軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と階層攻略。

「到着!」

「よーし、早速中に入ろう!」

目の前には石造りの遺跡の入口がある。

情報通りならここが二階層に繋がるダンジョンだ。

メイプルを先頭にして道を歩く。闇夜ノ写を構えながら歩いているだけで防御面は万全だ。

そうして歩いている内にモンスターにも遭遇する。

前から現れたのは少し大きめの猪だった。

「【ウィンドカッター】!」

サリーが先手をとって魔法を撃ち込む。しかしそれはHPバーを二割程削っただけだった。

「むぅ…結構威力減ってるなぁ。これは私も状態異常攻撃スキルを上げないとなぁ」

そんなことを言っていると、体勢を立て直した猪が突進してきた。それは勢いよくメイプルにぶつかろうとして。

大盾に飲み込まれた。

「んー…猪との戦闘は任せていい?」

「おっけー!」

道幅が狭いため猪の突進は唯の自殺だった。

メイプルの大盾のことを知らない猪達は自ら飛び込んでくるのだ。

分かれ道を右へ左へと進み少しずつ少しずつ奥地へと進んでいく。

「おっ!別のが来たよ!」

曲がり角を曲がると目の前に現れたのは熊である。

熊も同じ様に飛び込んでくるかとメイプルは盾を構える。が、しかし。

熊がその太い腕をブンッと振ると、爪の形の白いエフェクトが飛んでくる。

それはメイプルが構えていた大盾に飲み込まれて消えたがメイプルを驚かせるには十分だった。

「び、びっくりした」

「まさか、遠距離攻撃があるなんてね。しかも距離を取りながら道を塞いでるし」

猪とは違って行動パターンが複雑な熊は猪よりも上位のモンスターなのだろう。

「私がやってみる。真っ直ぐ大盾を構えて立ってて」

メイプルは自分の大盾が地面に落ちた。

ように見えた。

それはメイプルにも熊にも共通してそうだったようで、熊がチャンスと思ったのだろう、突撃してくる。

メイプルもその手に大盾を持っている感覚が無ければ地面に手を伸ばしていただろう。

熊が元々大盾の構えられていた地点に到達したと共にその体が消え失せた。

そして、何もなかった筈の空間が歪んで大盾が姿を現した。地面に落ちていた大盾も同様にして消えていく。

「【蜃気楼】の実験は成功かな?」

「【蜃気楼】かぁ!私、いきなり大盾が地面に落ちててびっくりしちゃつた」

「今回は実験として使ってみたけど、回数制限もあるしボスまで取っておくから、戦闘は当分任せた!」

「うん!任された!」

メイプルとサリーは再び奥へと進んでいく。ダンジョンはそこまで深くなかったようで、十回ほどモンスターとの戦いを挟んだだけで、ボス部屋に到達することが出来た。

その大扉を開けて中に入る。

天井の高い広い部屋で奥行きがあり、一番奥には大樹がそびえ立っている。

二人が部屋に入って少しすると背後で扉が閉まる音がする。

そして。

大樹がメキメキと音を立てて変形し、巨大な鹿になってゆく。

樹木が変形して出来た角には青々とした木の葉が茂り、赤く煌めく林檎が実っている。

樹木で出来た体を一度震わせると大地を踏みしめ二人を睨みつける。

「来るよ!」

「おっけー!」

鹿の足元に緑色の魔法陣が現れ輝き出す。

戦闘開始だ。

鹿が地面を踏み鳴らすと魔法陣が輝き、巨大な蔓が次々に地面を突き破り現れ、メイプル達に襲いかかる。

「よっ!と…」

「ははっ!遅いね!」

メイプルの大盾は正面からその蔓を受け止めて飲み込む。サリーは自慢の回避力で、唸りを上げて襲いかかる蔓を難なく躱す。

メインの火力はメイプルの新月。

メイプルがカウンターとばかりに毒で作られた竜

を放つ。

それは蔓を飲み込み溶かし消し飛ばして鹿へと迫る。

しかし、毒竜は鹿の目の前で緑に輝く障壁に阻まれて消失した。

「えっ⁉︎」

「多分、あの魔法陣だよ!攻撃が通ってないよ!」

鹿は再度蔓を伸ばして攻撃してくる。それ自体は二人にとっては問題で無いのが救いといったところだろう。

しばらくそうして耐えていた二人だったが埒があかないと思ったサリーが提案する。

「ちょっと観察に回るから、防御を受け持ってくれる?」

「分かった!…【挑発】!」

蔓の向かう先が明らかにメイプルに偏る。その隙にサリーが実験に回る。

魔法で攻撃を重ね障壁を何度も出させているうちに、サリーはついにあることに気付いた。

「角の部分には攻撃が通るよ!…あと、障壁はあの林檎が維持してるっぽい!」

サリーが木の葉の中で煌めく林檎を指差す。障壁発動時には林檎がより赤く輝いていた。

「じゃあ…私に任せて!纏めて吹き飛ばすから!」

「うん、お願い!」

メイプルが新月を突き出す。再び現れた毒竜は今回は障壁に阻まれることなく木の葉全てを飲み込み溶かした。

「【ウィンドカッター】!」

今度は障壁に阻まれることなく鹿に攻撃が通った。赤いダメージエフェクトが散る。

「よしっ!通った!」

「大技でいくよ!」

大盾に浮かんでいた結晶がパリンパリンと音を立てて割れると共に新月から巨大な紫の魔法陣が展開される。それはしばらくして光を増し、三つ首の毒竜となって鹿に襲いかかった。

鹿の体が溶けて赤いエフェクトが絶え間なく溢れる。間違いなく致命的ダメージだった。

しかし、鹿の足元の緑の魔法陣が一際輝きその傷を癒す。HPバーを二割まで回復すると毒の状態異常を取り除いて魔法陣はその役目を終え、薄れて消えていった。

「さっきのってまだ打てる!?」

「いけるけど、ちょっと時間かかる!」

相談するのを鹿が待ってくれる筈も無く、行動パターンの変わった鹿が風の刃とさらに太くなった蔓で攻撃してくる。

さらに。

「っ!」

「うううわぁあああっ!」

地面が急に隆起して足元から二人を攻撃してくる。サリーはそれを敏感に察知して躱したがメイプルは空中に弾き上げられた。

ノーダメージではあったが、メイプルは地面に叩きつけられると、【スタン】の状態異常を受けて倒れたままだ。本来なら生存は絶望的だがその後、風の刃を受けてもHPバーが減っていないのを見るに起き上がるまで耐えられるだろう。

だが、メイプルのスキル発動も大幅に遅れることとなることは確かだ。

「仕方ない…面倒だけど…」

サリーが両手にダガーを持ち、走り出す。

言葉とは裏腹にその表情は嬉しそうだ。

「私が殺るか」

敵の攻撃を完璧に見切る。

集中状態のサリーにとって、この程度の攻撃は無いに等しい。隙間をぬって確実に鹿の足元に近づくと【跳躍Ⅰ】で鹿の目の前まで飛び上がる。

そこは風の刃の止まない戦場で唯一静かな安全地帯。

「ここが安地なのは分かってるんだよ?…【ダブルスラッシュ】!」

体を回転させて両手のダガーでの四連撃。

武器を二本持つことで一本の時と比べて二倍の攻撃を繰り出せる。一本の時よりも単発の威力は落ちるが、手数で圧倒する。

そしてサリーはそのまま顔を背中に向かって駆け上がっていく。

「【パワーアタック】!」

額から首筋にかけてを切り裂く二連撃。

さらに、火魔法でその背中を焼いていく。

背中で飛び回るサリーに風の刃が飛んでくる。

が、回避は容易だった。

「ん?ここは安地じゃなかったか」

ヒュンヒュンと音を立てて飛ぶ風の刃を縫うように移動して回避する。隙を見ての連撃がついにHPバーを削り取ったその時。

「んんっ……そ、そうだ!戦わないと…」

メイプルがようやく起き上がり鹿を見据えた。

とはいえ、目の前で光となって爆散する鹿を見届けることしか出来なかったが。

「ええええええええっ⁉︎」

「寝てる間に終わらせちゃった」

サリーが戻ってきてそう言う。

メイプルにとってはなんとなく腑に落ちないダンジョン攻略となってしまった。

とにもかくにも、二人は二階層進出の権利を手にしたのだった。