作品タイトル不明
17話
あれから一週間近くが経った。
今日は定期的な教会への寄付の日。御者に言いつけ、馬車の用意をさせた。
だがその前に、昨日のうちにメイドに頼んで用意をさせたアップルパイと、私の書いたメモ、そしてお金をランカスターに託した。
別宅で暮らしているであろう妻の元に置いてくるように指示をしたのだ。
あれから何度か訪ねたが一度も会えていない。
彼女は多分今日も留守にして居ないだろう。
そんなことを考えながら、馬車で教会へ向かった。
教会に着くと、いつものようにシスター達が出迎えてくれた。
軽い近況報告を聞いてから、神父様の居る部屋へと向かった。途中、本の貯蔵室に面した廊下を通ると、中で熱心に読書をしている女性が視界に入った。
良く見ると、驚いたことにその彼女は、レカンで働いている女性だった。
『読書をしていると言うことは、彼女は字が読めるのだな』そう心の中で感心した。
思わず話し掛けそうになったが、あまりにも熱心に読書をしていたので、声を掛けるのが躊躇われた。もっとも、それ程の間柄でも無いし、迷惑だと思われたくないので思い止まった。
それから神父様を訪ねて、いつものように寄付を済ませたあと、少しばかりの世間話をしてから、私はその部屋をあとにした。
帰り際も先程の本の貯蔵室の出入り口に面した廊下を通ったが、彼女はまだ熱心に読書を続けていた。
(よほど本が好きなんだな)
私はそんな彼女に気付いて欲しくて、軽く、咳払いをしたが無駄に終わった。
(思わず、私は何を考えているのだ? 心の中で苦笑した)