軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と巨木。

「さて着いたわけだけど……」

「ここ上るんだよね?」

二人の目の前にあるのは雲を貫くほどの高さの巨木である。その巨大な幹には蔓が巻き付いていたり、木の皮が少し剥がれて足場になっていたりしていて、なんとか上ることができるようにルートが作られていた。

ただ、上を見ると海のモンスターとは比べものにならないくらい凶暴な怪鳥達が飛んでいるのが眼に映る。

「……普通に上るのは?」

「うっ、ちょっと難しいかも」

「オーケー、なら強行突破しようか」

「えへへ、その言葉を待ってましたっ!」

メイプルは装備を変更すると周囲に二枚の盾を浮かべ、巨大化したシロップの背中に【天王の玉座】を設置する。

メイプルは玉座に座ると【身捧ぐ慈愛】を発動し、兵器を展開する。さらに装備を白の方に変えダメージ無効スキルを発動する準備も万端である。

「サリーも乗って乗って!落ちないようにね?」

「私は空中に足場も作れるし大丈夫」

こうして力を合わせ浮遊要塞と化したシロップは足場などお構いなしに高度を上げていく。それに反応してギャアギャアと声を上げて怪鳥が三体近づいてくる。

「【攻撃開始】!【ピアースガード】」

「朧【拘束結界】!」

メイプルの攻撃に合わせて、サリーが朧に指示を出し、怪鳥の動きを停止させる。動きが止まってしまえばそこまで狙うのが上手くないメイプルでも外しようがない。

「ありがとう!鳥は飛び回るから当てにくいんだよねっ!」

「どういたしましてっ、と【サイクロンカッター】!」

「シロップ【精霊砲】!」

メイプルもシロップに指示を出して自分のものとシロップのもの、二本のビームで怪鳥を焼き払う。

怪鳥も負けじと攻撃するが、念には念を入れて【ピアースガード】まで使って貫通攻撃を受け付けなくなったメイプルにダメージが入るはずがなかった。

不落の浮遊要塞にただ凶暴なだけの鳥が敵う道理はなかったのである。

「よーし撃破!」

「これなら大丈夫かな。ガンガン進んで一番上まで行こう」

そんなことを話しているうちにも怪鳥は大きく口を開けてどんどん群がってくるが、どちらが餌になるかはもう明白である。

メイプル達はレベルを一つ上げて、頂上にたどり着くことに成功した。

幹に見合った巨大な木の葉は二人が乗っても問題ない強度であり、木の中心には大きな鳥の巣が一つある。二人は小細工なしで、そのまま正面から近づいていく。

「来るよ!」

「おっけー!」

サリーはシロップから降りて木の葉の上で短剣を構え、メイプルは巣の方向に砲口を向ける。

そして、その後二人の身の丈ほどもある羽がふわりと落ちてきて、それに続くように怪鳥が現れる。その体格、雰囲気に二人は覚えがあった。

「第二回イベントの時と同系統!攻撃方法も似てるかも!」

「なるほど!じゃあ強くなったところを見せてあげないとっ!」

「それに、ほら頭の所!」

サリーが指差した怪鳥の首には緑の宝石がついた首輪の様なものが見える。それは二人が目的としている宝石に違いなかった。

「勝つぞー!」

「もちろん!」

二人が意気込み、怪鳥が金切り声を上げたところで戦闘がスタートした。

メイプルの【身捧ぐ慈愛】がある限りサリーも強気に出ることができる。背後から響くいつも通りの銃声を聞きつつ、スキルを発動する。

「【水の道】!朧【拘束結界】!」

メダルスキルのレベルを上げることで手に入ったこのスキルを使用すると、サリーの足元から重力に逆らって斜め上に向かって太い水の柱が伸びていく。サリーはざぱっとその中に入るとぐんと加速して泳ぎ、一気に飛び出して回転しつつ怪鳥の肩口から腹部にかけてを切り裂く。

「【鼓舞】!シロップ【大自然】【茨の枷】!」

メイプルは防御よりの装備のため、サリーの攻撃のサポートに回る。

木の葉の間から幹に巻きついていたような蔓が伸び、怪鳥を絡みつく。さらに続いて伸びた茨がダメージを与えつつ、麻痺状態を与える。

朧のスタンから、シロップの麻痺へ繋がり、動かせないまま一方的に攻撃することができる。

「【クインタプルスラッシュ】!」

サリーは【ドーピングシード】をかじり【STR】を限界まで上げると、メイプルが蔦で作ってくれた足場を駆け上がり、凄まじい勢いでの連撃を顔に叩き込む。

メイプルの銃撃もきっちりと決まりダメージは加速していく。

ここでようやく麻痺が解けて、茨と蔦を引きちぎろうとするが、メイプルもそうはさせない。

「シロップ【精霊砲】!【眠りの花弁】!」

今度は甘い香りが漂い、ピンクの花弁が散る。それに合わせて怪鳥からゆっくりと力が抜け、眠ってしまう。

サリーは一旦攻撃をやめて、イズ特製の爆弾を取り出す。

「っと、シロップ強くなったね。すごい拘束力」

「動けなかったら私が遅くても追いつけるからすごい助かるんだー!よっと!」

メイプルは玉座から立ち上がると装備を黒の方に変更しながら近づいていく。

玉座の悪属性封印はメイプルにとって大きな枷にもなっている。そこから立ち上がったということは一気に攻撃に転じるつもりだということだ。

「【全武装展開】【水底への誘い】【捕食者】!」

「うわっ」

背中からは天使の翼を生やし、全身を強力な兵器で囲み、両脇に化物を従え、左手は黒い靄を放つ五本の触手になっている。

そんなものが近づいてきたら誰だって咄嗟に逃げるだろう。逃げはしないものの、サリーも改めてその様子を見ておよそ味方のそれではないと思い直す。

メイプルはぎりぎりまで接近すると触手で顔を包み込むのに合わせて、両脇の化け物に攻撃させ、さらに追撃する。

「【毒竜】【滲み出る混沌】【攻撃開始】!」

それぞれの攻撃が激しくダメージエフェクトを散らし、サリーの設置した爆弾も起爆していく。

「やっば……」

素直な感想が出てくるばかりのサリーの前で、もう一度バクンと触手に頭が包み込まれて、茨と蔦に包まれた怪鳥の体は爆散した。

「よーしっ!まだまだ全部当てれば勝てるっ!」

「ははっ、頼もしいね。ほら、宝石見失う前に拾っとこう」

サリーにそう言われて、メイプルはバシャバシャと毒を跳ねさせながら撃破後に落ちている首輪のもとに急ぐ。メイプル達にとってはフラフープ並みの大きさなため、すぐにそれは見つかった。

首輪を手に取るとそれは砕けて、手の中には緑色の宝石だけが残った。

「二つ目の鍵だよサリー!」

「うん、いいね。どうする?次も行く?」

「【悪食】はもう使えないけど……サリーは大丈夫?」

「もちろん。本当は私がダメージを出す役なんだよ?戦闘になってもやれるやれる」

「朧にも期待してるよ!」

メイプルがそう言ってサリーの肩に乗っている朧の頭を撫でてやる。

「シロップも強くなってたみたいだけど、朧も結構レベル上がってスキルも増えたからね。次は見せてあげる」

「うん、楽しみ!」

こうして、二人は宝石を持つ怪鳥をさっくりと倒すと次の目的地に向かうのだった。