味するのは二人が倒されたことでも、この部屋が壊れて水が溢れたことでもない。

「タイミング完璧!」

「えへへ、上手くいったね!」

二人がいたのはボスの真上。【方舟】によって転移する瞬間をレーザーに合わせることでダメージを受けることなく、攻撃をすり抜けたのである。

メイプルが言った念のためは、これが失敗した時の保険だったのだ。

大技と引き換えに、常にこちらを狙っていたガトリングも消え他の武装もすぐにはこちらに攻撃できない。目の前にあるのは絶好の攻撃チャンスだ。

「メイプル、いくよ!」

「おっけー!」

「「【砲身展開】!」」

二人の片腕がそれぞれ巨大なレーザー砲に変わり、その砲口は真下のキューブをしっかりと捉える。相手が切り札を切るならこちらも合わせるとばかりにサリーも【虚実反転】で攻撃を実体化させる。

「「【攻撃開始】!」」

こうして二人が放ったレーザーは混ざり合って、先程放たれたものにも劣らない力でボスのシールドを破壊し、その体を焼いて動きを完全に停止させるのだった。