軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第017話 警告? ★

「リヒト殿でよろしいかな?」

初老の男が対面に座り、聞いてくる。

「そうです。あなたは?」

「これは失礼。私はこの商人ギルドの代表をしておりますオリバーです。以後、お見知りおきを」

オリバーは綺麗に頭を下げる。

「これはこれは、ご丁寧に。よろしくお願いいたします」

俺もまた頭を下げ返す。

「………………」

なお、美人さんはニコニコと笑うだけでスルーだ。

まあ、笑ってるだけで華になるし、いいか。

「して、町で占いをしたいそうですが?」

オリバーも美人さんについては触れない。

「ですね。ゲルドから聞いたのですが、町で商売をするには商人ギルドの許可がいるそうですね? 俺の占いもでしょうか?」

「うーん、まあ、歓楽街に行けば、無許可で占いをしている者もいますし、私らもそれを取り締まる気はありません。物を売っているわけではありませんしね」

この町にも占い師はいるらしいな。

まあ、自分で言うのも何だが、そういう胡散臭い人間はどこにでもいるものだ。

「では、勝手にやってよろしいか?」

「ええ。基本的には構いません。ただ、どんなものなのかを把握したいのです。先ほど、霊媒師と伺いましたが、私も聞いたことがない職業です。一応、お聞かせ願いますか?」

そう言われてもね……

「うーん、申し訳ない。霊媒師についての説明が非常に難しい。魔法の一種のようなものと考えてもらえばいいが、不思議な現象を取り除くことでしょうね」

「先ほど、西の門の兵士があなたに肩を軽くしてもらったと聞きましたが、それですか?」

情報を入手するのが早すぎでは?

これ、完全にマークされてるわ。

まあ、領主様がここにいる時点でわかりきってることだけど。

しかし、美人だわー。

「ですね。あれは肩に低級霊が乗っていたので祓ったんですよ」

「霊、ですか……? 精霊のようなものですか?」

逆に精霊を知らん。

「似たようなものと思って頂けると……まあ、ただのカエルでしたから精霊と言うにはおこがましいですがね」

カエルの精霊がいたらごめんなさい。

「なるほど。わかりました。まあ、商人ギルドとしては特に口をはさむ領分ではないですし、我らの許可は不要です。ただ、物を売る場合は別ですよ?」

幸せになるツボや魔よけの護符はダメかな?

「簡単なものでも?」

「小規模なら問題ありません。個人程度ならその辺で売買してますし、市場に行けば、冒険者や旅人が露天商をしていますしね。そこを取り締まれば暴動ものですよ」

「……実は私が持っている個人的なものを友人を通して売っているのですが、違法ですか?」

どうせ、フィリアが砂糖を売っていることも知ってんだろ。

「問題ありません。ただ、程度を守ってください。やりすぎだと判断した場合は我らから警告を出します。まあ、その後、申請してもらえばいいんですけどね」

申請ねー。

あっちの世界に戻って、物を買って、こっちで売ってますって素直に言えってことか?

ないな。

商売で大儲けは難しそうだ。

「わかりました。大変、参考になりましたよ」

「いえいえ、これも仕事ですので。あ、せっかくなんで、私を占って頂けませんか?」

オリバーはわざとらしく手をポンと叩く。

「初回割引きで金貨1枚ですね」

「わかりました。ゲルドに聞いたんですが、本当に金貨10枚でやるつもりですか?」

オリバーは懐から金貨1枚を取り出し、俺の前に置いた。

「まあ、占いなんかは副業ですからね。別にやらなくてもいいんですよ。ちなみに、何を占ってほしいんですか?」

「我がギルドの今後を占ってほしい」

漠然としてんなー。

「欲をかかず、地道に。味方を増やし、敵を減らせば発展する。特にここ数年は欲をかき過ぎれば、必ず崩壊すると出ている」

「なるほど、なるほど。よくわかりました。参考にさせていただきます。お話は以上ですかな?」

「ですね。私はここで失礼することにします。本日はありがとうございました」

非常に勉強になったな。

「いえいえ、こちらこそ占って頂き、ありがとうございました。先生の今後の活躍を祈っています」

先生って言ってもらえた!

この人、良い人だわ!

◆◇◆

自称霊媒師の男はそのまま応接室を出ていった。

それを確認すると、テーブルの上に置かれた自分のお茶を飲む。

「オリバー様はどう思われましたか?」

お茶を飲んでいると、隣に座っている領主様が聞いてくる。

「何と言えばいいか……本物でしょうね」

本物の占い師であり、本物の詐欺師だ。

「貴方もそう思いますか……」

「ええ」

こちらがあちらを見張っていることを匂わせたのに眉一つ動かさなかった。

最初から最後まで丁寧な口ぶりで通していた。

まるで仮面をかぶっている相手と会話しているような気さえした。

「最後の占いは警告ですかね?」

「これを……」

懐から紙に包まれたものを取り出した。

「何ですか?」

「先ほど、リヒト殿が友人を通して私物を売っているとおっしゃったでしょう? それです。砂糖ですね」

領主様に砂糖を渡すと、領主様は包みを剥がし、中身を見る。

「これは……やけに白いですね」

「味わってみてください」

そう勧めると、領主様は砂糖を一つまみし、口に入れる。

貴族の女性にしては下品だが、それを咎める者はここにはいないし、それについてどうこう思う者もいない。

「甘い……それに癖や臭みもない」

「不純物が徹底的に取り除かれています」

だからここまで白いのだ。

「すごいですね。異世界のものでしょうか?」

「間違いなく」

教会のフィリアから購入したものだが、かなり高額で買わされた。

しかも、あるだけ欲しいと言ったら別のところにも売る約束をしていると断られた。

フィリアはとても修道女とは思えない笑みを浮かべており、修道女を辞めて、商人になれよと思ったものだ。

「これを定期的に売ることが出来れば、この町も発展するんでしょうが……」

それがさっきの警告に繋がる。

欲をかくな。

かけば、必ず崩壊する。

「私はあの占いは真実と見ています」

「私もそう思います。惜しいですが、他の手を考えます」

領主様は悔しそうだ。

「それがいいでしょう」

「貴方は? このまま指をくわえて見てるつもりですか?」

「まさか。先ほどの占いで地道に味方を増やし、敵を減らせば発展すると占って頂きましたからね。その通りにします」

近道も欲もかかない。

地道にお互いの利益を考えればいい。

それが商人ギルドの仕事だ。

「私はどうしましょうかねー?」

領主様が悩む。

「普通に歓迎すればいいんじゃないですか?」

「夜会にでも招きますか……」

「絶対に来ないと思いますよ。普通に異世界の話に興味があると言って、お茶にでも誘ってください」

貴族の夜会に行きたがる平民はいない。

私だって絶対に嫌だ。

「その程度でいいんですか?」

それでいいよ。

あの詐欺師、ずっと仮面をかぶったような笑みだったけど、ずっとあんたをガン見してたじゃないか……

「まずは簡単なところから交流してください。欲をかかずに地道にです。これは私だけじゃなく、貴女への警告でもあります」

「なるほど……」

領主様は納得したように頷き、砂糖を持っていたバッグに入れた。

いや、それ、私の……

手のひらサイズの量で金貨7枚もしたのに……

後で請求書を送りつけるか……