軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と水中神殿2。

水の流れる音を聞きながら、二人は神殿内部を進んでいく。戦闘はメイプルが守りを固め、サリーが接近戦を行う布陣だ。ユニークシリーズによってステータスは上昇しているものの、手に入れたスキルの都合上、モンスター相手となると与えるダメージに大きな変化はない。

「サリーすごいね、本当にいろんな武器を上手く使えるし」

「こればっかりは積み重ねかな……でも戦い方は人それぞれだと思うよ。得意なやり方があればそれでいいんじゃない?」

サリーは自分の得意分野が何か理解していたこともあり、今のような戦闘スタイルになったが、メイプルもそうであるとは言えないのだ。

幸いにもこのゲームはプレイヤーの技量でも、スキルの強さでも戦うことができる。それならメイプルは後者で戦うだけだ。

「メイプルは私より強力なスキルがあるし、一対他も得意だしね。持ち味を生かすってこと」

「それもそうだね」

「メイプルにしかできないことは多いよ。分かってると思うけど」

「ふふふ、自慢の防御力ですから!」

「うん。これからも磨いていってね」

メイプルの戦闘を支えているのはどこまでいっても防御力なのだ。攻防どちらも、爆破の反動を利用する都合上移動でさえその影響を受ける。

普通のステータスを持つ者では真似できない戦闘スタイルである。

「じゃあサリーはこの後もどんどん試してよ!ゴーレムなら大丈夫みたいだし!」

「レーザーも無効化してたしね……」

話しながら、ダンジョンを進んでいく。メイプルが隣にいれば突然の死は避けられるためダンジョン内でも気を張らなくていい。

そうして二人が現れるゴーレムを斬り捨てて進むうち、太い水流が横切って邪魔をして通路が塞がれている場所へとやってくる。水流にはかなりの厚みがあり、足を踏み入れて流されてしまうとはるか下まで真っ逆さまである。

「どうするメイプル?どこかに解除できる場所があるとは思うけど」

「そうなんだ」

「うん。向こうに通路の続きが見えるし、こういう時はギミックがあるパターンが多いね」

近くに何かないものかと見渡すメイプルは、壁に三つの出っ張りがあることに気が付いて、それに軽く触れてみる。

「……!押せそうだよサリー!」

「いいね。で……どれにする?」

どの突起も触れると押し込める感覚が伝わってくる。とはいえ、これ全てを押せばいいかと言われればそれはまた違ってくるだろう。

「ど、どこかにヒントとかあったっけ?」

「今の所それらしいのはないかな……?これだけ広いし、通路のうちの一つを選んで歩いてきてるから、探したら別の通路の先にあるかもしれないね」

「確かにありそう」

「見に行ってみる?」

「うん!」

「おっけー、じゃあちょっと引き返そうか」

「端まで見て回ったら宝箱とかあるかも!」

「そうだね。私もそれは調べてないし……あったら嬉しいね」

地道な探索も時には必要なことだと、二人は来た道を引き返す。

「そういえばサリーが昔ゲームしてた時もこんな感じで引き返してたね」

「あー、正規ルート以外に宝箱とかアイテムとかありがちだし、正しそうなルートが分かったら後回しにするかなあ」

先にあるのがアイテムなら進行の都合上は行かなくてもいいのだが、探索漏れがあるというのは気になるものだ。

「もちろん先に全部調べていってもいいんだけどね」

それは目的によるとサリーは補足する。ただアイテムが欲しいのなら最短ルートを調べるべきで、探索自体を楽しみたいなら何も知らない方がいい。

「メイプルはだいたい初見攻略かな?」

「うん。アイテムとかイベントについて結構調べたのは六層の時……かな?」

「ああ……その節は……」

サリーがいない中、サリーにあげるアイテムを探そうと思うと自分で調べていく必要があったのだ。そうでなくとも、いつも先手を打ってあれこれ調べてくれるサリーがいないというのはメイプルが調べ物をする理由になる。

「色々調べてみるのもやってみると楽しかったよ!こんなイベントあるんだって、サリーがやってたのってこういうことだったんだって」

「それはよかった。気になることがあったら調べるのもいいね。そうしないと見つけられない所もあるだろうし」

「浮遊城とか絶対見つからなかったよね!見つけた人すごいなあ……」

「それに関してはメイプルも相当だと思うけど……」

その身に宿した異様なスキル群を思い起こして、いくつ妙な場所へ踏み入ったかとメイプルをじっと見る。

「えへへ、たまたまだけどね」

「その分楽しめてるなら……うん、何よりだよ」

適当に話しながら歩いているとメイプルとサリーの前に壁画らしきものが見えてくる。二人がそれに近づいていくと、先ほどの水流と思われる絵と道中に見たゴーレム達が描かれていることが分かる。

「これかな?」

「多分ね。ほら、ボタンっぽいところが赤色で強調されてる」

壁画は描かれている場面が分けられており、適切な順番で突起を押した後に水が止まっている場面で締めくくられている。

「じゃあこの順番で押せばいいのかな?」

「恐らく。それでいってみよう」

「おっけー!」

新たな情報を手に入れた二人はもう一度元の場所まで戻ってくると、見た通りに突起を押し込んでいく。すると、大きな音がして目の前を流れる水が止まり、奥へと進めるようになる。あるのは今まで水が噴き出していた大きな壁の穴だけである。

「おおー!ちゃんと止まったよサリー!」

「うん、当たりだったみたいだね」

「この穴の向こうも何かあるかな?」

「えっ?うーん……入れる?」

サリーが尋ねると、メイプルは穴の方に足を踏み入れる。

「うん!入れそうだよ!」

「なるほど?じゃあ、行ってみるのもありだね」

確かにそういったものの先に何かがあるなんていうこともよくある話だと、サリーはメイプルの後をついていく。

「こういうところって何かあったりするんじゃない?」

「うん、定番……ってほどじゃないけど。そういうことあるよ」

メイプルはこれは何かあるんじゃないかとこの後のお宝の予感に目を輝かせる。と、そうしてしばらく進んだところで、地響きのような音が聞こえてくる。

「わっ、も、モンスター!?」

「……!いや、違うこれ……っ!」

ここはもともとモンスターのねぐらではなく、水の通り道である。となれば轟音の正体は自ずと分かるというものだ。

「み、水!?」

「一瞬止まっただけだったってこと!【氷柱】【右手・糸】【超加速】!」

サリーは素早く水をせきとめるための氷柱を発生させ穴を塞ぐと、メイプルに糸を繋いで緊急避難を開始する。

高速で駆け出した後ろで、設置した氷柱が爆ぜたのを見て、サリーは目を見開く。

「メイプル【暴虐】準備して!水のダメージが読めない!」

「わ、分かった!」

【不屈の守護者】との二枚腰で最悪直撃をなんとかする準備を整えて、出口に向かって走っていくが、引きずる形になっているメイプルの避難まではギリギリ間に合わないことをサリーは理解する。

「メイプル!」

「【暴虐】!【不壊の盾】!」

その声だけでやって欲しいことが分かったメイプルは即座に【暴虐】、加えてダメージ軽減スキルを発動させる。そうしてサリーが出口から飛び出した直後、凄まじい勢いの水がメイプルを吹き飛ばし二人は通路を飛び越えて吹き飛んでいく。

貫通攻撃というより地形ダメージにあたるそれはダメージ軽減を受けてなおメイプルの外皮をゴリゴリと削っていく。庇ったサリーの分も合わせたダメージは外皮を吹き飛ばし、そのまま滝壺へと二人揃って落ちることとなった。

激しい音を立てる滝のそばで二人揃って水面に顔を出す。

「ふぅ、危なかった……でも何とかなったね」

「うぅ……ごめんねサリー、こんなことになるなんて」

「そういうこともあるって。それにこうして無事だしね」

元に戻るのも今回はショートカットしてしまってもいいだろう。一度順当にそこまで攻略しているのだから、この先の楽しみを失うことではない。

「行ってみたいところは行ったらいいよ。どこにだって付き合うからさ。それに、危なくなったら責任とってかばってもらうしね」

そう言っておかしそうに笑って見せるサリーを見て、メイプルも表情が和らいでいく。

「うん!」

さて再出発だとしたところで、メイプルはふと違和感に気づく。

「……?」

「どうかした?」

「た、盾!盾がない!飛んでっちゃったのかも!」

「えっ、水の底ってこと?」

「う、うん!多分!」

そう言ってメイプルは水に顔をつけて慌てて底を確認するが、サリーは冷静に解決策を提示する。

「装備解除とかイベントとかで無理やり外されたんじゃなくて、落としたんだったらインベントリの操作で手元に戻せると思うよ」

「あっ!そ、そっか!流石サリー!」

そういえばそんな方法もあったとメイプルがインベントリを操作すると、無事手元に漆黒の盾が戻ってくる。

「上手くいったみたいだね」

「うん、よかったー……一番底で光ってたからどうやって潜ろうかなって思ってたんだ」

「光ってた……んー?」

サリーはその言葉に少し引っかかるところがあったのかメイプルがしたのと同じように顔を水につけて水中を確認する。そう、果たして黒い盾は水中深くでも分かるほどに光るだろうか、と。

「サリー?」

「……メイプル、今も光ってる」

「……?」

「この下……多分何かある」

「ええっ!?」

「怪我の功名ってやつだね。どう?行ってみる?」

「うんうん!行く行く!」

「おっけー。じゃあ早速潜水服着て」

「はいはーい!」

思わぬ発見に、二人はこの先何が待っているか期待しながら潜水を始めるのだった。