軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と雷。

浮遊城の攻略に結構な時間がかかったため、その日はそのまま解散となり、残りの層の観光はまた日を改めてということになった。

メイプルは次にまとまって時間が取れる日までにいくつか観光場所の情報を得ておくことにした。というのも、目的地を目指して探索するのも目的なく偶然面白い場所に行き着くまで探索するのも楽しいため、当日どちらも楽しめるようにしたかったのである。

そんなメイプルは、今日は十分情報も探したため、五層の中でも高い場所に位置する雲の上で白いワンピースを着て日光浴とばかりに寝転がっていた。

わざわざここまで高い場所まで来なくともレベル上げや素材集めはできるため、人はおらず穴場と言える場所となっている。

「浮遊城楽しかったなー」

次のことを考えつつもあの雲の上の景色を思い出して余韻に浸る。浮遊城の塔の上には及ばずとも十分高い位置にいるため、フィールドの様子が遠くまで見通せる。

「あれ?あんなとこに雷エリアってあったっけ?」

普段からのんびり景色を見ていることが多いのもあって、ちょっとした違和感に気づくこともある訳だ。メイプルは額に手を当てて目を細めて遠くに一瞬見えた雷が見間違いだったのか確かめようとする。

「気のせいじゃないと思うんだけど……よし!行ってみよう!」

今も特にこれといって何かをしていたわけでもなし、メイプルは雷光の見えた辺りまで行ってみることにしたのだった。

「この辺だったと思うんだけど……」

メイプルはキョロキョロと辺りを見渡す。周りは高い雲の壁ばかりで、降りてきて同じ高さから見ると雷がどこで起こっているか目視することは難しい。

シロップで飛んで探そうかと考えていると、空気を震わせる轟音が鳴り響く。それは間違いなく落雷の音だった。

「あっちだ!」

メイプルは時々鳴る音を頼りにどこからの雷鳴かを探して歩き回る。メイプルの飛行能力は一般的なものではないため、空から探していては逆にイベントやダンジョンへの侵入ルートを見逃す可能性があるのだ。

「うん、やっぱりこの辺りで雷は見たことないし何かあるはず!」

メイプルはそうやって歩いてある程度近くまでやってきて、次の音を待つ。

「んんー、音が聞こえないと分かんないや……わっ!?」

メイプルが少し休憩しようともたれた雲の壁。それはメイプルを支えずにそのままするっと壁の向こうに飲み込んでしまう。浮遊城への入口がそうだったようにここも見えない入口となっていたのである。

メイプルはゴロゴロと雲の坂道を転がり落ちていき、出口側の雲の壁を突き破って頭から転がり出る。顔から地面に着地して、どうなったのかと顔を上げると、驚いた様子で目を丸くしている女性プレイヤーと目があった。

「だ、大丈夫っす……ですか?」

「……?あはは、ごめんなさい。大丈夫です!」

メイプルはワンピースを整えると目が回っているのを治そうと、少し目を閉じて落ち着き改めて目の前の女性プレイヤーを見る。後ろで団子にしてまとめた金の髪と赤い目、メイプルと同じように観光目的なのか白のブラウスにロングスカートで日傘を持っており、武器らしきものは装備していないようだった。いかにもお嬢様っぽいその見た目にメイプルは反射的にピンと背筋を伸ばして質問する。

「こっちの方で雷の音が聞こえて、いつもこの辺りは静かだったのでレアイベントかと思ったんですけど……」

メイプルがそう言うと、女性プレイヤーはメイプルの様子を見て、一つ息を吐いて笑顔で返答する。

「んんっ……なるほど。そうだったんですね。ここには特にそういったものはないっ……ですね。私が言うのもおかしいかもしれませんが、何も装備しなくても大丈夫なのでしょうか?」

もしも目的としていたようなイベントがあって、そこにモンスターがいたとしたら危険なのではないかと言う訳である。

「大丈夫です!これでも防御極振りで防御には自信ありますから!」

「……それって」

何か思うところがある様子の女性をよそにメイプルは改めて辺りを見渡すものの、言われた通りここには特に何もないようだった。

「むぅ、ここじゃなかったのかなあ」

「えっと、私はここによく来ますから断言できます。その雷はレアイベント等ではないですよ」

「えっ!?そうなんですか!」

「ええ、まあ。信じるか信じないかはお任せするっ……しますけど」

「分かりました。信じます!」

「ほ、本当ですか?」

「はい!」

メイプルの言葉には嘘はなく、女性は少し驚いたようにメイプルの方を見る。

「……そうだ。ここで会ったのも何かの縁、少しお話ししませんか?」

「……?はい!もちろんです!」

「ならこんな所にいても仕方ないので、行きましょうメイプルさん?」

「はい!ってええ!?」

どうして名乗ってもないのに分かったのかと、驚くメイプルに対し、女性は面白そうに微笑むのだった。

「その反応を見ると当たりみたいですね」

「えっ?あ、ああ!?そっかあ……びっくりしたあ」

心を読まれただとか、変なスキルだとかそういったものでなく、単純に予想されただけだと分かってメイプルはそうだと肯定する。

「普段と見た目が違いますけど、ちゃんと見れば面影はありますから」

髪型や服装、目の色などを変えても身長やその人の雰囲気までは変わらない。そこに防御極振りという情報が入れば第四回イベントの振り返りを見たプレイヤーなら答えも見えてくるというわけだ。

「観光スポット巡りをしていたので、えっと……」

「ん?あ、私はベルベット」

「ベルベットさんですね!ベルベットさんも観光ですか?」

同じように武器を持たず、鎧や盾など防具らしきものも身につけていない。同じような目的でフィールドにいるのかもしれない。

「まあ、そんなところです。この後は友人と合流してレベル上げの予定だったのですが、大盾の人が予定が入ってしまって」

「なるほど」

「よければ、ご一緒お願いできませんか?」

話したいことの一つはこれだったようで、ベルベットはメイプルの返事を待っている。

「はい!大丈夫です!」

この後優先したい予定があるわけでもなし、新しい交友関係の期待に胸を膨らませつつ、メイプルは大きく頷く。

「決まりっ……ですね。では、七層で待ち合わせなので」

「分かりました!」

こうして急遽レベル上げを助けることになったメイプルはベルベットについて七層へと向かうのだった。