軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と第六回イベント。

メイプルはジャングルへ向かうアイテムを最速で手に入れることはできなかったものの、まだイベント期間に余裕のあるうちに一つ目を手に入れられた。

そして、長時間ログインしていられるだけの時間も確保し、いよいよイベントエリアへと転移することを決めたのである。

「よーし……行くぞー。はい、使用!」

メイプルがアイテムを使用するとその体を光の渦が包んでいく。

そのまま光は空へと伸びてすうっと消えた。

メイプルを包む光が消えた時、周りに広がる景色は木の葉が風で揺れる音くらいしか聞こえない静かなジャングルだった。

高い木が何本も並び、そこには蔦が垂れ下がっている。

「とりあえず……周りには何もいない、かな?」

プレイヤーの気配もモンスターの気配もメイプルには感じられなかった。

イベントエリアのどこに出るかは様々である。

そのため、メイプルがどこかにいるかもしれないサリーやクロム、カスミとともに探索するというのは難しい。

「何か一つくらいは見つけたいな。せっかく来たんだし!」

メイプルは意気込むとジャングルの中を歩き始める。

何か変わったものがないか、キョロキョロと辺りを見渡していたメイプルは綺麗な赤い花を見つけた。

メイプルの腕の長さほどの大きさの花弁が五枚付いており、甘い匂いが漂っている。

「何かあるかな?」

メイプルは花を調べるために近づいていった。

それを待っていたと言わんばかりに花はその茎を伸ばし、花弁でメイプルの上半身を包み込んだ。

同時にメイプルの盾と短刀が強制的に地面に落とされる。

外からその光景を見ているものがいればそれは補食に見えただろう。

「うわっ!や、めてっ!」

メイプルが思考というよりは反射でばたばたと手足を動かす。

しかし、花はメイプルを放さない。

ただ、メイプルにダメージを与えることもできないでいた。

「あ、そうだ!」

ようやくまだまだ攻撃方法があることを思い出したメイプルは、その体からいくつもの銃を展開していく。

愚直にメイプルを補食しようとし続ける花はそれに危機感を抱くことはなかった。

「【攻撃開始】!」

放たれた弾丸は次々に花弁を貫きその花をボロボロにし、それによってメイプルは無事に自由を取り戻した。

「ふぅ……びっくりした」

メイプルが足元に落ちた盾と短刀を拾ったところで異変は起こった。

ボロボロになった花のモンスターは消える寸前、甘い香りを弾けさせた。

ふわりと広がったそれはただの癒しなどでは決してない。

「な、なに!?」

茂みが揺れる音、木の葉のざわめく音、何か重いものが移動しているようなズシンズシンという音などが静かだったジャングルに響き始める。

それはどんどんと大きくなり、鳥や猿、動く植物、さらに苔むした岩で構成された巨人までもがメイプルを取り囲むように姿を見せた。

「うぇ……」

およそ十メートル先にいるそれらを見てメイプルは嫌な顔をした。

花の香りが呼び寄せたのだろうことはメイプルにも容易に理解できた。

既にあの赤い花の情報は先行プレイヤーの尊い犠牲によって知られていたものの、基本的に情報を積極的に調べようとしないメイプルには知る由もないことだった。

ただし、先行プレイヤーと違う点は容易く犠牲になるようなことがないという点である。

「ジャングルの中じゃ飛びにくいし……うー、戦うしかないかあ!」

メイプルはあまり決めたくない覚悟を決めると兵器を目一杯展開して戦闘態勢をとった。

「【攻撃開始】!」

特にどのモンスターを狙うでもなく放たれたレーザーや弾丸、砲弾はその圧倒的物量によってモンスター達にダメージを与えていく。

木が壁になり、メイプルの射撃は本来の強さを発揮出来ていないものの、体力の低いモンスターは倒れていく。

しかし、素早いモンスターは木の陰を上手く移動してメイプルまで辿り着いた。

「【捕食者】!」

地面からずるりと出てきた二匹の化物はメイプルに近づく者を許さない。

あまりにも硬いメイプル。それを攻撃しても意味がないということに気づかないモンスターは健気に攻撃を続け、そして噛みちぎられた。

「ダメージも……受けてない!大丈夫!」

メイプルは石の巨人が何か特別なことをしてくるかと警戒し、石の巨人へ向けて攻撃しつつ距離を取っていく。

背後から近づくモンスターは、頼もしい二匹が倒してくれているため気にする必要はなかった。

背後から次々に響くモンスターが消えゆく音がその証拠である。

「よし、このまま……!」

メイプルは上空の鳥モンスターからの遠距離攻撃を体で悠々と弾きつつ、地上のモンスターを倒していく。

順調に進む戦闘にメイプルはほっと気を緩めた。

「大丈夫そう……ん!?」

メイプルの視線の先、石の巨人の足の陰からひょこっと顔を出した赤い花。

メイプルは慌てて攻撃を止めるが、時既に遅く一条のレーザーが花の中心を貫いた。

「あーっ!!」

甘い香りが広がり、騒がしくなったジャングルはより一層その騒がしさを増していく。

「何であんな所にいるの!もー!」

メイプルは両腕を縦にぶんぶんと振りながら叫んだのだった。