軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と試練6。

天使を撃破した二人は新たな変化がないかを待っていた。連戦とはいえ、ここまで順調に進んできている二人はまだ多くのリソースを残している。大ボスを撃破する際に使用したスキルは主にサリーの連撃スキルなため、メイプルの回数に限りのあるスキルは温存できている。

「これならまだまだ勝てそうだね!」

「うん。傾向からすると次は六……」

そこまで口にしてサッとサリーの顔色が悪くなる。ここまでの法則からすると次が何層なのかは、サリーにも察せられたからだ。

その予想が正しいことを裏付けるように、通路からは、ボスであろうボロボロの王冠を被り、元は豪華だっただろう服を着たスケルトンと、それに率いられるように大量のアンデッドが現れる。

「あ、あっあああのさ」

「一旦退却!玉座出しっぱなしだし!」

先程までの頼もしさは何処へやら、産まれたての子鹿のようになったサリーの手を引いて転移の魔法陣のある通路へと避難していく。

「ひ、【氷柱】!」

サリーは氷の柱を並べて設置し、一時的に通路を封鎖すると、玉座に座ったメイプルに張り付いてぐったりとする。

「通路だとシロップも狭くて【巨大化】できないし……【捕食者】は使えないし、死んでるから毒には強そうだし……」

やはりここは通路の奥に陣取っているという利点を生かして、【機械神】の兵器によって攻撃するしかないとメイプルは結論づける。

【氷柱】によって堰き止められているため、時間が経ってそれが消えれば全てのアンデッドが雪崩れ込んでくるだろう。

「シロップ【赤の花園】【沈む大地】!」

メイプルの射撃では即殺とはいかないだろう。となれば、自分達の元へ到達するまでの時間を少しでも稼がなければならない。メイプルはシロップのスキルで与えるダメージを伸ばすと、地面を変化させて容易に近づけないようにする。

「サリーは適当にスキル撃ってみて!今回は真っ直ぐ撃てばいいから多分当たるはず!」

「うん……」

サリーはぐしゃぐしゃにマフラーを巻きつけて、メイプルにもたれるように座ると、目を閉じたまま広間の方に向き直る。

少しして【氷柱】が消滅し、うめき声とともにアンデッドがなだれ込んでくる。ボスは最奥でアンデッド達にバフをかけているようで、とりあえずこの死者の壁を突破しなければならない。

「【攻撃開始】!」

メイプルの兵器が火を吹いて、アンデッド達を前から順に吹き飛ばしていく。それでも一撃とはいかず、まさに死体を乗り越えるようにして、【沈む大地】に足を取られながらも近づいてくる。

「【サイクロンカッター】【ファイアボール】!」

サリーも適当に魔法を放つが、最低限習得しているだけといったそれらはないよりましといった所だろう。

「むぅ、近づかれてるなあ」

「そ、そうなの!?」

「シロップ【大自然】!」

シロップのスキルで巨大な蔓を発生させ、その質量でアンデッドを吹き飛ばしていく。数が多いこともあってか、今回のアンデッド達は魔法でしかダメージが与えられないというような厄介な性質を持っておらず、着実に撃破はできている。

「【激流】!て、てて【鉄砲水】!」

サリーも大量の水を発生させてシロップの蔓と合わせてアンデッド達を押し流す。このまま接近を許し、摑みかかられでもすればダメージは無くとも再起不能になってしまう。

「ううん、やっぱりちょっとダメージ不足かも」

さてどうしたものかと考えたメイプルはサリーにもまだ戦う方法があることを思い出す。

「あっ、そうだ!これならサリーもダメージを出せるはず!」

「えっ!?な、ななな何!?」

どうあっても立ち上がれそうにないサリーにメイプルは作戦を伝える。普段なら逆だが、こういう状況ではサリーの思考力は落ちてしまっているため、何か思いつく余裕がないのだ。

「わ、分かった。朧【影分身】っ!」

スキルを発動させると、そこにはサリーの分身が現れる。サリーの意思で操作することができないため、【身捧ぐ慈愛】の弱点を利用されないよう常に出すというわけにもいかないものだが、今回はそのサリーの意思を反映しないという点が重要だった。

サリーの見た目を模倣しただけの分身四体は軽い足取りでアンデッド達に飛びかかって攻撃を始めたのである。

「おおー、サリーがお化けと戦ってる……」

本人がどうなろうと、一定の性能を持って攻撃を続ける分身は、普段なら低い耐久力を突かれてしまうか、遠くまで走っていきすぎて守りきれないものだが、今は溢れかえるアンデッドにより【身捧ぐ慈愛】の範囲内で強制的に足を止めさせられており、メイプルがいる限り無敵の兵である。

「頑張れー!」

四人のサリーは着実にアンデッドを倒していく。攻撃できさえすれば有象無象のアンデッドなど恐るるに足らない。

「出てくる数が決まってるなら全部倒しちゃうんだけど……どうかな?」

メイプルは一旦銃弾を節約して、サリーの分身に撃破を任せる。サリー本人は【氷柱】と【鉄砲水】と【激流】を使えるようになる度に使ってひたすらアンデッドの足止めをする。

実際【水操術】によってサリーの拒否能力はかなり高くなっている。上手く使えば自身の加速にも使えるこのスキルは、目を閉じて撃ってもある程度有効なほど効果範囲が広い。

「ど、どうメイプル?」

「いい感じ!このまま行けー!」

メイプルが応援する中、分身は時間をかけてその数倍の数のアンデッドを撃破し、ようやくメイプル達の視界が開けた。

分身はそのままボスに向かって走っていき、【身捧ぐ慈愛】の範囲から外れると、ボスに接近したところで、放たれた黒い炎に焼かれて一瞬で消えていった。

「あー!近くにいてくれたら守れるのに……でもありがとー!サリー大活躍だったよ」

「複雑だなあ……あとはボスだけ?」

「うん!今のところ追加でモンスターが出てくる感じもないみたい」

ボスはというと【天王の玉座】が広間全てをカバーしているためか、特にこれといった大技が使えず、二人を射程内に捉えるためにじりじりと近寄ってきていた。

「ボスも近づいてきてくれてるし、こっちまできてくれれば戦えるんだけど……」

メイプルとしても迂闊に玉座から立ち上がるわけにはいかない。立ち上がった隙に使われるスキルにアンデッドの大量召喚があれば全てが台無しになってしまうからだ。

となると一旦銃撃もやめて、近づいてくるボスをただ待つのが最善手となる。

分身に反応して攻撃したのがかなり近くだったため、少なくとも通路には入ってきてくれると踏んだのである。

メイプルの予想は当たり、カタカタとその骨を鳴らしながら、数歩行けば届くような距離までボスはやってくる。ここまでくれば【沈む大地】によって移動は阻害される。

「いる?いる?」

「うん、すぐそこまできた」

「は、早く倒そうすぐ倒そう!【氷柱】!」

サリーは【氷柱】をボスの背後に作り、ボスの退路を断つ。ここで遂にメイプルは兵器を展開した。

「これなら邪魔されずに当たるね!」

「こっちくる前に倒して……」

「もちろん!【攻撃開始】!」

メイプルの銃弾が次々にボスの体を穿ち、サリーがデタラメにはなった魔法がどこか彼方へ飛んでいく中、ボスのHPはなくなって、その死んだ体を今度こそ消滅させるのだった。

スキル【魔の頂点】を取得しました。

ボスが倒れると同時にそんなアナウンスが聞こえ、しばらく待っても次のモンスターが出てこなくなる。

「終わりっぽい?」

「お、終わり!?名誉挽回のチャンスが……」

連携がどうだなどと言って誘っておいて最後がこれではあまりに格好がつかない。

サリーは顔に巻いたマフラーを外しながら、上手く言葉がまとまらないといった様子で、ボスのいた場所とメイプルの顔を交互に見る。

「でもサリー活躍してたよ?最後もすごい助かったし」

「もっとビシッと決めたいところだったんだけどなあ……」

「でも、補い合うプレーって感じがした!」

二人は今回ここに連携力を試しに来たのもある。そういう意味では今回の戦いは全てメイプルが苦手な部分をサリーが、その逆をメイプルが受け持つことで上手く攻略しきったと言っていいだろう。

「まあそれもそうか……どう?相棒として私は合格?」

そう言って語りかけるサリーに、メイプルは満面の笑みでサムズアップして返す。

「もっちろん!鬼の時とかすごすぎてこっちこそ合格か聞きたいくらい!」

「ふふっ、もしメイプルが不合格だったら相棒になれる人いないよ?」

「ええー?そうかな」

「うん。……ほら、メイプルもそれくらい強いってこと!」

「えへへ、あっ!そういえばスキルも手に入ったんだよね」

「今回は二人とも手に入ってるね。えーっと……」

【魔の頂点】

召喚したモンスターのステータスを1.5倍にする。

そこには短い記述でただ単純に強力な内容が書かれていた。

「七層らしい……パッシブだから本当に取り得だね」

「やった!シロップもっと強くなるんだね!」

「というか記述的にテイムモンスターだけってわけじゃなさそうだし。自分が出してるなら【捕食者】とかでもいいんじゃない?あれも攻撃力あるし」

「そっか!皆強くなるねー」

「私も使えなくはないけど、朧の【影分身】は駄目そうだしなあ」

「サリーが出してるんじゃないもんね」

「そういうこと。でもまあ何か考えてみようかな。それじゃあ、戻ろっか」

「うん!」

こうして二人はダンジョンを後にするのだった。