軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と浮遊城2。

転移の光が消えて二人がぱっと目を開けると、そこには五層には存在しなかった、深い緑の葉をつけた木々が並んでいた。よく見る光景だとしても、ここが五層なら新鮮に見えるというものである。

「おおー!写真写真!」

「ここからの情報は見てないから、手探りになるよ……ってメイプル!」

サリーがメイプルの方を向くと、写真を撮る際の角度調整で後ろに下がっていくメイプルが見えた。そしてここが浮遊城で、転移先が端ならば後ろにあるのは空だけである。

「ふぇ?わわっ!」

「っと!もー気をつけてね。多分、落下したらダメージとかそういう次元の話じゃないし」

すんでのところでサリーに抱き寄せられて、後ろの崖から落ちるのは回避する。いくらメイプルの防御力が高くとも、即死と設定されている場所に落ちれば意味はない。

「助かったよー……ここが端っこだったんだね」

「うん。城だけじゃなくて周りの地形ごとダンジョンみたい」

改めて二人が周りを見渡すと、後ろは崖でどこまでも続く雲海が広がっており、目の前には森と、切り立ちこちらも崖のようになっている山肌から突き出るようにして城が建てられているのが見えた。

「山を利用して建てられた城とその周りの森か……結構大変な道程になるかも。シロップで飛んでいく?」

シロップで空を飛んでいけば途中のギミックを無視できる可能性は高い。しかしサリーのその提案にメイプルは暫く考えてから首を横に振った。

「んー……今回は無しで!」

「そう?」

「うん!やっぱり真正面から攻略した方が達成感あるし!」

「なるほどね」

「それに、せっかくずっと前からいつか行こうって約束してたのに、すぐ終わっちゃったらもったいないし!」

「おっけー。じゃあ地道に真っ直ぐ、浮遊城最奥まで行こう!」

「おー!」

こうして二人は、山の頂上にちらりと見える城に向かって一歩を踏み出すのだった。

二人が森へ踏み入ってすぐ、遠くに見える城の方から大きな咆哮が響き渡る。

「っ!」

「【捕食者】!」

サリーは武器を、メイプルは化物を呼び出してそれぞれ迎撃の構えを取る。

直後、木々の影から小さな翼を持ったトカゲが次々と飛び出してきて二人に炎のブレスを吹きかけてくる。

「大丈夫っ!」

メイプルはまだ【身捧ぐ慈愛】を展開中であり、サリーが無理に回避する必要もない。どうやら浮遊城最初の雑魚モンスターだったようで、炎はメイプルになんら効果はなく、それを見て安心して攻撃に移れるようになったサリーに次々と斬り捨てられていく。

「わわっ、結構動き速いね!」

素早く動き回るトカゲは【捕食者】の口をするすると躱してしまい、こちらも有効とはいかなかった。

「サリー、任せるよー」

「うん!【身捧ぐ慈愛】だけでも助かる!」

メイプルがいると数を武器にするタイプのモンスターの良さはなくなってしまう。結局トカゲ達は火を吐く以上の大技を持っておらず、何もできずに一体残らず倒されたのだった。

「お疲れサリー!」

「ん、まあ小手調べって感じだったね」

そう言いつつサリーは木々の隙間から確認できる遠くの城をじっと見つめる。

「さっきの咆哮……今のトカゲのものじゃないし……」

「やっぱりボスかな?」

「かもね。また、竜退治になるかもよ?」

メイプルとサリーも今までに何度か竜と呼べるようなモンスターと戦っている。やはり、力強い咆哮からはその姿が思い起こされるのだ。

「やっぱり強いかなあ……」

「まあ、ボスは結構強いだろうね。でも、だからこそいいんだよ!」

「えへへ、サリーの気持ちもなんとなく分かるようになってきたかも!腕がなるってやつだよね!」

「そうそう」

とはいえ、目的のボスがいると思われる城まではまだまだ遠い。こんな所でいつまでもいては日が暮れてしまうというものである。

「よしっ、まずは森を抜けないと!」

「もう森歩きも慣れてきたでしょ?」

「うんっ!」

【身捧ぐ慈愛】により奇襲対策も万全なため、周りを観察して楽しむ余裕もできてくる。よくよく見るとモンスターではない小動物が駆け回っていたり、木の根元にカラフルなキノコが生えていたりして、メイプルはそれら一つ一つに目を輝かせる。

「いつも新鮮そうに楽しんでるの、いいな」

少し笑みをこぼしつつ、サリーは周りにモンスターがいないことを確認してメイプルに話しかける。

「そうかな?」

「うん、私は戦闘とかスキルのことばかり考えちゃうからさ」

「まだまだ初心者ですから!」

「えー?もう結構やってると思うけど」

「サリーと比べたらまだまだだよー」

比較対象がサリーならメイプルの言うことももっともである。

「なら、上級者としてちゃんと頑張らないとね」

「頼りにしてるよ!」

「じゃあ、早速戦闘といきますか!」

サリーがそう言った直後、茂みから二人の身の丈以上の大蛇が這いずり出てくる。いち早く気配を察知したサリーは素早い噛みつきを真横に交わして頭部から胴体にかけてを斬りつける。

「よーしっ、【挑発】!」

スキルに反応して大蛇がぐんと向きを変えてメイプルの方に向かう。大蛇がしてきそうな攻撃はメイプルにも予想がついていた。毒攻撃や麻痺攻撃なら問題なし、巻きつきや噛みつきなら大盾を構えておくだけでいいのだ。

「【悪食】でー、とうっ!」

飛びかかってきた蛇の頭を大盾でしっかり受け止めると蛇の体は飲み込まれ、あっという間に消失した。

「おっけー!上手くいった!」

「ナイス!うん、モンスターの動きにも慣れてきてると思うよ」

「へへー、結構いろんな種類と戦ってきたからねっ」

「やっぱり初心者は卒業かな?」

「あはは、気が早いよー」

二人は和やかに会話しつつ、しかしモンスターの群れを全て蹴散らして、無傷のまま城の建てられた山の麓までたどり着いたのだった。