軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と合流5。

「んー、困ったことになったなぁ」

「ああ、まさか魔法陣の規模があれ程大きいとはな」

そうやって言葉を交わしているのはシンとカスミだった。カスミは近くに【楓の木】のメンバーがいないか探すためにハクを【超巨大化】させて移動していたため、見る人が見ればすぐにカスミだと分かる。そこに【楓の木】のメンバーではなくシンがやってきたというわけである。

そして、そんな二人のいる森一体を包み込むように風が巻き起こって、内部にいるプレイヤーを無差別にダンジョンに転移させたのだった。

二人にも先程メダル獲得の通知が来たばかりである。こんなことが起こったためか二人にもそれがどういう経緯で獲得に至ったのかを何となく察することができた。

「どうして発動したかは知らないが、せめてもの救いとしてハクを動かせるスペースはあるかぁ」

「そうだな。ただ……かすかに悲鳴も聞こえる。注意しておいた方がいいだろう」

カスミはハクにいつでもかばってもらえるようにその巨体を隣に置きつつ森の中を進む。森はフィールドと同じように薄暗く、いつ何がでてもおかしくないような不気味さがあった。悲鳴だけが時折聞こえるだけだったその森で、急に地響きが聞こえ、二人は身構える。

「……!カスミ!」

「ああ、来るぞ!【心眼】!」

カスミはスキルを使い、敵の攻撃を予測する。そこで見えたのは、視界全てがダメージ範囲として赤く表示される光景だった。

「シン!こっちだ!」

「お、おう!」

退避は間に合わないと悟ったカスミは即座にハクに二人を中心にしてとぐろを巻かせて鱗を硬質化させる。

その直後、硬いもの同士がぶつかる大きな音が響き、二人は上を見る。そこからは、ハクに弾かれて軌道が変わった大ムカデがハクの上をするりと抜けていくのが見えた。そして再び地響きがしてカスミの視界にダメージ範囲が映らなくなったところで二人は肩の力を抜く。

「うげぇ、甲殻も固そうだったぞ。あんなもん、なんとかできるのか?」

「悲鳴を聞くに恐らく他のプレイヤーも飛ばされてきている。そもそもが一人や二人で倒すものでもないのだろう」

「だよなぁ、面倒なことになったなぁ」

「だが、倒さないことにはどうにもならないだろう。ここにずっといる訳にもいかない」

「だな。よし、ムカデ退治といくか!ウェン【覚醒】【崩剣】!」

エフェクトとともにシンの剣が分裂し空中に漂う、その量は第四回イベントでカスミが見た時よりもさらに増えており、これを自在に操作できるのであれば相当なものになることが分かる。

「また増えたな?」

「ああ、ウェンも手数重視だからな。そっちのサリーなんかは俺と相性悪いかもな」

「サリーなら、涼しい顔で避けるかもしれないが……」

「まぁ、ありえるなぁ。でもいつか戦ってみたい」

「ギルドホームに来るといいさ、特にフレデリカはよく来ている」

「アリかもな、サリーに当てられれば超一流だろ!っと、そろそろやるか!」

「ああ、そうしよう」

カスミはハクの防御を解くと、両脇に【武者の腕】を呼び出して、戦闘体勢をとる。そうしているとまた視界がダメージ範囲に覆われる。

「正面から来るぞ!」

「オーケー、ウェン【風神】!」

カスミの合図に合わせてシンが風の刃と【崩剣】を放つ、それは飛び出してきた大ムカデの頭部から胴体を斬り裂いていくが、それでも動きは止まらない。

「ちっ、中々硬いな!」

「ハク!」

もう一度潜らせはしないと、横からハクを突撃させ、そのまま噛みつき締め上げる。その隙にカスミは、大ムカデの動体に飛び乗ってスッと刀を構える。

「【二の太刀・斬鉄】!」

一気に振り下ろされた刀が大ムカデの防御を貫通し、甲殻を割いてその体を深く傷つける。手応えは十分で、そのままハクが体を締め上げ、一気に頭から胴体辺りまでを噛みちぎった。

「おいおい、すごいパワーだなその蛇」

「ふふ、自慢の相棒でな」

しかし、カスミが大ムカデから降りてシンの元まで行こうとした時、背後で千切れた体と頭がぐねぐねと動き出し、ハクの拘束を抜けて両方地面に潜っていってしまう。

「やけに早く死んだとおもったけど、こっから本番ってことか?」

「恐らく。【心眼】の効果も切れた。シン、警戒を怠るな」

そうして二人が地響きに注意していると、また大ムカデが近づいてくる気配がした。その予感は的中し、二体のムカデが飛び出してくる。違っている点は少しサイズが小さくなっていることくらいで、全身きっちり再生した状態で二人に飛びかかってきた。

「カスミ!」

「ああ!」

必要以上に言葉を交わさずとも、二人はそれぞれ一体ずつに向き合い、それぞれの武器を振るう。

「逃すか、ウェン【風の檻】!」

「ハク、そのまま掴んでいろ」

両脇の武者の腕と共にカスミの刀が振り抜かれ、先程と同じように切り捨てられる。シンの方もウェンによって空中にムカデを捉えて自在に飛ぶ剣によって滅多斬りにしていた。

「耐久力は落ちてるなぁ」

「ああ、かわりに少し素早くなったように感じる」

「また分裂しやがったな。しかも、分裂後は確定で逃げられるか……」

ハクの拘束もウェンの【風の檻】も関係なく、逃げてはまた襲ってくる。それを繰り返しているうちにムカデは倍に倍にと増えていき、十六体となった。八匹の時点でも攻撃をすり抜けたムカデがカスミにダメージを与えていたため、正面からの迎撃は難しくなってきていた。

「くっ、小さくなっても攻撃力は変わらずか……」

「ただ、HPは低くなってる。ここからは俺の方が活躍できそうだな!カスミ、倒し損ねた奴にだけトドメを頼む!」

「ああ、迎撃は任せる」

そうしていると次の襲撃が発生し、三百六十度囲むようにして飛びかかってくる。

「十六匹程度なら、楽なもんだ!」

ウェンの【風神】によって生み出された風の刃がムカデたちを等しく斬り捨てていき、それを生き残ったものから順に飛翔する剣が串刺しにしていく。

「HPを減らしたのが運の尽きだなぁ!」

結局シンの攻撃をすり抜けることはできず、カスミが攻撃する必要もなく三十二体、六十四体のムカデ襲撃もクリアする。

「これは範囲攻撃がないと地獄だなぁ」

「次は百二十八体だろうか?」

「どうだろうな?ま、数では俺に勝てないさ」

そう言っていると、今までのそれをはるかに超える地響きがして最初の一体よりも大きなムカデが鋭い顎をギラリと光らせて迫ってくる。

予想していたものと大きく異なるそれに不意を突かれて反応が遅れたシンとは違い、カスミは咄嗟に刀を向ける。

「【紫幻刀】!」

飛びかかるムカデを押し返す勢いで、高速の連撃が叩き込まれる。両脇の武者の腕もそれに反応して凄まじい速度で刀を振るい、ムカデの甲殻が頭から順にひび割れていく。

スキルの終わり、幾本もの刀がムカデを囲むようにして現れ、一気に収束する。囲んで飛びかかる強さはそのままムカデに返ってきたようで、そのままムカデは光となって消えていった。

「はー、なるほど。次倍になったら百の大台だもんなぁ。そこで打ち止めだったか……にしても、随分小さくなったなぁ」

「うるさい。あまり見ると斬るぞ」

カスミが咄嗟に発動したのは現状の最高火力スキル。となれば、デメリットで体が縮むというものだ。できる限り使わないようにしてはいるが、出し惜しみすべきでない場面では使うしかない。

「ハク、乗せろ。くっ……た、高いな」

「あー、手伝おうか?」

「少しすれば戻る。何だその子どもを見るような目は!」

「はははっ、いや本当、カスミのギルドはどいつも面白いスキル持ってるなぁ」

そこで二人にメダル獲得の通知が流れ、体が光に包まれていく。

「体が元に戻るまでは戦闘には参加できない」

「ああ、いいんじゃないか。ミィも向かってきてるだろうしな、それにその蛇がいれば多少のモンスターは何とかなるだろ」

カスミが何とかハクによじ登ったところで二人は元のフィールドへと転移していくのだった。