軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と八層。

「皆、お疲れ様ー!」

レイドボス戦が終わり、ギルドホームへと引き上げた【楓の木】はイベント終了とレイドボスの撃破を祝っていた。特に今回活躍したマイとユイの二人は中心ですごかったと褒められて照れ臭そうにしている。

「八本持ってきた時は驚いたけどなあ……」

「ああ、まさかあの火力で過剰にならない相手がいるとは思わなかった」

「これから先どうなのかは分からないけどね……僕はそんなモンスターにはあんまり出会いたくないけどな」

二人と殴り合いをして生きているのはレイドボスくらいにしてほしいものである。

「っと、イベント終わって早速だけど。また近く八層の開放があるみたいだよ」

「そっか、八層だね!えっと、今回のイベントでメダルが五枚でしょ。それで八層の何かも開放されてるんだっけ?」

「うん。何かは行ってみないと分からないらしいね」

「どんなところかな?」

「私はちょっと予想付いてるけどね」

「えっ、そうなの!?」

「僕も何となくは」

サリーとカナデに教えて欲しいと聞くメイプルだが、やはりこれは実際に目にしてのお楽しみだろうとはぐらかされる。

「とはいえ一応ダンジョン攻略があるからな?」

「そうね。一応ね」

そう言ってイズとクロムはとぼけたように肩をすくめると、顔を見合わせる。

ボス。果たしてそれがどんなものであれば、マイとユイの攻撃を耐えられるというのだろうか。

こうして、八層へのダンジョンに関しては特に心配はしていないと、【楓の木】は実装を待つこととなる。

そして時間は過ぎ、八層の実装とともに八人は早速ダンジョンへと向かっていった。道中はそれは酷く、【身捧ぐ慈愛】によって守られたマイとユイが全てを叩き潰して粉々にすることであらゆるモンスターを撃破してのボス部屋到達となった。

「よしっ、じゃあ開けるよ!」

「うん。僕はいつでもいいよ」

「ええ、いつも通りバフは乗せられるだけ乗せたわ」

エフェクトでピカピカに輝いているマイとユイを見て、メイプルは扉を開ける。そこにいたのはスライムのようなゲル状の生物で、七層らしく様々なモンスターの姿に変化して戦う、カナデのテイムモンスターのようなボスだった。

人型、獣型、もっと魔物らしい魔物にも変化でき、変化先によっては空を飛ぶことや地面に潜ることもできる。ステータスもその度に変化し、持っているスキルの変化に合わせて戦闘スタイルを調整して戦わなければ隙を突かれてしまうような、できることが多く柔軟で、強力なモンスターだと言えるだろう。

「朧【高速結界】!」

「ハク【麻痺毒】!」

「ソウ【スリーピングバブル】」

「【パラライズシャウト】!」

「ネクロ【死の重み】」

入室と同時にばら撒かれる大量の状態異常スキル。様々な姿に変形するだけあって耐性があるのか、効いたのはネクロの移動速度減少効果だけだった。しかし、足が遅くなるというのは距離を取ることができないということであり、それはつまり破壊の権化であるマイとユイの接近を許すことになる。

「「【決戦仕様】【ダブルストライク】!」」

パァンと音がして、まさに変化中だったスライムはそのゲルごと弾け飛んで消滅する。それはもう一撃で、その持っていた様々なスキルを抱えたまま。

「攻撃の威力減衰くらいはありそうな見た目だったけどな……」

「無効じゃなかったのが運の尽きだね」

「いやあ、二人もメイプルに負けず劣らず尖ってきたなあ」

「流石ー!一撃!……十六撃?」

「やりました!」

「えっと……支援と状態異常ありがとうございます」

「これだけすっと倒してくれるのなら清々しいな。少し、ボスは不憫だったが……」

「とはいえ当たらなかったら無意味だしな。移動速度減少が効いたボスが甘かったか……」

「きっと、他の人達に力を発揮するわよ」

喜んでハイタッチをしているメイプルとユイとマイを見つつ、カスミ、クロム、イズは無残にも爆散したボスに想いを馳せる。

「あ!そうだそうだ。八層!皆行こう!」

「「はいっ!」」

先頭を歩き出した三人に残りの五人もすぐに追いついて、全員で並んで八層へと突入する。

「わぁ……!」

「どうカナデ予想通りだった?」

「うーん、ここまでとは思ってなかったかな?」

「うん、私も。これは探索に骨が折れそうだなあ」

八人の前に広がっていたのは一面の海。そして、かつて人が住んでいたのであろう水没した建物の屋根に、次の建物が建てられることを繰り返している街並みである。

「ほー、これはまたすげえ層だな。泳ぎはちょっと厳しいぞ」

「いや。かなり深いんじゃないだろうか……?何か補助アイテムがあると期待したいが」

「うーん、第八回イベントの限定モンスターの素材で水中探索を強化するものを作ることができたけれど、このためだったのかしら?」

ある程度泳ぐことができる、または水泳のスキルを取得しレベルを上げられる面々は面白そうだと受け止めているが、一通り景色を見て楽しんだ先頭三人、メイプル、マイ、ユイはどうしようかとあわあわし始める。

それもそのはず、三人はステータスの都合上どうあがいても【水泳】や【潜水】のスキルを取得することができないのだ。

「ど、どどどどうしよう!?」

「どうしましょう!?」

「うん……このままだと……ずっとこのちょっとずつ水面から出ている建物だけで……」

まともに探索などできないのではないかと、危惧する三人の方をポンと叩いてサリーは落ち着くように言う。

「大丈夫大丈夫!【水泳】とかは取ってない人も多いスキルだし、ここでいきなりそれがないとダメってことにはならないと思うよ。もちろん、あったら有利だと思うけどね」

何か救済策があるだろうと踏んでいるのだ。それを聞いて、メイプル達も落ち着いて一旦素直にこの層を楽しむことに決めた。何があるかはこれから探していくのだ、まだまだ八層には入ったばかり。何も知らないうちから判断。することはできないのである。

「よーし!今回もいっぱい見て回るぞー!」

そう言ってメイプルは勢いよく拳を突き上げる。八層は水没都市。海上に転々と突き出た建物と、遥か水中、深海に眠るかつての街を探索することになるのだった。