軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と幽霊屋敷3。

サリーが飛ばされたのと同様にメイプルもまたどこかに飛ばされていた。

「えっと……サリー?」

メイプルが周りを確認するもののサリーの姿はない。

メイプルがいるのはどこかの部屋だった。

扉が外れてしまったクローゼットに、埃の積もったベッド。シーツはボロボロになっており、床はところどころめくれている。

「探さないと!」

メイプルが外へ出ようとドアノブを掴むが、ひねってもガチャガチャと音がするだけで扉は開かない。

鍵穴もなく、開かない理由は分からなかった。

「んっ……もう!壊せるかな?試してみようか」

メイプルはそう言いつつ銃口を扉に向ける。

その時背後でギシッと音がして、メイプルは振り返った。

すると、まるで夜闇を固めて形作ったようなどこまでも黒い影がのっそりと起き上がっているところだった。

「ちょっ、と【天王の玉座】っ!」

メイプルは急いで玉座を出すと飛び込むようにして座った。

「いつもはサリーみたいにしっかり確認できなくても、これなら!」

メイプルはじっくりと影の行動を見る。

人型に近い黒い影は前へと手を伸ばすようにしているが、何も起こらない。

「とりあえず……大丈夫かな?じゃあ【攻撃開始】!」

メイプルが銃弾を撃ち出すもののそれはするりと通り抜けて向こう側の壁に当たる。

影はそのまま近づいてきて直接メイプルを攻撃してくるが、どうということはなく弾き返せた。

「うーん。やっぱり物理攻撃じゃどうしようもないか……これを倒せば扉は開くのかな?んー……とうっ!」

メイプルは上半身を傾けて影の胴体に頭を突っ込んだ。

しかし、そこで口を動かしてみてもすり抜けるばかりである。

「本格的にダメだー。ん?あ、そうだ!」

メイプルは何かを思いついて、インベントリを操作しアイテムを取り出す。

それは光の王の足先に執拗にダメージを与えたあの紙の残りである。

炎と風の属性は光の王に通らなかったため、大量に残っていたのだ。

「燃えたら怖いし風にして……ぺたっ、と!」

メイプルがアイテムを使うと部屋を風が吹き抜けて目の前の影を切り裂いていく。

「ほらほらー、もう一枚!」

メイプルは続けてぺたぺたと貼り付けていく。

少しだけ強くなった程度の雑魚モンスターだった黒い影はアイテムを十個使っただけで倒れていった。

ゼロ距離でスキルでなくわざわざこのアイテムを使うプレイヤーは少ないため、多少なりとも火力は高く設定されているのだった。

そして影が消えていくとともに後ろでガチャリと鍵の開いた音がした。

「開いたのかな?鍵穴はなかったけど」

メイプルは玉座を消すとドアノブをひねる。

すると先程とは違い、ドアはするりと開いた。

「やった!出られる!」

メイプルはまた閉じ込められないようにと急いで部屋から出た。

「足元に気をつけながらサリーを探そう。また飛ばされても嫌だしね」

メイプルはぱたぱたと走って廊下を進んでいった。

さて、その頃サリーはというと転がり込んだ部屋にあった机の下に隠れて震えていた。

外には出るに出られないため、メイプルをひたすら待つしかなかったのである。

「そ、そうだ……メッセージ」

サリーはメイプルにメッセージを送った。

書かれていることは助けて欲しいというようなことだけで、これが状況を好転させる要素は一つもなかったがサリーはそんなことに気づかない。

「しばらくはここにいよう……」

サリーの言うしばらくとはメイプルが来るまでを示していた。

ようはずっとと同義である。

ただ、そんなサリーを見逃してくれるようにこのエリアはできていない。

ぎいっ、と音を立てて部屋の扉が開く。

机の下にいるサリーからは見えないものの確かに何かが歩いてくる。

それを聞いて、サリーは両手で口を塞ぎ息を止めて気配を殺す。

傷んだ床がぎしぎしと音を立てる。

音はゆっくりと机の方に近づいてきて、ついにサリーの目の前に青白い足が見えてくる。

「……っ!!」

通り過ぎることを祈るサリーの願いが届いたのか、人のものとは思えない足は、そのままサリーの前を通り過ぎていった。

「…………」

サリーが安心したその時、メッセージを受信した音が鳴った。

優しいメイプルが返信しない訳はなかったのである。

急速に迫る足音に、サリーは机の下から転がり出て、ばたばたと部屋から抜け出した。

「メイプル!メイプル!助けてぇぇっ!」

思わず上げたその声に反応してくれたのは、壁から地面から伸びる手と、血にまみれて体の抉れた子どもの霊だった。

「【超加速】!超加速、超加速!」

サリーは滅茶苦茶に走って、また別の部屋へと入った。

しかし、そもそも溢れかえる霊を撒くことなどできはしない訳で。

迷子になってなお走り回るサリーはより奥へ奥へと迷い込んでいった。