軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と崩剣。

メイプルが動き出したのは朝になってからだった。

サリーの持ち帰った十個のオーブを守りきるまではギルドから出ることが出来なかったからである。

サリーは奥で死んだように眠っており、当分目覚めなさそうだった。

サリーのマップはカナデにより全員に書き写された。

さらに、修理アイテムは探さなくてもイズがいるため問題ない。

となると、外に出る必要がほぼなくなってしまう。

【楓の木】にメイプルがいないからと襲いにいくのはごく一部であり、【楓の木】の面々は早くも暇を持て余していた。

「どうする?誰か一人くらい外に出て行くか?プレイヤーを減らしにな」

そのクロムの提案に反応したのはカスミだった。

「ふむ……私が行こう。防衛はイズの爆弾とユイとマイの投擲で十分だろうからな」

そう言ってカスミが拠点の出口に向かって歩いていく。

「無理はするなよ」

「ああ、死なない程度にやるさ」

クロムに返事をして、カスミの姿は通路の向こうに消えていった。

カスミは一日目はイズと行動している時間が長かった。

この二人でオーブを奪うには地形に助けられなければならなかったため基本は競争相手を減らすことに徹していた。

装備の耐久値はイズがいれば問題ないため、夜の間は手当たり次第に他プレイヤーを切り捨てて回っていたのだ。

メイプルがいないとしても【楓の木】と戦闘をすれば無事では済まない。

もしも既に一度死んでいるのであれば【楓の木】を襲うのは避けるだろう。

【楓の木】を襲撃する者が減っているのはカスミとイズが近場のプレイヤーのデス数を次々に増やしていたためでもあったのだ。

それはまさに、じわりじわりと効果を発揮する行動だった。

そして今日もプレイヤーを倒すことに専念するという訳である。

「さて……メイプルのいる方向とは逆方向にいくべきか」

メイプルが進んだ道に無事なプレイヤーを探しに行くのは不毛である。

「よし、こっちにいくか」

カスミは身を隠せる場所が多い森の中を進むことにした。

カスミ自身の姿を隠すのにも役立ち、他のプレイヤーがいることが多いためこのような地形を巡るのである。

「よし……きたな」

カスミはプレイヤーを見つけると素早く背後から斬りかかった。

「警戒が甘いな」

カスミに気づき、剣を振るう。

しかしカスミは迫る攻撃を受け流し、斬り返す。

これまでに何度も繰り返した動きでありこのイベント中にも役立っている。

カスミは三人のプレイヤーを倒し、再び歩き始めた。

しばらく歩いて森を抜けた所でカスミは一人のプレイヤーとばったり出くわした。

「………おっと、見覚えのある人がきたなぁ」

「……帰るか」

カスミがすっと引き返そうとするものの目の前のプレイヤーは帰らせてくれそうにはなかった。

「俺達のギルドに誘うつもりだったんだけどなぁ」

「悪かったな、メイプルの方が先だった」

優秀な人材はどこのギルドも必要としている。

カスミやクロムを誘う気があったギルドは【楓の木】だけではないのだ。

カスミと対峙している男は仕方ないかと呟いてカスミをじっと見る。

「第一回イベントでは俺負けてるからさぁ……今回は勝たせてもらう」

そう言って片手剣を抜き、盾を構えるのは【崩剣】の二つ名を持つ、シンだ。

カスミとは第一回イベントで直接対決をしており、その際はカスミが勝利を収めていた。

「はぁ……死に戻ってもらうぞ!」

カスミも刀を抜いて応じる。

【崩剣】という二つ名を持つシンにはもちろん特徴的な部分がある。

「【崩剣】!」

シンの声に合わせて片手剣がボロボロと崩れて宙に浮かぶ。

それらは元の剣を縮めた見た目の十の剣となった。

片手に盾を、宙に十の剣を。

これらを操って戦うのが【崩剣】のスタイルである。

「はあっ!!」

シンの剣が次々にカスミに向かって飛来する。

「ふっ!」

カスミは短く息を吐くと、出来る限り多く叩き落とし、受け流し、防御に専念する。

しかし、サリーのような回避能力を持たないカスミはダメージを受けてしまう。

だが、耐えられる。

サリーと違う点はHPの高さだ。

体の中心に向かってくる剣を避けることで戦闘は続けられる。

「【一ノ太刀・陽炎】!」

シンの前に瞬間移動して斬りつける。

しかしそれは盾によって防がれてしまった。

「相変わらず……凄いスキル。盾がないと凌げないなぁ」

「はっ……素で躱した奴もいたがなっ!」

振り抜いた刀を引き戻して再度斬りつける。

しかしそれも防がれ、カスミは背中に剣が飛んでくるのを感じ、飛び退いた。

一度戦い互いの手の内をある程度知っているため、現状両者共に虚を突かれることがなく、決め手となる一撃を入れられずにいた。

ただ、第一回イベントからはかなり時間が過ぎている。

どちらも停滞していた訳ではないため、成長している部分がある。

それを上手く凌げた方が生き残るだろうことは二人共感じていた。