軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と夜の闇。

とある深夜の森の中では、大規模ギルドが灯りを点けて防衛に励んでいた。

「かなりハイペースでギルドが潰れているな……」

「ああ、そろそろ大規模ギルド同士の戦闘が本格化するだろうな。いつ仕掛けてきてもおかしくない」

二人が話していると暗闇の中でがさりと音がした。

「……いくぞ」

「ああ、確認しよう」

二人は剣を抜きつつ音のした茂みに近づいていく。

そうして茂みを照らし出すと、そこに大きく口を開けた化物の頭が浮かび上がった。

「「……は?」」

彼らは驚いて硬直したその瞬間に捕食されることとなった。

それだけでは終わらずに、化物は中心へ向かって突き進む。

異常に気づいたプレイヤーを轢き殺して嚙み殺して燃やし尽くして荒らし回る。

大規模ギルドの人数からすれば倒されたプレイヤーの数はまだ大したことはなかったが、それ以上に動揺による精神的ダメージの大きさが影響しまともに連携を取ることが出来ずにいた。

大量のプレイヤーが襲ってくることは想定出来ても、化物が一匹襲ってくることを想定することは出来なかったからだ。

さらにその背中から静かに飛び降りた七人のプレイヤーが混乱し悲鳴すら飛び交う中でプレイヤーを倒していく。

圧倒的存在感を放ち今も捕食と破壊を続ける化物のために、七人の動きは目立たなくなっていた。

気が動転して七人の強さに気づかない内にギルドは既に半壊してしまった。

「オッケー!次!」

その声が化物に届くと化物は捕食を止めてその背に七人を乗せて通り道にいたプレイヤーを引き裂きつつギルドを後にした。

「うん、オーブも手に入ったしいい感じいい感じ」

「次はどっち?」

「んー……左の方のギルドへ行こう」

サリーは化物形態のメイプルの背中からメイプルに話しかける。

メイプルが持つ最後にして最大の異常性が知れ渡る前に、大規模ギルドが何の準備も対応も出来ない内に荒らし尽くすつもりなのである。

大規模ギルドからすれば半ば交通事故のようなものでどうにもならない。

意味も分からないままオーブとギルドメンバーの半分を失い、標的は去っていってしまうのだから。

人間味を犠牲に機動力を手にしたメイプルにより一夜の内に大規模ギルドの多くが荒れ果てた。

化物形態のメイプルの強みはメイプルには貫通スキルというもはや決まりきったその行動パターンを引き出すのに時間がかかることだろう。

そして、その行動に移るかどうかというところを見極めてサリーが撤退の指示を出すのだ。

こうして被害は拡大していったのである。

平原に拠点を構えるギルドで灯りを消して目立たないように夜を過ごそうとしているギルドというのもあった。

大規模ギルドは拠点が野晒しになっていることが多く、中でも平原は最も防衛に適さない地形だった。

「月明かりも弱いし……真っ暗だな」

「第二回イベントの時も思ったが夜は行動しにくくて辛いよな」

静かな時間が流れる。

虫の鳴く音と風が吹く音、後はギルドメンバーの話し声が少し聞こえるくらいでほとんど無音と言えた。

だからこそ何かが走ってくる音は際立って聞こえたのである。

「灯りだ!灯りを点けろ!」

魔法による光が音のした方向を明るく照らし出す。

そこにはここ二日間で一度も見たことのない巨体がいた。

明るい光のお返しに輝く炎を受けたプレイヤー達は困惑と動揺に包まれた。

ここにいた全てのプレイヤーにとって、きっと生涯これ程までに動揺することはないだろう。

そう言っても過言ではないくらいに目の前にいる化物に対しての反応に困ったのだ。

「オーブは貰うね」

化物はそのままギルドの中央を走りオーブを掴み取った。

「代わりに爆弾をあげるわねー」

七人がそれぞれ持っている爆弾を投げつけていく。

走る化物の背中からは絶えず爆発物が降り注ぎ、またそれに混じって時たま鉄球

や衝撃波や魔法も飛んでくる。

飛んでくる数が少なかった鉄球と衝撃波に当たった者は不幸だっただろう。

こうして特に大規模な戦闘が始まるでもなく十数名が捕食され、二十名程が降り注ぐあれこれと炎のコンボで死に、その他大勢が轢き逃げにあった。

「この夜のうちに……この夜のうちに一人でも多く初見殺しにかけないと」

「うん、だね」

この作戦は大量リードを狙っているというのもあるが、それよりは大規模ギルドの完全壊滅を早めることが目的だった。

つまり、ただでさえ目まぐるしく加速している展開をさらに加速させ最終日が来る前に全壊滅エンドへと導くつもりなのである。

そしてそこまでいかなかったとしても、サリーは今の成功を見る限り今夜の内に大幅に加速させることが出来ると踏んだ。

「メイプル、もうちょっとだけ頑張ってね」

「うん!まだまだいけるよー!」

次のギルドへ向けてメイプルはスピードを緩めることなく駆けていった。