軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と塔八階2。

「ん……うぅ、あれ?」

20秒経ってメイプルがゆっくりと起き上がり、慌てた様子で周りを確認する。

「おはよう。あの後は襲ってくることはなかったよ」

「そっか。【身捧ぐ慈愛】も消えてないし……よかったあ」

「ただ……時間差で【睡眠】を与える攻撃と透明化は捕まえるのに時間がかかりそうかな」

「イズさんに貰ったアイテム使ってみる?」

イズから貰ったアイテムには一定時間睡眠の状態異常を無効化するものもあったが、効果時間が短く、用意できた数もまだ少ない。

むやみに使えない以上、いつ攻撃してくるか分からない敵には相性が悪いと言えた。

「まずは接近できるようにならないと、HPもどれくらいあるか分からないし」

「そうだね!よし、頑張って探さないとぉっ!?」

立て続けての不意打ちで、メイプルの背中に何かがぶつかる。しかしそれはメイプルを突き飛ばすのではなく、そのまま空中後方に引っ張り上げた。

「うぇぇええっ!?」

「ちょっ、それはまずい、って!【超加速】!」

【糸使い】の糸が届かないほどにぐんと離れたメイプルに追いつくためにサリーが加速する。

その後ろからは木の根が迫り、爆発する木の実がサリーを巻き込んでいく。

「あっ、ぶない!ギリギリ……助かった……」

転がり込むようにして急速に遠ざかる【身捧ぐ慈愛】の範囲内に入ると、生きていることにほっと息を吐く。

「うぅ、びっくりした……」

メイプルは引っ張っていたものから放り投げられるように解放されて、ガシャンガシャンと音を立てて地面を転がる。

サリーもメイプルの近くに戻ってきて、今度はあらかじめ【糸使い】でメイプルと体を繋ぐ。

「命綱、繋がせて……はぁ、心臓に悪い……」

「うん、いつ攻撃してくるか分からないし……」

「んー、毎回背後に回るならある程度狙いもつけられそうだけど」

まだ攻撃された回数も三回だけである。背後から攻撃する方が有利なのは常に言えることなため、まだ結論は出せない。

「次攻撃されたらそっちに撃って見るね。当たるかもしれないし!」

「そうだね、そうしてくれると助かる」

基本的に二人から探知することが出来ないため、モンスターの攻撃を待って後手に回るしかないのである。

そうして二人はしばらくその場で敵の出方を待つ。

「……なかなか来ないね」

「気を張ってても仕方ないよ。どうせ分からないしさ」

「うん、そうっひゃぁっ!?こ、【攻撃開始】っ!」

言っているうちに反応があったようで、メイプルが正面に向けて弾丸を発射する。

それは木々や茂みを滅茶苦茶に攻撃するものの、どこからもダメージエフェクトは上がらなかった。

代わりに木の上からは色とりどりの木の実が落ちてきたくらいである。

「うぇぇ……顔にべったり張り付いたぁ」

メイプルはそう言って両手でゴシゴシと顔を拭う。サリーもインベントリからタオルを取り出しメイプルに渡した。

「多分時間が経てば落ちるだろうけど、何か嫌だしね」

「うん、ありがとう」

「で、命中はしなかったけど何か落ちてきてたし、それを確認しに行こう」

「素材とかアイテムかもしれないしね!あ、装備も変えとこうかな……【救いの手】で盾を増やしておいた方がいいかも」

「いいね!どこから攻撃されるか分からないし」

メイプルの顔も綺麗になり、装備も変更したところで二人は警戒しつつ落ちた木の実の元へ向かう。

「素材?」

「いや、八階限定のアイテムみたい。三種類あるね」

透明になったモンスターを視認できるようになる代わりに姿の見えていたモンスターが見えなくなるもの、一定時間状態異常無効を得るもの、10秒間カメレオンの現在位置を把握できるものの三つがあった。

「おー!これがあれば倒せるよっ!」

「だね。ある程度数を集めたいし、森の中回ろうか」

「うん、そうしよう!」

時折攻撃を受けつつも、後できっちり倒すためと割り切って、二人は木の実を大量に集めてきた。特に位置を把握できるものを重点的に集め、攻撃できるだけの基盤を整えたのだった。

「よし、反撃開始かな」

「じゃあ、行くよっ!」

メイプルは木の実を一つ齧ると、サリーをぎゅっと抱きしめて爆炎とともに木々の間を吹き飛んでいく。

メイプルが一気に距離を詰め、サリーが糸を使って微調整をする。

ゆっくり追い詰めるような手間のかかることはなしで、真っ直ぐに撃破に向かったのである。

「サリー!右に曲げて!」

「おっけい!」

無理矢理に空中で方向を変えると、メイプルが再び兵器を爆破して加速する。

「近いよっ!」

「分かった!」

サリーはここで透明化を破る木の実を口にして、メイプルから糸を外し木に飛び移る。

それに対応して、カメレオンは舌を伸ばしてくるが、今度はそれを回避した。

「見えてれば何てことないっ」

リスクは承知の上で、一気に【跳躍】で距離を詰め、その勢いのまま顔から尻尾までを深く斬りつけ真下にいるメイプルの元に着地する。

カメレオンは一度姿を現し、ばたばたともがいた後すっと木を移ってどこかへ行ってしまった。

「サリー!カメレオンのHP半分になってたよ!」

「なるほど、まともに戦う相手じゃないってことかな」

サリーはもう一度木の実を食べ、透明化の状態を元に戻すとぐっと伸びをする。

「んー。あと一回斬れば終わるかもしれない」

「じゃあまた見つけないとだね」

ただ、当然全く同じ条件というはずもなく、二人の視界に何体ものカメレオンが姿を現し、スルスルと動き始める。

変化があったことだけを見せて、それらはすっと消えていってしまう。

「全部倒さないと駄目……なのかな?」

「一体だけが本物ってタイプかも」

「うー、見破る方法あるのかなあ……」

「HPバーが表示されてたらいいねってくらい。多分駄目だろうけど……」

またここからも大変だと二人は気合を入れなおすのだった。