軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と大決戦。

しばらくして、モンスターが雪崩れ込んでくるようになり、空いた時間を使って、ミィやペインもスクリーン元までやってきて増えていくモンスターを確認する。

「これは……洞窟内の方が危険かもしれないな」

「ああ、私もそう思う。それに、最後のモンスター強化時間に大きな変化があるかもしれない」

「今ですら、結構な人数を割かないといけなくなってきてるからね」

二日目ではミィとペインの大技で一気に片付けることができていたのに対し、今はそこにバフや妨害、纏まってやってくるモンスターの寸断など、協力しより丁寧に戦闘を進めなければならなくなっていた。

サリーも危惧していたように、二人もこの中で物量によって押し切られることを恐れていた。

「幸い俺達は緊急退避の術をいくつかもっている。様子を見て、外へ出てしまうこともアリだろう」

イグニス、レイ、シロップは空を飛ぶことができる。もちろんゲートから生み出されているモンスターには空を飛べるものもいるが、対処しなければならない数はぐっと少なくなる。

「サリー、皆で相談してみようよ。生き残るためには十六人でいた方が絶対いいし!」

「そうだね。そうしようか」

全員で集まって今後について相談した結果、メイプル達十六人は、次の襲撃を乗り切ったところで外へ出ることにした。

向かう先は、マップ中央あたりにある山である。山頂付近まで行ってしまえば、上がってくるモンスターがいても見やすく、避難も容易である。

「じゃあ次は全員でさっと倒して急いで外に向かいます!」

メイプルは最後にそう言うと、次の襲撃を待つ。襲撃には一定の間隔があるため、今のうちにイズは居住スペースを構築していたアイテムの回収を行っていた。そうして洞窟が元の何もない空間に戻ったところで、待っていた襲撃がやってくる。

しかし、まだ危惧するだけの物量に至れていないモンスターの群れではこの十六人を傷つけることはできず、完全に殲滅されてしまう。

「今だね!」

「うん、出るよ!」

移動の速いものから順に先頭を行き、極振りの三人はツキミとユキミの助けを借りて急いで脱出する。

そうして外へ出ると【集う聖剣】はレイ、【炎帝ノ国】はイグニス、【楓の木】はシロップで纏まって移動する。

本来飛ぶものではないシロップの移動速度はどうやっても速くはならないため、レイやイグニスとは違い空を飛ぶモンスターの接近を回避することはできない。

しかし、メイプルが乗っている限り防御貫通を持たないモンスターは群がってきても問題なく対処できる。

近づくことはできても、傷をつけることはできない。それに対処しながら飛んでいくと、先に山頂にたどり着いた八人が見えてくる。

「じゃあモンスター倒して降りちゃおう!」

メイプルは装備を変更し、【ポルターガイスト】を発動させると兵器から伸びたレーザーを操り一体一体的確に焼いていく。

残りのメンバーもそれを手伝って、モンスターを倒しきったところで山頂にシロップを降ろす。

「ふぅ、後はここで生き残るだけだね!」

「うん。ここなら何か異変が起こったとしてもすぐ分かるし、対応もしやすいね」

薄暗いとはいえ、様々な地形が広がっている様子が分かる。何か異様なものが見えれば、すぐに反応できるだけの開けた視界があった。

「私は少し周りにアイテムを設置してくるわ。無抵抗でそばまで来させるわけにはいかないものね」

「なら俺が護衛でついていこう」

「私も行こう。それなら囲まれても問題ないはずだ」

「助かるな。頼む」

クロムとカスミがイズの護衛について迎撃用アイテムを設置しに向かう。マルクスもそれについていって、迎撃準備も整えていく。

道が細くなっている場所や、不安定な場所には大量のトラップを仕掛けておくという訳だ。

これで地面を歩いて迫ってくる第一陣は順に坂を転がり落ちていくことになるだろう。

そうして、準備をするメンバーがいる一方で、迫るモンスター強化時間に向けて、残りのメンバーは三百六十度異変がないか様子を見ている。

「異常なーし!……?サリーどうかした?」

「ん、いや、マップ開いてみて」

サリーに言われた通りにマップを開くと、プレイヤーの表示が減っているのと、特殊モンスターを表す赤い点が増えていることがわかった。

「やっぱり皆逃げ回っているからかな。赤い点は減ってない」

「生き残らないとダメだもんね」

「うん、私達も倒しには行けてないし。でも……何だか嫌な感じがする」

わざわざ特殊モンスターとしてマップに映っているものを放置していてもいいのか。サリーの中に疑念が浮かぶものの、確信となる情報はない。

「今は待つしかないか」

「大丈夫!何かあった時は私が守るから!」

メイプルがそう言ってぐっと盾を突き上げる。

「ふふっ、ありがとう。頼もしいね」

山頂に来た以上、基本となる戦略は洞窟の時と同じ、有利な場所での迎撃である。

こちらから手を出しづらい特殊モンスターについて今考えても仕方がないとサリーは結論を出し、メイプルと共に飛んでくるモンスターの迎撃に専念するのだった。

視界が開けているというのは大きなアドバンテージであり、モンスターを先に察知することができれば対応も取りやすい。

そうして無事に生存を続けた十六人は、最後のモンスター強化時間を迎える時が来た。

時間は一時間。今までのそれよりかなり短い時間はプレイヤー達に安心より不安を感じさせる。

何かがあるだろうと。そして、それは的中した。

強化時間に入った瞬間、マップのあちこちから紫の炎が空に向かって噴き上がる。サリーはすぐさまマップを確認し、それが特殊モンスターがいる位置と完全に一致していることに気づく。

その数は数十に及び、場所もばらけている。

炎は一点に集まっていき、巨大なゲートを生み出すと、そこからメイプル達には見覚えのあるモンスターが現れた。

「サリー!あれ私達が倒したのに似てない!?」

「サイズは比べ物にならないけどね!」

いくつもの腕を持ち、翼から炎を散らすそれは二日目の夜に攻略した繭から生まれたボスとよく似ていた。違う点は完成しきったとでもいうような太くなった手や体。そして山頂からでも炎を纏ったその姿が見えるほどの圧倒的な巨体である。

「五十……いや、百はあるか?」

「ちょっと本物より強そうになってるんだけどー?」

ミィとフレデリカも似て非なるその姿に反応する。体がゲートから完全に抜け出ると、腕を大きく広げ、ビリビリと空気が震えるような咆哮をあげた。

それと同時に、その巨体は紫の炎に包まれて様子が変わる。

「何か来る……っ、上!」

「うぇっ何あれ!?」

星一つない空からは巨大な紫の火球が、流星群かのように降ってくるのが見えた。

それはプレイヤーのいる場所に落ちるようにできているようで山頂に向かっても降ってくる。

「メイプル!」

「あっ、うん!」

あれが二日目に会ったボスと同じならメイプルの防御では無効化できないダメージを発生させる。

サリーとの意思の疎通は完璧で、メイプルはすぐにサリーの考えを理解して、装備を変更する。

「【ヒール】!」

サリーの回復を受け、大天使装備を身につけたメイプルは迫る火球をしっかりと見据える。

「【イージス】!」

火球が直撃する直前に展開された光のドームはダメージを完全に無効化して、降り注ぐ火球の雨からメイプル達を守り切る。

「アース!【大地制御】!」

それでも燃え盛る地面は【イージス】の効果が切れる前にドラグが対処した。燃え盛るものとして変更された地面を元に戻すことで、炎は全て無力化された。

「ナイスメイプル!」

「うん!でも……」

次がすぐに飛んできたとしたら同じ手は使えない。山頂からは炎の雨が眼下のフィールドも燃やしているがよく見えた。今の攻撃だけでもかなりのプレイヤーがマップから消えているのが分かる。そして、悪いことに、特殊モンスターからまた炎の柱が噴き上がり、プレイヤーを求めてドスドスと歩き回る巨大な悪魔に炎が充填されていく。

「ペイン、メイプル。このままあと一時間は持たない。危険を承知で特殊モンスターを狩りに行くべきだ」

「う、うんそうだよね!」

「それだけじゃない。恐らくこの一時間。逃げているだけでは生存は難しくなっているはずだ。恐らくあの巨大なモンスターの撃破が必要になる」

巨大な悪魔にはHPバーの表示があり、メイプルがかつて第二回イベントで追い回されたカタツムリなどとは違い、倒すことができるものであることが示されていた。

「可能性はある、か。ともあれまずは素早くフィールドを回って特殊モンスターを倒しきるしかない。マルクス、ミザリー、シン!」

ミィは三人を呼ぶとイグニスに乗り込む。同じように、ペインもドレッド達を集めレイに乗り込む。まとまっていてはプレイヤーごとに狙いを定めて落ちてくる火球に次々に焼かれてしまうのもあり、ここで一旦分かれて、大量にいる特殊モンスターを倒しに向かうことにした。

「俺達も行く。機動力に優れる者が素早く倒すのがベストだ」

「生きてまたあの巨大な悪魔の元で会うとしよう!」

そうして八人は分かれてモンスターの撃破に向かう。メイプル達もやるべきことをやらなければならない。

「ど、どうするサリー!?」

「私達の移動速度だとモンスターだらけの地上を倒して回るのは厳しい。でも、シロップの速度じゃ遅すぎる……ならできるのはあの巨大ボスに他のプレイヤーを倒させないこと」

炎が落ちる度にプレイヤーの数自体が減ってしまう。それは特殊モンスターの撃破を遅れさせることになる。であれば、ボスを怯ませたりなどしてそれを少しでも遅らせることも有効である。

「ほら、私達は駆け回るよりボス戦の方が得意だから」

「ああ、いいんじゃないか。アイツを倒していいとこ持ってくってのも」

「逃げ回っていても仕方ないなら、いっそ全力で立ち向かうのも一つの手か」

やるならば全力で、メイプルは一つ強く頷くと全員でシロップに乗って巨大な悪魔の元まで飛んでいくのだった。