軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化とボス退治。

「ボス部屋っぽい部屋発見!」

目の前には道中には一つも無かった扉の存在があった。

五メートル程の木製の扉を開き中へと入る。

中は広く、薄暗い。

天井までは十メートル近く、周りを見るに横幅も同じくらいだ。

そして奥行きだけはその倍程でその最奥には巨大な玉座。

そして、そこには醜悪な顔をした巨大なゴブリンが座っていた。

座っているため、正確な大きさは分からないが先程の扉程はある。通常のゴブリンの三倍近い大きさだ。

ゴブリンが二人に気付いて咆哮する。

凄まじい音量に二人が顔を顰める。

「さっと倒しちゃおう!あいつうるさい!」

「同感、行こう!」

サリーが頷く。

メイプルの大盾は闇夜ノ写に変わっており、決戦仕様だ。

ゴブリンまでの距離はおよそ二十メートル。

サリーが最速でその距離を詰めようとする。

しかし、ゴブリンはそれを許さない。

玉座の真横、立てかけてあった巨大なサーベルを手に取りつつ立ち上がると、前進しつつ乱暴に振り抜く。

凄まじい剣圧と共に迫る凶刃。

「【カバームーブ】!【カバー】!」

サリーがこれを回避出来たかどうかは分からない。メイプルが身の丈の二倍はあるそのサーベルを恐れずに大盾で受け止めて消し飛ばしたからだ。圧倒的な破壊力で敵のメインウェポンを戦闘開始早々削り取った。

サーベルが光となって消えていく。

「ナイス!よしっ…!」

サリーが更にボスに近づいていく、そしてここからのメイプルの行動はサリーにとって、もしかするとゴブリンにとっても予想外のものだった。

「【カバームーブ】!」

走り続けるサリーの元にメイプルが急加速して追いついてくる。ゴブリンからの攻撃は来ていないのだ。

サリーは驚きながらもボスに近づく。

「【カバームーブ】!」

メイプルが無理やりサリーに追いつく。これで二人揃ってゴブリンの目の前だ。

ゴブリンが筋肉の隆起した腕を轟音と共に振り下ろしてくる。

しかしその攻撃はサリーには当たらなかった。

その自慢の回避力はゴブリンの単調な攻撃など受けはしなかった。サリーはそのまま高く飛び上がりゴブリンの腹部に狙いをつけた。

サリーのダガーがゴブリンの体に届く距離まで近づいた時。

「【カバームーブ】!」

もはやカバームーブというのが馬鹿馬鹿しくなるその使用目的にサリーが苦笑する。

メイプルはゴブリンに肉薄することとなり、その大盾が届く範囲内に入った。

サリーは一撃を加えるとその場から避難する。

メイプルは体をひねり大盾を振り抜いた。

「どーだっ!この威力!」

ゴブリンの腹部には大盾の幅のダメージエフェクトが派手に散り、そのHPゲージが三割程減少する。

それはゴブリンの怒りを誘ったようでメイプルに拳が叩きつけられ、地面へと落ちる。

「ふふふ…ダメージが二倍?ゼロの二倍はゼロっ!」

【カバームーブ】のデメリットのダメージ二倍は、常軌を逸したメイプルの防御力の前で無いものとなった。とはいえ、鎧はそうでは無かったらしく、ピシッとヒビが入って砕けてしまった。

「うえっ!?」

驚くメイプルだったが壊れた鎧は淡く輝くと即座に

元の形を取り戻した。

「あっ!そうか、【破壊成長】!」

壊れた装備はより堅牢に、強固に成長する。

サリーがメイプルに声をかける。

「もう一回いける!?」

「もちろん!」

メイプルは立ち上がりサリーの動きを見る。

そして、サリーにゴブリンの拳が叩きつけられられるその瞬間。

「【カバームーブ】!【カバー】!」

拳とサリーの間に立ち大盾を構える。

その腕は先端から大盾に飲み込まれて赤い光を散らしていく。素早いサリーに当てるために全力で振り下ろしたその勢いは止まらない。

再びHPゲージがガクンと減少する。

残り四割といったところだ。

メイプルは新月を抜き放つ。

「ちょっとぐらいは活躍しないとね!【超加速】!」

サリーの体がぶれて、加速する。

サリーが高速でゴブリンの背後に回り込む。

「【ダブルスラッシュ】!【ウィンドカッター】!【パワーアタック】!【ダブルスラッシュ】!」

【超加速】の効果も相まった高速の連撃が叩き込まれる。これだけやってもゲージは一割半ほどしか減少しないのだからメイプルの大盾の異常さが際立つ。

流石にこれだけの攻撃を加えればゴブリンもサリーの方に注意を向けざるを得なかった。

ゴブリンは振り返ると赤いダメージエフェクトを上書きするように黄色のエフェクトをその腕に纏わせて殴りかかる。

その攻撃はサリーには当たらなかったが、殴りつけた地面が陥没する。

「威力は上がってるけど…遅いね!」

サリーがゴブリンから離れていく、ゴブリンは血走った目でサリーを追おうとする。

「いいの?私なんか追いかけて?きっと…あっちの方が怖いよ?」

「【 毒竜(ヒドラ) 】!」

メイプルの声が三つ首の毒竜を呼び出す。

サリーを追いかけてより大きな脅威を放置してしまったゴブリンはその背に毒竜の攻撃を受けることになってしまった。

毒竜での大ダメージに加えて、最高レベルの毒ダメージ。

それでも、何とか立っていたのはゴブリンのボスとしての意地だったのかもしれない。

しかしそれも長くは続かず、その巨体を輝く光に変えて爆散した。

「お疲れー!」

「お疲れ様…で?あの謎の挙動は何?」

「謎の挙動って【カバームーブ】のこと?あれいいよね!私の予想通り移動してからの攻撃にも使えたし!」

「そんな使い方して生きていられるのも、有効打を与えられるのもメイプルだけだよ…」

実際、大盾使いが真似をしようものならダメージ二倍で沈むだろう。

さらに、このぶっ飛んだ攻撃能力を持っているのもメイプルくらいだろう。

火力を出すなら大盾である必要は無いのだ。

「サリーも速かったよ!最後のあれ!」

「まあ、AGIが50%増加だからね。三十分空けないと次使えないけど…十分かな」

「でも【悪食】はあと七回しか使えないから…短期決戦で出来るだけ使わないようにしたけど…」

「今のメイプルは燃費悪いもんね。今回のスキル取得でいいの取ろう!」

「うん、そうだね!」

そう言うと二人はゴブリンが座っていた玉座の元へ向かう。

そこには装飾は無いものの大きめの宝箱があった。

「開けるよ?」

「おっけー!開けちゃって!」

サリーが宝箱を開ける。

中に入っていたのはゴブリンが持っていたのと同じ見た目のサーベル。

そして、銀色に輝くメダルが二枚だ。

「やった!メダルだ!」

「しかも二枚、二枚だよ!」

二人はサーベルなどそっちのけでメダルに夢中になる。そもそも、サーベルは二人とも装備出来ないのだから興味がなくて当然とも言える。

「ダンジョンごとにメダル二つなら…百五十もダンジョンがある…?」

「難易度で変わるのかも?もっと強いボスもいるとか!後は…隠されているだけでボスはいないとか…」

「ああそっか、そういうのもあるか」

サリーは思考を切り上げてサーベルを手に取ってその性能を見る。

【ゴブリンキングサーベル】

【STR+75】

【損傷加速】

「うおぉ…なかなかの脳筋武器だぁ…」

「どういう感じ?」

「壊れやすくて長時間戦闘は出来ないけど、STR+75」

「私達は装備出来ないよね?」

「うん」

「装備ははずれだったかぁ…」

「次のダンジョン探しに行く?玉座の裏に魔法陣あるし、乗れば外に出れると思う」

「……あと一つくらいなら今日中に行けそうかな?スキルも持つと思う!」

二人は相談を終えると魔法陣に乗った。

メイプルの【悪食】のことを考えると一日の内に出来るだけ探索して使い切りたいところだ。

明日に持ち越しは出来ないため、攻略出来る数が減ってしまう。

そして光が消えるとそこは元の草原だった。

「忘れてた……取り敢えず、草原を出るところから始めないと…」

「ど、どっちに行くのがいいかな?」

「前進!多分それが一番。最初から見えてるあの高い山までずっと草原ってことは無いはず」

「それもそうだね!」

二人は山岳地帯を目指して歩き出した。