軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04 国王との謁見

学園の上空にブラックホールを出現させた翌日、私は国王陛下に謁見するため王城に来ていた。

昨日空に浮かんだ黒球は、すぐに消えたとはいえ多くの人に目撃されたようで王都はちょっとした騒ぎとなったようだ。

学園にも調査のために騎士が派遣され、当たり前だが私も事情聴取を受けた。もちろんエドウィン王子に責任があることを強調した。

王子や学園長だけでなく、学園の教師や見ていただけの生徒も聴取を受けたようだ。

謁見に当たっての服装は学園の制服で構わないらしい。軍服などと同じように正装として扱われるようだ。

謁見の間の重厚な扉が開くと案内の騎士に中に入るよう促される。

赤い絨毯が敷かれ豪奢な調度で彩られた部屋の奥には壮年の美丈夫が座っていた。彼が国王陛下で隣にいるのが王妃様、周りにいるのは国の重鎮たちであろう。

主要な貴族についての知識はあるが、顔と名前が一致しないので誰が誰だか分からない。

謁見の間の中に進み臣下の礼を取ると、陛下から声がかかる。

「ユミエラ・ドルクネス、頭を上げよ」

私が頭を上げると陛下が言葉を続ける。

「学園で何があったかは私も把握している。愚息や学園の教師たちが無礼な行いをしたようだ。ユミエラ嬢、すまなかった」

軽くだが頭を下げて謝罪をした陛下に謁見の間がどよめく。私もまさか陛下から謝罪を受けるとは思わなかった。

「い、いえ。陛下が謝罪することではありません。

私は常識はずれなことをして周りに迷惑をおかけしました。申し訳ありません」

慌てて私が謝ると、陛下が優しげな声で言う。

「ユミエラ嬢、頭を上げてくれ。入学式の時点で体力測定をするなり魔法を使わせるなり、レベルを確かめる方法はいくらでもあったのだ。

それを一方的な決め付けで糾弾するのは道理が通らないことだと私は思う」

「しかし、こんなに華奢な令嬢のレベルが99というのは信じがたいのも事実。私の臣下にも疑わしいという声はある。

そこで、アドルフに真偽の判断をさせようと思う。彼の言なら皆も納得するだろう」

陛下が言うと、陛下と同じくらいの年齢の偉丈夫が一歩前に出る。

彼がアドルフ騎士団長か、彼は王国最強と謳われる騎士である。レベルは確か60ほど。ゲームで魔王戦の適正レベルが60~70であったことを考えるとその強さが分かるだろう。

彼は私の前に立つと無言で剣を引き抜き、私の首を狙って剣を横薙ぎに振るう。え、いきなり?

これは反撃してもいいのだろうか、王の前で許可無く魔法を使うのもまずい気がする。私は陛下に戦えとも、攻撃を防げとも言われていない。

やはり避けるべきだろう。だが後方に飛んだりしてはいけない。謁見の間で許される範囲の動きで避けなければならない。

そこまでを瞬時に考えた私は、深々とお辞儀をしてアドルフ団長の攻撃を回避する。頭の上を剣が掠めた。

「今の一撃に対応できる者は騎士団にもいません。しかも避け方を考える余裕もあったようです。レベル99というのは間違いないかと」

アドルフ団長がそう言うと、彼が剣を振るったことに遅れて気が付いた周囲からざわめく。

「すまなかった、ユミエラ嬢。騎士として不意打ちは恥ずべきことだが、陛下の命には逆らえんのでな」

私にだけ聞こえる声でアドルフ団長が謝る。

どうやら今のは事前に陛下に指示されていたことらしい。

自分は信じている風を装い、部下に汚れ役をやらせるとは陛下も中々に腹黒だ。最初の謝罪もその後の会話を有利に進めるためかもしれない。

「突然すまなかったなユミエラ嬢、怪我が無くて何よりだ。

さて、魔法も見せては貰えないだろうか。規模の小さいものをここで使って貰って構わない」

陛下はアドルフ団長が傍に戻ってから、闇魔法を見せるように言う。

「はい、では失礼します」

できるだけ周囲への危険が少ない魔法をと思い、シャドウランスを発動する。

私の影から複数の黒い槍が突き上がると、周りからどよめきが起こった。

「ほう、闇魔法とは珍しい。宮廷魔導師長、闇属性に危険性はあるのか?」

ローブを着た老齢の男が陛下の質問に答える。

「闇属性は4属性や光属性と同じように、1つの属性に過ぎませぬ。

光属性に弱いが4属性に強い、非常に強力な属性と言えるでしょう。

それをどう使うかは使い手次第ですじゃ」

「闇魔法は高位の魔物が使用する。本当に悪いものではないのか?」

「4属性を操る魔物もおるし、真偽は分からんが光属性の魔物がいるという文献も存在しまする。

闇の使い手が少ない分、悪い想像を膨らませてしまう者が多かったのでしょうな」

「ふむ、人は希少で良く分からないものを恐れるということか。黒髪が忌み嫌われるのも同じような理由なのかもしれんな」

陛下と魔術師長が周りに聞かせるように会話をする。この問答は私のためにしてくれたのだろう。

闇魔法と黒髪は世間でのイメージは最悪なので非常にありがたい。

「ユミエラ嬢、世界初であろう高みへの到達、見事であった。

して、そこまで至る過程について聞きたいのだが」

陛下はレベル上げの方法を知りたいようだ。国力に関わることなので当然と言える。あまり特別なことはしていないので参考にはならないと思うのだが。

「特別なことはしておりません。ただ魔物を倒し続けただけです。

私は幸運に才能があったのか、レベル1の頃からある程度の魔法を扱えましたので」

「師はいたのであろう?」

「いえ、独学です。1人で領地の森で魔物を倒し、ある程度慣れてからはダンジョンに潜り続けました」

「ダンジョン? ドルクネス領にダンジョンはあっただろうか?」

「闇属性の魔物が多数出現するダンジョンがあります。4属性に不利なので人気が無いようです」

ドルクネス領のダンジョンで人を見かけたことは1度も無い。

ゲームでは光属性のヒロインにとってボーナスステージなのだが。

「師はいない? 戦闘訓練はしていないのか?」

「はい。戦闘訓練をするより、魔物を倒してレベルを上げた方が強くなれると考えましたので」

「お、おお、そうか」

なぜかドン引きされた。この国では十分に訓練してから魔物と戦うのがセオリーのようだ。

「家の者は危険だと止めなかったのか?」

「あの、言いにくいのですが、屋敷を無断で抜け出していまして……

家庭教師の来る日だけ家にいれば気づかれませんでした」

「親は……ああ、すまん」

私の両親が王都を離れないことを思い出したのか、可哀相なものを見る目で見られた。そこそこ充実していて楽しかったのだが。

「他に特別なことというと…… あ、成長の護符を身につけていました」

護符は様々な効果のある装備品だ。成長の護符は経験値を2倍にする効果がある。

ゲームでは魔王を倒した後から買えるようになるアイテムだが、店で普通に売っていた。

「守護の護符を持たないだと!?」

護符は互いに影響しあうのか、2つ以上持っていると効果を発揮しない。

守護の護符は死に至る攻撃を1回だけ防ぐ効果がある。ゲームではあまり使われないが、現実では至って有用だろう。

店ではそれだけが断トツで高価だった。

「あ、あと魔物呼びの笛も使いました。森やダンジョンで思い切り吹きます」

魔物呼びの笛は魔物と強制エンカウントするアイテムだ。

ゲームと違い歩き回っても魔物が現れるとは限らないので、ずいぶん重宝した。

「アドルフ、お前は真似できるか?」

「守護の護符は手放せませんし、1人でいるときに魔物呼びの笛を吹くなど、恐ろしくてできませんな」

陛下とアドルフ団長がこいつヤベエなとこちらを見てくる。

普通に効率を考えてレベル上げをしただけなのに、心外である。たまに死にそうな目には遭ったが。

咳払いをした陛下は厳格な雰囲気で口を開く。

「ユミエラ・ドルクネスよ。その力、王国の剣として振るって貰いたい」

「はい国王陛下。陛下の臣下の1人として、バルシャイン王国の盾となる所存であります」

陛下の問いかけに頷くが、しれっと国の剣を国の盾と言い換える。

人間兵器として他国への侵略はしないという意思表示だ。

「相分かった。国の危険の際には力を振るってもらおう」

私の意図が通じ、それに了承して貰えたようで安心する。

「では、そなたの前人未踏の偉業に褒美を取らせたいと思う。希望があれば遠慮なく言うが良い。

爵位も領地も国宝級の宝も用意しよう。王族に迎えいれることもやぶさかでは無い」

陛下の太っ腹な発言に謁見の間がざわつく。

しかし、これは試されているのだろう。私が求める物は金か名誉か、はたまた王子との婚姻か。

「望外の褒賞、ありがたき幸せです。

私が望むのは平穏な生活であります。国と身の回りが平和で衣食住が足りていれば、後は望むものはありません」

「そうか、そなたの平穏のために尽力することを誓おう。

しかし、そなたは欲が無いな。他に望むものができたら言うが良い、できるだけのものは用意しよう」

陛下は私の答えに満足したように言うが、少し苦そうな雰囲気も滲ませる。

私を国に縛る鎖を用意できないことを気にしているのだろう。

そうです、何かが嫌になったら国外に逃げる腹積もりです。

かくして謁見は終わり、私は謁見の間から退出する。

凄い緊張した。しかし、陛下が話のできる人で安心した。

一方的に軍属となり戦争に参加するように言われることも想定していた。もし、そうなったら全力で逃げるが。

やっと帰れると案内の騎士に付いて行くが、どうも来た道と違うようだ。

どんどんと王城の奥へと進む騎士に尋ねる。

「あの、出口とは違う方向に進んでいるようですが……」

「はい、ユミエラ様は王妃陛下の茶会に招かれていますので」

どうやら私はまだ王城からは帰れないようだ。