軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と三人。

イベント前、それぞれが仲間にしたモンスターのお披露目はイベント時にしようと全員で約束して、それぞれがレベル上げをしている中、メイプルもまたシロップのレベル上げをしていた。

「んー!【悪食】がなくなったら不便かと思ったけど、結構使いやすいかも」

メイプルはそう言って触手になった左腕を振り回す。これが当たってしまえば麻痺の状態異常が発生するのだから、ぶんぶん振り回しているだけでも役に立つというものだ。

シロップの攻撃力は低いため、メイプルが動けなくしたモンスターに【毒竜】をぶち当てて体力を減らし、目の前に積み上げるという、親鳥の餌やり作戦でレベルを上げていく。

「シロップ!【精霊砲】!」

メイプルが用意したモンスター達のHPがゼロになり、シロップに経験値がぐんぐん入っていく。

「追いかけて倒すのは大変だし……またあの触手に捕まってもいいかも!あの洞窟なら勝手に近づいてきてくれるもんね」

蛸のねぐらに入り浸ることになるかどうかというところで、シロップのレベルが上がってまた新しいスキルを覚える。

「すごーい!進化したし、スキルもざくざくだね!えーっと……」

メイプルはスキルを確認する。

そこには自然を操って力にするシロップらしいスキルが増えていた。

「【赤の花園】?早速よさそうな感じだ!」

【赤の花園】

範囲内にいるあらゆる存在は、ダメージを受けた時、受けたダメージの5%の追加ダメージを受ける。

「うん!使いやすいっ!流石シロップ!」

メイプルはシロップの頭を撫でて褒めちぎる。普通であれば敵味方ともにダメージが増加してしまう諸刃の刃だが、メイプルの場合はダメージを受けた時のデメリットはデメリットになりえない。

【身捧ぐ慈愛】で仲間も守ってしまえば、このスキルは純粋に仲間全員が与えるダメージが5%アップするバフスキルということになる。位置取り的ににメイプルを中心にして戦うことが多い【楓の木】にとって、範囲でのバフは恩恵をやすいものである。

被ダメージが二倍になるという大きなデメリットがある【カバームーブ】の滅茶苦茶な使い方ができるのも、メイプルがずば抜けた防御力でそもそもダメージを受けないためだ。

「シロップ【赤の花園】!」

メイプルがそう指示を出すと、地面から薔薇が大量に生えてくる。地面を這うように伸びた茨は、スキルの効果が追加ダメージというのも納得の量である。

さらに、シロップが移動するのに合わせて、花園も動いていく。メイプルの【身捧ぐ慈愛】のようにシロップを中心としているのだ。

「シロップ普段も花咲かせられるようになったもんね!ほかの花園も作れるようになるかな?」

ものによっては味方の支援も出来るだろう。今回のデメリットなら【身捧ぐ慈愛】で完全に無視しつつ戦うことができる。

シロップはアタッカーというよりは搦め手で状態異常を与えつつ防御系スキルを発動するのが得意な、まさにメイプルと似た者同士という風なモンスターに育ってきていた。似ていないところは凶悪な姿にならないことである。

「よーしこのまま次の目標に向けて前進前進!」

メイプルはまた同じようにモンスターを見つけると触手と【パラライズシャウト】で動きを封じてシロップの前へを繰り返す。

そんなことをしていたらいくら森の中とはいえ目立つのも当たり前である。

「何かざわざわしていると思ってきてみましたが。メイプルでしたか」

「うわ……本当に触手生えてる……なんで?」

「ミィから聞いてなかったら斬り掛かってたかもしれねぇ。堕天使でもそうはならないよなぁ」

ガサガサと茂みをかき分けて姿を見せたのはミザリー、マルクス、シンの三人だった。

見知った三人にメイプルは触手になった手をぶんぶんと振る。

「あ!【炎帝ノ国】の……ミィは今日はいないんですか?」

「ミィは用があるとかって言ってな。今日は俺達のモンスターのレベル上げ」

「なるほど……」

うんうんと頷くメイプルの足下では薔薇園を展開するシロップがいる。特にメイプルに色々と強烈な印象を受けたマルクスはシロップの変化にすぐに気づいた。

「シロップ……ちょっと見た目変わった?」

「むむ、分かりますか?でも、詳しいことは秘密です!……で、いいのかな」

サリーがやるようなことを真似して情報を下手に渡さないようにするが、触手や薔薇園を見せているので今更というのはある。

「まあいいや、ほら次のイベントのためにレベル上げてるんだろ?予選では会いたくないし、どこかで共闘したときにでも戦闘力は見せてもらうか」

「ミィがその触手は危ないって言ってましたね」

「こんな見た目で危なくないとか……ありえない」

ミザリーとシンの後ろに隠れつつ、うねうねと動く触手を観察する。

「ま、顔見せくらいはしとくか。ミィも良くしてもらってるしな」

「いいんじゃないですか」

「二人が見せるなら……じゃあ……解除」

そうして、三人はそれぞれ相棒にしたモンスターを見せる。マルクスの声に合わせて空間が歪み、色がついていく、そしてマルクスの頭の上にはころころと色を変えるカメレオンが、シンの肩には鷹が、ミザリーの足元にはフサフサとした長毛の白猫がいた。

「えっ、えっ!?すごい、どこから!?」

指輪から呼び出したのとも違うその動作にメイプルが驚いて不思議そうな顔をすると、シンはいいリアクションをするなあとくつくつ笑う。

「今回は顔見せだけ、な。ははは、それだけ驚いてくれるとやったかいもあるなぁ」

「ふふふ、今度は【楓の木】の皆さんのモンスターも見せてくださいね」

「バイバイ……今度のイベントでは会わないといいなあ」

「次のイベントはお互い頑張りましょうねー!」

三人にも予定があるようで、メイプルを少し驚かせると手を振って去っていく。

メイプルは色んなモンスターがいるんだなあと一人感心しながらシロップの餌やりを続けるのだった。