軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と塔一階3。

モンスターを倒しては進み、倒しては進み。

メイプルとサリーはそうしてボス部屋まで辿り着いたのである。

ダメージを受けることこそなかったものの、度重なる戦闘で【悪食】は使い切ってしまっていた。

「一階層はまあこんな感じだろうね。貫通攻撃持ちも見なかったし」

「そのおかげで助かったよー。二階にもいないといいけど……」

メイプルはそう呟く。

メイプルにとっては貫通攻撃があるかないかで難易度が大きく変わる。

HPは低いため、貫通攻撃を受け続ける訳にはいかないのである。

「ん、なら、ささっとボス倒して二階へ行けるようにしとこうか」

「うん。もう結構やってるし、今日はここまでかな?」

「そうだね。そうしようか」

ボスをささっと倒してしまおうと宣言して、二人はボス部屋の扉を開けて中へと入った。

ゴツゴツとした岩の壁に、ひび割れた地面。

地面には所々流砂があり、まともに歩くことができる場所は限られていた。

「……サリー」

「うん。多分、下から来る」

サリーがそう口にしたその時、地面の砂を巻き上げて、地中から砂色の鱗を持った竜が現れる。

赤く輝く瞳は二人を見据え、直後大きな咆哮が部屋に響き渡る。

「メイプル!」

「【攻撃開始】!」

援護してという言葉はもう不要で、サリーが駆け出すと共にメイプルが射撃を開始する。

弾丸やレーザーが竜へと迫る。

しかし、それを見た竜が咆哮すると竜の体の表面を透明な結晶が覆っていき、攻撃全てがそのまま跳ね返される。

「……っ!【超加速】!」

サリーは加速すると跳ね返ってきたメイプルの弾丸をダガーで弾き、レーザーをするりと回避してメイプルの【身捧ぐ慈愛】の範囲内へと戻ってきた。

「ごめん、サリー!」

「ううん、大丈夫。メイプル、ちょっと様子見で」

「うん、分かった」

メイプルはサリーの前に立つと、大盾と【身捧ぐ慈愛】でサリーを完璧に守る体制に入る。

広範囲の貫通攻撃はメイプルの【身捧ぐ慈愛】では上手く受けることができないため、大盾はきっちりと構えなければならない。

二人がじっと様子を見ていると竜はばっと砂の中に戻っていく。

「下警戒!メイプル!」

「それならっ!【砲口展開】!」

ガシャンと音を立ててメイプルの兵器が大量展開される。そして、メイプルはサリーをぐっと抱き寄せると、爆煙を残して、天井に向かって吹き飛んだ。

竜は二人の真下から飛び出して攻撃してきていたが、高い天井まで飛んだメイプル達には届かない。舞い上がった砂や岩石がバラバラと地面に落ちていく。

「相変わらず豪快な……でもナイスっ!」

「このまま離れるよっ!」

爆風で吹き飛んでいるだけであり、基本的にまともな着地ができるものではない。

メイプルはサリーを上にして背中から地面に落ちていき、自爆による損壊を逃れた兵器すらガシャガシャと壊してしまう。

「どうやって攻める……ん?」

サリーは地面に転がる黒い岩石に気づく。これは竜が砂を巻き上げた時に転がり出たものだった。

サリーが思考をまとめようとしたところでメイプルが叫ぶ。

「サリー!なんか来る!っ【ピアースガード】!」

メイプルの声をかき消すように、竜の口から砂のブレスが吐き出される。

ブレスは盾に隠れた二人を強力なノックバックで吹き飛ばし、地面に転がす。

メイプルがとっさに発動した【ピアースガード】のおかげで、元は貫通攻撃だったブレスはその効力を失いメイプルに受け切られる。

「ごめん、油断したっ!」

「大丈夫!」

二人の声を竜の咆哮が遮る。

それと同時、地面に転がっていた黒い岩石は大きな音を立てて爆発した。

「メイプル!あれ!あの岩を使って攻撃できるはず」

「……?」

「ブレスの時に口に放り込んで!外からの攻撃が弾かれるなら、大体そう!」

「分かった!」

やりたい放題されたが、ここからは反撃だというように二人は勢いづく。

二人は竜が再び岩石を撒くのを待って行動を始めた。

「私が注意を引くから、メイプルは岩石をお願い!」

「りょーかい!」

サリーは【身捧ぐ慈愛】の範囲から外れて竜に攻撃を仕掛けにいく。

それらは弾かれるものの、注意は引けたようで、竜は爪や尻尾で攻撃してくる。

しかし、宙を駆けられるようになったサリーに大振りな攻撃が当たるはずもない。

「おっけー……ブレスが来るよ!」

サリーは後ろで岩を集めているメイプルに声を掛ける。

しかし、そう上手くもいかないようで、竜はブレスを横薙ぎに変更してきた。

「ふっ!」

しっかりと集中していれば問題ないというように、サリーは横薙ぎに変化したブレスを空中を駆けて躱す。

そして、砂の奔流と轟音が消えた時にメイプルを確認しようと振り返ったサリーの横側をメイプルが飛んでいった。

「えっ?」

兵器に複数個の岩石を引っ掛けて運んで来たメイプルは、舞い散る砂を吹き飛ばして、そして。

そのまま大きくあいた竜の口の中へと飛び込んだのである。

「ふふふー……今度は私達の攻撃だよっ!【全武装展開】!」

メイプルが口の中に放り込んだ岩石は次々と爆発するが、それがメイプルに与えるダメージはない。竜はそのままメイプルを噛み砕こうとするが、岩石の方が幾分マシである。

兵器は壊せても肝心のメイプルのHPにその牙は届かない。

「【 毒竜(ヒドラ) 】!【攻撃開始】!」

メイプルはそのまま口の中に兵器を展開して引っ掛け、竜の口の中に詰まると、ありったけの銃とレーザー、そして劇毒を流し込んだ。

暴れても暴れても、竜はメイプルを吐き出せない。

兵器の爆発は何度も起こっているが、メイプルは爆発しても消えないのである。

見る間にゴリゴリとHPバーが削られていく。

「んんん!暴れないでっ……わっ!?」

竜はそのままメイプルを口の中から出せないまま地中に潜ろうとしたが、頭を砂に突っ込んだところで、体を化け物の口が貫いて抜けていった。

そしてあまりにもあっけなく。

竜は砂となってさらさらと消えていく。

竜がいた流砂の部分へ駆け寄ってきたサリーはメイプルを探す。

すると、流砂の中心で頭だけを出してサリーを見つめるメイプルと目があった。

「……引っ張ろうか?」

「おねがーい!」

一階層でのサリーの最後の仕事はメイプルの救出となったのだった。